グルメ
2021/4/24 12:00

筍(たけのこ)の味わいは部位によって違う! 収穫から調理まで、春の味覚を楽しむコツ

毎年、春に旬を迎える「筍(たけのこ)」。国内の産地は、九州や京都が有名ですが、首都圏ナンバーワンの生産量を誇るのが千葉県。とくに、大多喜町(おおたきちょう)のたけのこは、身の白さが際立つ“白たけのこ”としても有名で、道の駅「たけゆらの里」には首都圏を中心に県外からも、毎年多くの人がとれたてのたけのこを買い求めに訪れます。今回は、この“たけのこの里”へと足を運び、おいしく食べる秘訣を探ってきました。

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筍(たけのこ)の旬はいつ?

私たちが食べているたけのこには、採れたてを味わえる生のたけのこと、通年購入できる水煮のたけのこの2種類があります。

 

水煮のたけのこは、季節問わず好きなときに味わうことができますが、生のたけのこの旬は「春」。一般的な孟宗竹のたけのこの旬は、九州では3月中旬から始まります。千葉県大多喜町では、毎年3月末~4月中旬あたりをピークに収穫。収穫時期は気温やその年の天候条件によって多少前後するそうですが、2021年は「収穫時期は例年より早め」とのこと。

 

生のたけのこは、トマトやキュウリのようにタネや苗を植えて収穫する野菜ではないため、この1か月足らずの短い収穫時期を逃すと、もう生の状態でたけのこを食べることができません。その名の通り、収穫しなかったたけのこは「竹」となり成長してしまうので、生のたけのこを味わえるのはこの時期だけ!

 

続いて5月になると、細くて長い「姫たけのこ」のシーズンがやってきます。千葉県大多喜町でも、ゴールデンウィーク前後に収穫時期を迎えるそうなので、生のたけのこを味わいたいなら、春の時期を逃さないようにしたいですね。

 

生産者を訪問! たけのこはどうやって収穫している?

そもそも、たけのこはどのように生えているか、どのように収穫されているか、知っていますか?

 

千葉県大多喜町で長年、たけのこを掘り続けている生産者のひとり、君塚さんの竹林を訪ねました。シーズン中は毎日、まだ日がのぼる直前の朝5時頃から収穫作業を開始。一説によると、たけのこは夜の間に成長するとされているため、朝早くから収穫を始めているそう。また、地中の温度によってたけのこの成長スピードが変わってくるため、毎日収穫作業を行わないと地中から次々とたけのこが出てきてしまうのだとか。君塚さんの農園では、1日で200キロ以上のたけのこを収穫・出荷することもあるそうです。

 

たけのこを掘り当てるのは、クワ一本と足の裏の感覚のみ! タネから育てる農産物とは異なり、どこにたけのこが生えてくるのかは、その年の春にならないとわかりません。まるで宝探しのようですが、豊作の年もあれば、まったくたけのこが収穫できない年もあるため収穫量を予測できず、生産者としては苦労する部分も多いのだとか。

 

竹林の中に入り、ほんの少しの土の盛り上がりを探しながら掘り当てていきます。

 

たけのこが生えているところを見つけたら、すぐにクワを振り落とすのではなく、まずは丁寧に周りの土を退けていきます。

 

ある程度土を掘り、根元が見えてきたら、たけのこと繋がっている根を切ってしまわないよう、ピンポイントでクワを入れなければなりません。今回取材させていただいた君塚さんはなんと、御年80歳! このクワ入れ部分に熟年の技が光るのだとか。クワを入れられる場所を見つけたら、一気にクワを下します。

 

クワに引っかかったたけのこをそのまま引き出すと、美しく真っ白なたけのこの断面が顔を出します。掘り出したら、新しい根からまた美味しいたけのこが生えてくるようにお礼の気持ちを込めて「お礼肥い(おれいごい)」(収穫後に肥料をあげること)を行います。

 

↑大多喜町のたけのこは、身の白さが特徴。切り口もこのように真っ白です

 

ところで、たけのこはどうやって生えているのでしょうか? 実は、土の中にタネを植えて出てくるのではなく、大きく成長した竹の根から生えています。

 

