春はたくさんの野菜が収穫期を迎えるおいしい季節。一年中手に入る玉ねぎも、この時期だけは新しく収穫した“新玉ねぎ”が並びます。
料理家の星野奈々子さんに、そんな新玉ねぎを堪能できる料理を3つ教えていただきました。
火を使わず短時間で作れるおつまみレシピに、常備菜として活躍する作り置きレシピ、ちょっと時間をかけて作るごちそうレシピ。それぞれのシーンで新玉ねぎのおいしさを感じてください。
「新玉ねぎ」は玉ねぎとどう違う?
玉ねぎは、一年に一度しか収穫しません。よく見かける茶色い皮の玉ねぎは、春に収穫したものを乾燥させておいたもので、水分量が少なく皮が厚いのが特徴です。
「一方、新玉ねぎは早く収穫し、さらに乾燥させずに出荷します。水分量が多くてみずみずしく、普通の玉ねぎより甘みが強くて辛みが少ないので、生食にも向いています。我が家でも子どもが大好きなので、スライスしただけのものにポン酢をかけたり、ツナと和えたりしてよくいただきます。加熱する場合は火の通りが早いので、丸ごと使うのがおすすめ。煮るととろとろにやわらかくなりますよ。
ただ、水分がある分傷みやすいので、長期保存には向きません。保存期間は3〜4日程度で、新聞紙やキッチンペーパーなどで包んで、風通しがよく涼しいところか野菜室に置きましょう。選ぶときは、手に持った時にやわらかすぎず、中身が詰まって重たいものがおすすめです」(料理家・星野奈々子さん、以下同)
以上を踏まえた上で、とっておきの新玉ねぎレシピを教えていただきましょう。
●新玉ねぎで作るレシピ1
火を使わずに作るおつまみ「新玉ねぎとモッツァレラとトマトのバルサミコソース」
スライスした新玉ねぎに、フレッシュなトマトとモッツァレラチーズを合わせた一品。「バルサミコ酢とはちみつでつくったドレッシングをかけていただきます。新玉ねぎは水にさらさずそのままお皿に盛ってしまえるので、あっという間にできますよ」
【材料(2人分)】
・新玉ねぎ……1個
・モッツァレラチーズ……1個(100g)
・トマト……小1個
・バルサミコ酢……大さじ2
・塩……小さじ1/2
・はちみつ……大さじ1
・オリーブ油……大さじ1
【作り方】
1. 繊維を断ち切るように新玉ねぎを薄切りにする。
「玉ねぎは、繊維と交差するように切ることで辛みが少なくなります。新玉ねぎなら辛みはさほど気になりませんが、個体によって辛いものもあるのでこちらの切り方にしましょう」
2. 調味料をすべて混ぜ合わせる。
「バルサミコ酢に塩とはちみつ、オリーブオイルを入れて塩が溶けるようによく混ぜます。はちみつを入れることでとろりとしてコクのある味になります」
3. モッツァレラチーズを手でちぎる。
「モッツァレラチーズは包丁で切るより手でちぎった方が断然おいしいので、一口サイズに分けていきましょう」
4. トマトを飾りドレッシングをかける。
「8等分にくし切りにしたトマトをのせたら、先ほどのドレッシングをかけていただきます。切っただけの新玉ねぎがシャキシャキしていて、とってもおいしいですよ」
【完成】
バルサミコ酢とトマトの酸味が爽やかで、ついつい箸が進みます。きりりと冷やしたシャンパンや白ワインによく合いそう。パンと合わせてランチにするのもおすすめです。
次のページで紹介する2つめの「新玉ねぎで作るレシピ」は、「新玉ねぎと豚肉の焼きマリネ」。冷めてもおいしい作り置きおかずです。
●新玉ねぎで作るレシピ2
冷めてもおいしい作り置きおかず「新玉ねぎと豚肉の焼きマリネ」
輪切りにした新玉ねぎと豚肉にレモンが香るお惣菜は、見た目にもきれいです。「焼きたての熱々を食べるのももちろんおいしいのですが、ちょっと冷蔵庫で冷やしておいて食べるのもおすすめです。3〜4日なら冷蔵保存できるので、作り置きしておくのもいいですよね」
【材料(2人分)】
・新玉ねぎ……2個
・豚しゃぶしゃぶ肉……200g
・オリーブ油……大さじ1
<A>
・レモン汁……大さじ2
・しょうゆ……大さじ2
・砂糖……大さじ2
・オリーブ油……大さじ1
・レモン……1/2個分
・タイム……適量
【作り方】
1. 新玉ねぎは皮をむいて横に1cmの輪切りにする。
「ちょっと厚みのある幅で切ると、食べたときの満足感につながります」
2. フライパンにオリーブ油を熱し、新玉ねぎを中火で両面に焼き色がつくまで焼く。焼けたらバットに取り出す。
