トレーサビリティ+サステナビリティ+品質=ゲイシャ
ーー今おっしゃった「スペシャルティコーヒー」というカテゴリーについて、もう少し詳しく教えてください。
富樫 たしかにスペシャルティコーヒーというカテゴリー自体も世界的にはまだ認知は低いと思います。説明させていただきますと、まず、「どこの農園で作られたものか」ということを明確にするトレーサビリティ(物流経路の追跡できる状態)と、商品としての持続可能性があるサステナビリティの2つを兼ね備えたコーヒーがスペシャルティコーヒーとされています。よく有機野菜などでも「この農園主さんが作ったレタスです」といった表示がされていることがありますが、これがトレーサビリティ。そして、生産国から消費国にいたるコーヒー産業全体の永続的発展に寄与できる物かどうかがサステナビリティということになります。
これに加え、コーヒーの品質を評価する「カッピング」で、80点以上を取らないとスペシャルティコーヒーを名乗れません。ですので、生産者が明確で、きちんと生産者が利益を出せるもので、なおかつ厳しい審査をクリアしたものだけが、スペシャルティコーヒーとなるわけですが、実は日本だけでなく世界でもこの基準をクリアしているコーヒーはごく限られています。
そのスペシャルティコーヒーの中でも常にトップクラスの評価を得ているのがゲイシャです。我々はこの品種に魅せられ、約6年前からゼロ企画で開発を進めることとなり、昨年11月にやっと日比谷にGESHARY COFFEEとしてゲイシャ専門店を開店にたどり着いたという流れです。
こだわりのコーヒーマシンと「Farm to Cup」
ーー元々はコーヒーマシンを開発されている会社だったと伺っています。
富樫 はい。TREE FIELDというグループ会社で世界初の全自動スペシャルティコーヒーマシン「FURUMAI」という機械をまず作りました。開発段階から世界屈指のバリスタが監修に入り、詳細なパラメータ設定によって、思い通りのコーヒーの抽出が可能になりました。このコーヒーマシンの開発時点でゲイシャと出会い、これは徹底的にこだわり抜いて、専門店を出すべきだという考えに至りました。
ーーGESHARY COFFEEがこだわる「Farm to Cup」……つまり、農園でのコーヒー豆栽培から、カップとして人に提供するまでを一括管理するという流れについても詳しく聞かせてください。
富樫 一部の大手コーヒー専門店ではやっていますが、世界的に見れば数える程度しかやっていないのがFarm to Cupです。例えば、ゲイシャで言うと、種を植え、木になってコーヒーの実が取れるまで最低でも3~4年くらいかかります。3~4年経ってようやく実がなってから、年に1回、収穫時期がきます。ゲイシャの実は赤い果物なのですが、桃のように種の周りにミューシレージというちょっとベトベトした粘着質のものがついています。このベトベトしたものを処理し乾燥させ、種の殻を剥がす作業を行い、日本に輸入して、さらにその種を焙煎し抽出し、ようやく皆さんが見たことがあるコーヒーとして出せるようになります。
ーーFarm to Cupはとんでもなく時間と手間がかかるもの、ということですね。
富樫 せっかくの最高品種ゲイシャを扱うわけですから、我々もどこまでもこだわりぬこうと考え、このFarm to Cupを採用したというわけです。