↑根の途中に生えている小さくかわいいたけのこ(写真右)。根のどこにたけのこができるのか、どういうタイミングで生えてくるかなど、たけのこの研究者はほかの作物に比べてほとんど存在しないため、まだまだわからないところが多いのだとか

 

↑成長すると、見慣れたたけのこの姿に。周囲にはぎっしりと根が張っています

 

この地中に埋まる小さなたけのこは、2~3日で収穫できる状態へと成長しますが、収穫されないまま地中から顔を出してしまうと、えぐみが強くなり出荷もできない状態になってしまいます。しかし、この収穫されなかったたけのこも、地中では太く頑丈な根を猛スピードで広げていき、空に向かう竹へと成長していきます。この頑丈な根があることで10~20メートルの高さに成長しても、強い風に倒されることなく生きていけるのだとか。

 

ちなみに、管理せず放置されている竹林にはたけのこは生えてこないそうです。この君塚さんの竹林でも、5年ほど成長してしまった竹は伐採し、毎年若い竹の根から美味しいたけのこが出てくるように管理されています。

 

アク抜きしなくてもいい!? 秘密は土質にあり!

とれたてのたけのこがおいしいことはわかっていても……ハードルは下処理。“アク抜き”が大変、というイメージがありますよね。

【関連記事】基本的なたけのこのアク抜きの方法 https://at-living.press/food/17136/

 

ところが、この千葉県大多喜町周辺、とくに“平沢地区”で採れるたけのこは、アク抜きが不要なほど、えぐみが少ないとされています。この身の白さとえぐみの少なさは、土に秘密があるのだとか。

 

「たけのこはあくまで山菜なので、えぐみがまったくないとは言えません。しかし、この地域は砂が少なく、粘土質の良質な土にたけのこが生えてくるため、えぐみが少なく、念入りにアク抜きをしなくても、おいしく食べられるたけのこが多いんです。その代わり、他の地域よりはキロ単価で200~300円ほどは高くなりますが、それだけの価値はありますよ」(道の駅「たけゆらの里」店長・森さん)

 

また、この房総半島大多喜町周辺は近くに海があるため、土に含まれるミネラル分もえぐみを抑える要因になっていると言われているそうです。

 

↑道の駅「たけゆらの里」でも、この時期の朝採れのたけのこは、出せば午前中に売り切れてしまうほどの大人気商品

 

一方、水煮のたけのこは一年を通じて購入が可能。水煮の加工方法は非常にシンプルで、大釜で40~45分茹でたたけのこを一晩水に浸し、少量のクエン酸とともに真空パックに入れて、煮沸しただけ。余計なものは一切入らず、旬の時期のうちに加工しているので、1年中美味しいたけのこを楽しめます。

 

旬の味わいを余すことなく楽しめる「生」のたけのこを選ぶのもよし、好きな時にいつでも旬の味わいを楽しめる「水煮」を選ぶのもよし、用途や時期に合わせて楽しんでみてください。

 

採れたてのたけのこを保存するには? 買ってきたその日のうちに下茹でを!

ここからは君塚さんの農園からも仕入れを行っている食品メーカー、石井食品の広報で栄養管理士の市川菜緒子さんに、たけのこをおいしくいただく調理方法について教えていただきます。

 

大きく立派なたけのこを買ってきたのはいいものの、その日のうちに食べ切るのは大変です。どのように保存したら良いのでしょうか?

 

「その日のうちに大きな生のたけのこを食べ切れれば良いですが、1~2キロのたけのこをその日のうちに食べ切るのも大変ですよね。可能な限りその日のうちに下茹でし、保存容器に移しておきましょう」(市川さん)

 

市川さんによると、大多喜町のたけのこはえぐみが少ないため、以下の手順に沿って下茹でするだけで大丈夫なんだとか。アク抜きの糠や唐辛子を使う必要はありません。

 

