コルクが途中で折れたとか、T字のコルクスクリューが抜けなくてワインショップまで持っていったとか、友人宅にソムリエナイフがなくて探し回ったなど、ワインの開け方ひとつとっても、失敗談はいろいろ。そこで、渋谷のイタリアンレストラン「miyajiarai」のオーナーソムリエを務める、宮地英典(みやじえいすけ)さんに、コルクタイプとスクリューキャップタイプのワインボトル、またスパーリングワインのボトルを、スマートに開栓する方法について、教えていただきました。
【赤ワイン・白ワイン】
コルクタイプのワインの開け方
・実はキャップシールはいらない!? キャップシールの剥がし方
まずは、開けるのに手間取る人が多い、コルクタイプのワインの開け方を解説します。はじめに、赤ワインと白ワインの開け方を紹介しましょう。
コルクタイプのワインを開けるには、アルミやプラスチックの「キャップシール」を剥がす必要があります。キャップシールの開封には、いわゆる「ソムリエナイフ」を使用します。
Step1. ナイフで切り込みを入れる場所を決める
ナイフの切り込みを入れる場所ですが、ネック下部に入れるのが正しいとされています。
ワインによっては、キャップシール周辺にカビなどの汚れが付着しているため、瓶口に近い箇所をカットすると、液体とキャップシールが接触するので、衛生的でないと考えられています。ただ、ネック上部の方がきれいに切り取りやすいので、しっかりと拭き取れば、家庭ではむしろ綺麗に見えることもあるかもしれません。
Step2. ナイフで切り込みを入れ、カットする
ソムリエナイフの刃部分を親指で押しあて、ボトルネック下部分を固定しぐるりと半回し強、手首を返して逆回しで残り半分をカットします。
縦にナイフを入れる方もいますが、しっかりカットされていればナイフ部分で押し上げれば剥がれますし、固いキャップシールもあり、慣れていないと手を滑らせることもあるのでおすすめできません。
Step3. キャップシールはそのまま取り去ってもOK
と、ここまではよくある剥がし方ですが、このキャップシール全体をナイフで剥がす、もしくはそのままスポンと抜いても構わないのです。
レストランの現場などでも、コルクの状態を見るためにキャップシールを丸ごと剥がすこともありますし、アルミが土に還らない事から、キャップシールそのものを嫌う生産者や評論家も増えてきています。こんなところでもサステナブルが叫ばれるようになってきているのです。
・途中で折らずにスムーズにコルクを抜く方法
キャップシールが剥がれたら、コルクを抜きます。
Step1. スクリューはやや斜めに差し込む
コルクを抜く際に一番注意したいのは、途中でコルクが折れてしまうこと。それを防ぐためには、スクリューをしっかりと差し込む必要があります。
スクリューを差し込む際には、少し斜めに先端を押し込むようにします。はじめから回し入れようとすると、うまく入らなかったり瓶口部分のコルクが崩れてしまったりするので気をつけて入れて下さい。
Step2. コルクを左右に揺らしながら抜き取る
スクリューがしっかりと奥まで入りました。ワインによってはコルクの長さも違いますが、キャップシールを剥がしてあれば、どこまでスクリューが入っているかも確認できます。
テコの要領で、フックを瓶口にかけてコルクを持ち上げます。瓶口に刺さった部分がわずかになったら、コルクを左右にゆらしながら、もしくはそのままコルクを握るようにしても抜きやすくなります。
ワインによっては、コルク片やカビなどの汚れが瓶口に付着していることもあるので、綺麗な布で拭き取ってください。
次のページでは、スクリューキャップの楽な開け方と、スパークリングワインのスマートな開栓方法をお伝えします。
【赤ワイン・白ワイン】
スクリューキャップタイプのワインの開け方
・スクリューキャップはネック部分を回して開ける
スクリューキャップは、低価格帯ワイン用のクロージャ―(栓)だと思っている方も多いかもしれません。しかし、2000年前後からオセアニアを中心に高級ワインにも採用されるようになり、現在では世界中の産地で採用されています。高級レンジでは主に、白ワインが活躍の場となっています。
以前、オーストラリアの銘醸ワインの同一ワイン、同一ヴィンテージをコルク栓とスクリューキャップで比較テイスティングする機会に恵まれましたが、より密閉性の高いスクリューキャップの方が、ワインのフレッシュさを保持するにはより有効だと感じました。ただ同時に、何十年にもわたって保管されるようなワインの場合、キャップ内部の樹脂との長期間にわたる接触には、懐疑的な意見も多いのが現状です。
Step1. キャップのミシン目下を押さえて開ける
スクリューキャップは、キャップのミシン目の下部分を抑えて、ボトルの底を持ちボトルを時計回りに回すと、スムーズに開きます。口部分の小さなキャップ部分を回すよりも握りやすく、力を入れずに開けられます。
続いて、スパークリングワインの開栓について解説していただきましょう。
【スパークリングワイン】スマートに抜栓する方法
・スパークリングワインはボトルを回して開ける
スパークリングワインを抜栓する際に気を付けたいのは、ボトルの温度と、静置されていたかどうかです。あまり冷えていなかったり中の液体が揺すられていたりした状態では、留め金を外した時点で、瓶内のガス圧でコルクが勢いよく飛び出してしまうことがあります。
Step1. 針金部分をほどく
スパークリングワインのコルクは、瓶口で圧縮されて「ミュズレ」と呼ばれる留め具で固定されています。コルクの頭を押さえたまま針金部分をほどいてコルクを握り込み、もう片方の手でボトルを固定します。
Step2. コルクを固定してボトルを回し抜く
ミュズレを外す・外さないにもいろいろな意見がありますが、それよりも布で抑えた方が、コルクが飛び出しても被害は最小で済みます。
この際も、コルクをしっかりと固定してボトルの底を持ち、ゆっくり回し抜きます。小さいコルクを回すより大きなボトル部分を回した方が、力が加わりやすく、女性でも開けやすくなるのです。
コルクが回る感触とともにガス圧を感じますが、抑えながらゆっくりと、最後にコルクと瓶口の間からガスがシュッと漏れるまで慎重に。
ちなみに、もし液体が瓶口からあふれるような時は、落ち着いて瓶を斜めにした方が、実はこぼれでるワインは少なくて済みます。
次回は、ワインのスマートな“注ぎ方”を解説します。
【プロフィール】
ソムリエ / 宮地英典(みやじえいすけ)
カウンターイタリアンの名店shibuya-bedの立ち上げからシェフソムリエを務め、退職後ワイン専門の販売会社ワインコミュニケイトを設立。2019年にイタリアンレストランmiyajiaraiを開店。
https://www.facebook.com/miyajiarai/