グルメ
2020/10/2 21:00

今年で創業330年! お茶と海苔の「山本山」についてあなたはどれぐらい知ってますか?

お茶業者が海苔を始めた3つの理由

ーー戦時中は休業されていたのでしょうか。

小杉 いえ、休業の危機に陥ったようですが、それでも地道に商売を続けていました。特にお茶は配給制になって、政府が流通量を管理していたことで、お茶自体が超高級品になってしまいました。そういったこともあり、前述の海苔を始めたという流れです。

↑1939年(昭和14年)、山本山が運営していた茶園の様子(写真提供:山本山)

 

ーー今日では商材としての「お茶・海苔」の親和性に違和感はないですが、当時は「お茶の山本山が、なんで海苔を!?」みたいに思われることはなかったでしょうか。

 

小杉 海苔を始めるきっかけになった理由の一つは、弊社の9代目が、たまたま行った料亭で有明海産の高級海苔を食べて感動したというもの。もう一つが、実は和紙を販売していた時期があり、和紙の紙すきの技術が海苔の製造技術にも活かせるということ。そしてもう一つが、お茶と海苔の旬の時期の違いです。お茶は春が旬の時期ですが、海苔は11~12月頃に旬が訪れます。そうすると、1年間に2つの旬を提供できるわけですから、「これは良い!」と海苔の製造販売も始めることにしたんです。

 

ーーつまり3つの理由があったというわけですね。

 

小杉 はい。これは素晴らしい着眼だったと思います。

↑海苔の販売をスタートさせた1947年(昭和22年)から2年後、1949年(昭和24年)の日本橋の山本山(写真提供:山本山)

 

↑そして、当時から続く場所に、現在展開している「山本山 ふじヱ茶房」。こちらでは、商品の販売だけでなく、様々なお茶、海苔を使った食事を楽しむことができます

 

小杉 それまでの海苔は、パッケージに入れられて販売されていたわけではなく、乾燥させた海苔を和紙に挟んで売られていたそうです。それをギフトに使っていただけるようにするため、パッケージ缶に入れて販売し始めました。

 

ーーお中元、お歳暮に海苔を贈る習慣を作ったのも山本山が先駆けだったんでしょうか。

小杉 はっきりとしたことは分かりませんが、戦後、高度経済成長期に入って日本が豊かになっていく中で、「お世話になった方にギフトで海苔を送りましょう」という試みを始めました。

↑山本山創業の地「日本橋」を冠に掲げた極上海苔「にほんばし」。山本山9代目が感動したという有明海産の海苔で、遠赤外線窯で丁寧に焼き上げたもの。10枚入り、定価4320円(税込)

 

↑8切サイズの焼海苔、味付け海苔を合わせた贅沢なギフト。20袋詰(8切5枚)×2、定価5400円(税込)

 

↑「やきのり」「あじつけのり」「うめ」「ゆず」「あおじそ」「わさび」といった風味海苔と手巻き焼海苔のセット。ギフトで人気がある商品。8切24枚×6、定価3240円(税込)

 

↑せんべいよりも海苔の風味を前面に打ち出した「のりせんべい」。新食感でありながらも、上品な味わいを楽しめます。10枚入り、定価1080円(税込)

 

↑もちろんお茶のギフトも充実。スッキリした味わいの静岡県の茶葉、上品な香りを持った宇治の茶葉をブレンドした「合組煎茶 山本山」。山本山のなかでも定番の茶葉です。100g缶入り、定価1620円(税込)

 

↑山本山のお茶の中でも特上ラインとなる玉露。左から凝縮されたうま味と甘味が特徴の「天下一」、さらに「天下一」にまろやかさを加えた「上喜撰」、玉露が初めての方にオススメの「山本山」。各100g缶入り、「玉露 天下一」1万1340円(税込)、「玉露 上喜撰」5940円(税込)、「玉露 山本山」3780円(税込)

 

「上から読んでも〜」の名コピーは9代目が考えたものだった!

ーー昭和世代の人間にとっては、テレビCMで流れた名コピー「上から読んでも山本山。下から読んでも山本山」が忘れられません。これはいつ頃から始まったのですか?

 

小杉 東京オリンピックが開催された前年の1963年(昭和38年)頃からテレビCMで流れるようになりました。これは先ほど申しました9代目が考案したコピーです。お茶・海苔という商材を使った広告戦略は早かったのではないかと思います。ただ、当初からの「『本物』の中で、新しい物を提供し続ける」という企業としての姿勢にはずっと変わりなく、これも多くの人に良いものを知っていただくための試みだったと思います。

 

ーー「高級品のみを販売する」ということではないのですね。

 

小杉 はい。お茶も海苔も様々な商品があり、製造に手間がかかることでどうしても高価格になってしまうものもあります。しかし、かつての「青製煎茶」が広められたのも、高級路線というよりは庶民向けを目指したから。どちらかと言えば、より多くの方々に、お茶・海苔の良い商品を楽しんでいただきたい、という思いのほうが強いです。

 

かつては、宮内省(現在の宮内庁)にお茶を納めさせていただいたこともあったようですが、そういうことを声高に謳うことよりも、美味しいお茶を一般の方々に広めるための努力を重ねてきたと自負しています。

↑山本山の「多くの人に広めたい」という方針により、「日本茶」はやがて海外にも広まっていきました。1970年(昭和45年)にはブラジル・サンパウロで現地法人を設立しました(写真提供:山本山)

 

↑1975年(昭和50年)にはアメリカ・ロサンゼルスでも現地法人を設立。多くのアメリカ人に「日本茶」が親しまれるようになりました(写真提供:山本山)

 

↑現在、スーパーマーケットで販売されている茶葉。若い世代の方にも親しんでもらえるよう、今年の秋にパッケージをリニューアル。明るく楽しげな紋様で気軽に親しめそうです。左から「煎茶徳潤」(100g)1000円、「煎茶初摘」(100g)800円「煎茶宇治」(100g)1000円、「元祖玉露」(70g)1500円。(すべて税込)

 

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