【えぐみの少ないたけのこの下茹で方法】

1. できるだけ大きく、高さのあるお鍋を用意する
2. 流水で土を洗い流す
3. 外側の皮を3~5枚はがす
4. 先端から5cm程度を斜めに切り落とし、2~3cmほど縦に切り込みを入れる
5. 上から2つ目のイボまでを残し、根本を切り落とす
6. たけのこにかぶる程度の水を入れ、火にかける
7. 沸騰したら弱火にし、蓋をして約1時間茹でる(根本に端がスッと通る程度)
8. 柔らかくなったら火を止め、一晩(8時間以上)置き、しっかりと冷ます

 

すぐに食べるのであれば、タッパーや保存袋の中に、適量の水とともに入れて冷蔵庫で1週間ほど保管が可能です。その際は、毎日の水の取り替えをお忘れなく!  長期保存するのであれば、下茹でし、食べやすい大きさに切ったものをそのままラップし冷凍保存しても大丈夫とのことなので、用途に合わせて保存方法を変えてみるのがいいでしょう。

 

「買ってきたその日のうちに下茹でができないと、大多喜町のたけのこでも徐々にえぐみが出てきてしまいます。購入してすぐに下茹でできない場合や、アク抜きを推奨されている産地のたけのこは下記のどれかを、たけのこ一本あたりに対して入れて、下茹でするようにしてください。

 

・鍋いっぱいの量のこめのとぎ汁
・4分の1合分の米
・米糠1カップ

 

保存していると、たけのこの隙間に白いポツポツと結晶化したものが出てきますが、これは記憶力や集中力を高めると言われているチロシン(アミノ酸の一種)という栄養素です。ボーッとしてしまいがちな春にはぴったりな栄養素なので、洗い流さず一緒に食べるようにしましょう」(市川さん)

 

たけのこがどのように収穫されているか、また下処理について確認したところで、さっそく、部位ごとの味わいの違いと、各部位のおいしさにぴったりのレシピを紹介していただきましょう。

“部位”ごとに楽しみ方が違う! たけのこを1本丸ごと味わうレシピ

ひとくちに「たけのこ」といっても、いくつかの部位があります。カットしてみると、香りや柔らかさ(食感)などに、部位によって差があることがわかるはず。

↑たけのこは大きく、4つの部位に分けられます

 

それぞれの味わいをいかした調理法を市川さんに教えていただきました。

 

1.姫皮(ひめかわ)

「生のたけのこを購入した人しか味わえない「姫皮」は、まさに旬の味。下茹でしたものをそのままサラダやぬた和えに使っても美味しいですし、菜の花やワラビなど旬の山菜と一緒にお味噌汁に散らしても春らしさを感じられる一品になります」(市川さん)

 

●「木の芽和え」

【材料(2人前)】
たけのこ(姫皮)…100g
木の芽…10枚程度
白味噌…30g
酢…大さじ1

 

【作り方】
1.姫皮を千切りにする。
2.木の芽をすりつぶす。
3.白味噌と酢を和える。
4.3に、1と2を加えて和えたらできあがり。

 

2. 穂先(ほさき)

「穂先はたけのこの中でも香りが強く柔らかい部分なので、お吸いものなど薄めの味付けでそのままの味を楽しみたいところです。また大量に生のたけのこを購入した方は、姫皮と一緒に自家製穂先メンマを作ってみるのも良いかも。ある程度保存も効くので、旬を過ぎてもたけのこを味わい尽くせます」(市川さん)

 

●「若竹汁」

【材料(2人前)】
たけのこ(穂先)…40g
わかめ(下処理済み)…20g
だし汁…350ml
酒…大さじ1
みりん…大さじ1
しょうゆ…小さじ1
木の芽…お好みで少々

 

【作り方】
1.穂先とわかめを、食べやすい大きさに薄く切る。
2.鍋にだし汁を入れて火にかけ、酒、みりん、しょうゆを加え、お好みの味を調える。
3.煮立ったら、筍とわかめを加えて、もうひと煮立ちさせる。
4.お椀に盛り付け、お好みで木の芽をのせて完成。

 

3. 中程(なかほど)

「中程は是非、たけのこごはんで食べていただきたい部分。シンプルな土佐煮にもぴったりな部位として水煮などでも使いやすい部分でしょう」(市川さん)