「何度もひっくり返していると、玉ねぎの形が壊れてしまうので、片面にしっかり焼き色がつくまでそのままにしておき、おいしそうに焼き色がついたら返しましょう。表面に水分がじんわりと出てきて透明になってきたら返すタイミングです」
3. フライパンにAと豚肉を加えて再び中火にかけ、肉の色が変わるまでさっと煮る。
「フライパンがまだ温かいので、調味料をフライパンに入れて軽く混ぜ、お肉を入れてから火をつけます。赤みのある部分がなくなったら火を止めます」
4. 新玉ねぎを入れておいたバットにお肉をあける。
「お肉と玉ねぎを広げながら、調味料が行き渡るようにバットに並べていきましょう」
5. 輪切りにしたレモンとタイムをのせる。
「このまま置いておくことで、レモンの香りと酸味がじんわりうつっていきます。輪切りにした新玉ねぎとレモンの断面がかわいいので、盛り付けのときは平たいお皿に並べてみてください」
こんがり焼けた新玉ねぎは、作り置くとさらに調味料が馴染んで柔らかな食感に。シャキシャキがお好みの方は作りたてを食べるのがおすすめです。
最後のページで紹介する3つめの「新玉ねぎで作るレシピ」は、「新玉ねぎのファルシ」。ちょっと余裕がある日に作りたい、時間をかけてコトコトと煮込む、旨みたっぷりの料理です。
●新玉ねぎで作るレシピ3
ちょっと時間をかけてコトコトするごちそう「新玉ねぎのファルシ」
ファルシとは、フランス語で“詰める”という意味で、詰め物料理のこと。新玉ねぎの中身をくり抜いて肉だねを詰め、スープ仕立てに煮込んだお料理です。「30分くらい煮込むので時間はかかりますが、新玉ねぎの甘みがぐっと引き出されます」
【材料(3個分)】
・新玉ねぎ……3個
・ベーコン(ブロック)……50g
<A>
・鶏ひき肉……150g
・塩……小さじ1/2
・パン粉……20g
<B>
・塩……小さじ1/2
・水……400ml
・黒こしょう……少々
・セルフィーユ……適量
【作り方】
1. 新玉ねぎは皮をむき、上から1/4程度のところで切って中身をくり抜く。
「くり抜くのはスプーンでも構いませんが、ちょっと小さめのものだとくり抜きすぎる心配がないかもしれません。詰め物をして外側も食べるので、壁と底があまり薄くなりすぎないようにしましょう」
2. ベーコンを1cm角に切る。
「コロコロとした食感がおいしいので、ブロックタイプのベーコンがおすすめです」
3. くり抜いた中身をみじん切りにしたらボウルに入れ、Aを加えてよく混ぜます。
「パン粉以外の材料をよく練ってお肉の粒をなくしてから、パン粉を入れてよく混ぜましょう。手荒れが気になる方やベタベタするのが苦手という方は、手袋をするのがおすすめですよ」
4. 新玉ねぎに肉だねを詰める。
「新玉ねぎを元の形に戻すように、肉だねをこんもりと詰めていきます。煮ている間に崩れないうしっかり押さえましょう」
詰めた状態はこんな感じ。お尻の座りが悪かったら、底を薄く切って整えてから詰めましょう。
5. 鍋に4とベーコン、Bを入れて火にかける。沸騰したら蓋をして弱めの中火にし、25~30分煮る。
「コトコトゆっくり煮ることで煮崩れせず、この形のまま仕上げることができます。火加減に注意して煮ましょう」
こちらが30分経ったようす。玉ねぎに透明感が出て火が通っているのがわかります。
盛りつけたら黒胡椒を振り、セルフィーユを飾ります。玉ねぎと鶏ひき肉、ベーコンの旨みが出たスープは優しい味。柔らかいテーブルロールや甘めの赤ワインを合わせてみてはいかがでしょうか。
新玉ねぎの時期は5月くらいまで。兵庫県淡路島のものが有名ですが、産地によって甘みや柔らかに違いがあるので、試してみてくださいね。
【プロフィール】
料理家 / 星野奈々子
IBM JapanにてITエンジニア、マーケティングを担当し、会社員として働きながら数多くの料理学校・料理教室に通う。退社後にフードコーディネーターとして独立、現在は企業のレシピ開発を中心にレシピ本も多数出版している。近著に『ワンパターン買いが平日晩ごはんをラクにする。』(学研プラス)がある。
『ワンパターン買いが平日晩ごはんをラクにする。』(学研プラス)
買い物のバランスがよければ、献立も自然とバランスよく作れるようになる、と定義し、買い物の仕方から指南してくれる、新しい試みのレシピブック。ごはん作りがラクになる買い方と献立の組み合わせ方をまとめています。
https://hon.gakken.jp/book/2380123800