ガリガリ君が先駆けだった「水色のソーダ」のイメージ
ーーガリガリ君ブランドで、この40年間にリリースされたフレーバー数は150種以上。この数だけを見ても、常に新しい挑戦をし続けてきたことがわかります。これまで様々なフレーバーが出てきましたが、発売当初はコーラ、グレープフルーツ、ソーダ味でした。なぜこの3種だったのでしょうか。
岡本 発売当初かき氷アイスでの人気フレーバーを、そのままガリガリ君に転じたと聞いています。ただ「見た目が水色で、味がソーダ」は当時なかったとも聞いています。その時代はソーダをイメージした商品は、透明だったり緑色のものだったりが多かったようですが、ガリガリ君はここでも「青空の下で、子どもたちが遊びながら」に合わせて、あえて水色のアイスにしたのです。
当初からのコーラ、グレープフルーツ、ソーダの3フレーバーは今日まで長い間定番となっていますが、この中のソーダは、特にガリガリ君を象徴するものだと思っています。
ーーさすが40年の歴史があるだけあって、ガリガリ君・ソーダだけでこんなにパッケージのデザインがあったんですね。
【歴代のパッケージをギャラリー形式で紹介【その2】(画像をタップすると詳細が表示されます)】
兄弟商品だったソフト君(1985年)とガリ子ちゃん(2006年)
ーーまた、この40年間では様々な関連商品や異色フレーバーも登場しています。まず気になるのが1985年に登場した「ソフト君」です。
岡本 ガリガリ君のかき氷に対し、アイスを使っているのでソフト君というものを出したのですが、8年でなくなってしまいました。
岡本 また、ガリガリ君誕生から25周年経った2006年には、新しいラインナップに「ガリガリ君リッチシリーズ」も加わりました。ミルクを使用したり、かき氷の中に菓子素材を混ぜ込んだりしたもので、現在も継続して展開し続けています。さらに同年「ガリ子ちゃん・やわらかクリームソーダ味」を発売しました。
岡本 それまでのガリガリ君は、どうしても春に売れてきて、夏にピークを迎え、秋冬は売れなくなる……といったことを繰り返していました。アイスを年間を通して親しんでいただくことを目標に、開発したものがガリ子ちゃんです。
ガリ子ちゃんは新しいキャラクターで、インターネット上でおおいに話題になりました。2ちゃんねるなどでも「ガリ子ちゃんは萌え系なのかどうか」みたいな論争に発展したり、お客さまがガリガリ君のキャラクターを通して、より親しみを抱いてくださったのがこの時代です。合わせてネット上に「ガリガリ部」というファンコミュニティを作り、お客さまとの交流の場を持てるようにもなりました。
「ガリガリ部」は現在はFacebookで継続してやっていますが、年に一度、ガリガリ君ファンの方を抽選でお招きして「新しいフレーバーを考えよう」や「ガリガリ君の絵の描き方を覚えよう」といった企画を実施しています。こういったお客さまとの交流の中で生まれた提案で、2007年にはマンゴーが生まれるなど、非常に有意義な試みだと思っています。
他の候補の完成度をあえて低くし、社員の選択を仕向け実現させたコーンポタージュ
ーーこういった異色フレーバーの中でも、特に気になるのが2012年に登場した「リッチ・コーンポタージュ」や2013年に登場した「リッチ・クレアおばさんのシチュー味」、2014年の「リッチ・ナポリタン味」です。これらの開発経緯を教えてください。
岡本 コーンポタージュは「お客様がアッと驚くようなフレーバーを開発しよう」という思いで開発したアイスです。まず、アイスには考えられないような味を30~40種類くらいプロジェクトメンバーで挙げ、そこから5種類くらいまで絞って試作しました。一方で商品化までには多くの部署が関わっていますので、奇抜なアイディアを言うと批判的な意見も社内では出てきます。
しかし、コーンポタージュはまず私自身がやりたかった。もともとのガリガリ君のコンセプトは「子どもたちが遊びながら」というもので、これはずっと変わらず、みんなでワイワイ楽しみながら食べるコミュニケーションツールの側面もあるだろうと思っています。そういったシーンを想像すると、駄菓子屋さんが思い浮かびました。
かつての駄菓子屋さんは、学校帰りの子どもたちが集って何かを食べながらワイワイ楽しんでいる。そこで駄菓子屋さんの市場を調べたところ、コーンポタージュのお菓子がすごい人気があったんです。
温かい料理・コーンポタージュを冷たいアイスに転じるのも面白いし、そもそも「コーンポタージュが嫌い」という人も少ないだろうと。そこで「これしかない!」と思いました。
ーーでも、こういったお話で会社を説得することはできたのですか?
岡本 いや当初はオープンにはできませんでした。真っ正面から「コーンポタージュをやりたいです」と言ったら、やはり「やめとけ」という意見が出そうな気がして……。それで社員みんなが帰った夜に、私だけが会社に居残り、いろいろと試作をしました。実はここでも気を遣いましたね。やはり試作だと匂いが残ってみんなにバレてしまう可能性がありますので、窓を開けたりして(笑)。
また、前述の最終候補5種類のうち4つくらいはあえて完成度を抑えて、コーンポタージュだけ完成度を高めました。これを試食した社員が「これが一番美味しい」となるように仕向けて(笑)。そうやってうまく誘導しながら実現させたのがコーンポタージュでした。結果的に当初の販売予測を大きく上回り、3日で発売休止となりました。
ーーコーンポタージュの成功で、クレアおばさんのシチュー味、ナポリタン味にも繋がったのでしょうか。
岡本 そうです。クレアおばさんのシチュー味は、江崎グリコさんとのコラボ企画です。アイスメーカーとしては競合なのに「一緒に作っちゃうの?」というオモシロ企画でした。また、ナポリタン味は、2014年当時、東京・新橋などでナポリタンが再評価されていた頃で、「ナポリタン味も良いんじゃないか」という社内の意見があり出したものです。アイスの中にトマトゼリーと、パスタを連想させる柔らかいゼリーも入れた商品でした。