 

●「土佐煮」

【材料(2人前)】
たけのこ(中程)…250g
かつおの削り節…15g
しょうゆ…大さじ2
みりん…大さじ2
砂糖…大さじ2
水300ml

 

【作り方】
1.中程を食べやすい大きさに切る。
2.鍋に水、しょうゆ、みりん、砂糖をいれ火にかける。
3.煮立ってきたら1を入れて、弱火で5分煮る。
4.かつおの削り節を加え、さらに5分ほど煮詰めてできあがり。

 

4. 根元

「根元は、食物繊維が豊富でゴリッゴリッとした食感が魅力。中華料理の炒め物や唐揚げなどがおすすめです」(市川さん)

 

●「きんぴら」

【材料(2人前)】
たけのこ(根元)…200g
ごま油…大さじ1
しょうゆ…大さじ1
砂糖…大さじ1/2
みりん…大さじ1/2
塩…ひとつまみ
いりごま…大さじ2

 

【作り方】
1.根元を千切りにする。
2.プライパンにごま油を熱し、1を1~2分程度柔らかくなるまで炒める。
3.しょうゆ、砂糖、みりん、塩で味を調え、強火で汁気がなくなるまで炒める。
4.いりごまを加え、全体になじませたらできあがり。

 

5. 一本丸ごと

「もし小ぶりなたけのこを購入された場合、下茹でした後、皮のまま縦に包丁を入れ(4等分もしくは2等分)アルミホイルで二重に包む『ホイル焼き』も絶品です。オーブンなら200℃で30分、グリルなら強火で20分焼き上げれば、ほっくりとしたたけのこのホイル焼きが出来上がります」(市川さん)

 

↑そのままでも十分に美味しいですが、岩塩をつけても、バター醤油をかけても抜群なのだとか。4つの部位の味・香り・食感の違いを丸ごと味わえる『ホイル焼き』は、春限定の味わい。生のたけのこを見つけた方は、ぜひチャレンジしてみましょう!

 

最後に、このたけのこを炊き込みご飯としていつでも手軽に楽しめる“素“を紹介します。

 

混ぜごはんの素を使えば、下処理なしでおいしさを堪能できる!

炊き上がったご飯に混ぜるだけでいい、石井食品の「筍まぜごはんの素」。契約農家がひとつひとつ丁寧に収穫した、朝採れの新鮮なたけのこを工場ですぐに調理し、産地の美味しさをそのまま詰め込んだものです。

↑千葉県の大多喜産の筍まぜごはんの素(税込1080円)。姫皮からも出汁をとっているので、ごはん一粒一粒にもたけのこの風味がしっかりと染み込む贅沢な味わい

 

「筍まぜごはんの素」は、大多喜産のほかに、表面に焦げ目がついた焼きたけのこが入った京都府の京丹波産(税込1188円)、鶏肉を合わせて旨味がさらにアップした佐賀県の唐津産(税込1026円)、今回生産者を訪れた千葉県市原産(税込1080円)が展開されています。調理工程において食品添加物は一切使わず、素材のおいしさを活かす無添加調理にこだわって製造されており、地元のお酒や醤油と組み合わせ、たけのこの風味を最大限に活かした「筍まぜごはんの素」に仕上げられています。

 

石井食品の筍ごはん https://cp.directishii.net/takenoko

 

 

春の訪れを告げてくれるたけのこ。水煮や加工食品が増え、いつでも旬の味をそのまま味わうことができるようになりましたが、生のたけのこの味わいはこの時期だけのおいしさです。用途に合わせて、生のたけのこと水煮や加工食品を選んで、春の味を楽しんでみてはいかがでしょうか?

 

【プロフィール】

管理栄養士 / 市川 菜緒子

石井食品で広報や親子向けのオンライン講座を行いながら、自身でも個人の料理教室を主宰している。管理栄養士、野菜ソムリエの資格を有し、小さいお子様から大人まで楽しみながら料理する時間を提案している。

石井食品 https://www.instagram.com/ishii_official/