最近のフード業界における一大トピックが、プラントベースドフード(プラントベースフード)です。なかでも特に話題なのが、2021年4月に3店舗とオンラインショップを同時にグランドオープンし、カゴメとの業務提携も発表した「2foods(トゥーフーズ)」。5月には4店舗目を開業するなど、勢いは止まりません。設立の背景は? 味はどうなのか? 今後の展望は? それらを探るべく、店舗取材と代表者インタビューを行いました。
世界の潮流にグルメ大国の日本が勝負しない手はない
プラントベースドフードの直訳は、植物由来の食べ物。欧米ではすっかり身近な食文化で、スウェーデン発のIKEAは日本でも積極的に商品やメニューを展開しています。(IKEAのプラントベースフードについてはこちら)
一方で日本のメーカーや飲食店でも、2018年頃から大手を中心に大豆ミートの新商品が登場して話題に。ただし個人的には大手ならではの慎重さも見え、突き抜けるほど攻めているとは思えませんでした。そこに風穴を開けたのが「2foods」。自社開発のメニューはバリエーション豊富で、すべてがプラントベースドフードであるという専門性は他に類を見ません。そこで、ブランド設立の意図やコンセプトを、代表の東 義和さんに聞きました。
「例えば、世界のトップランナーである米国の『ビヨンド・ミート』は1兆円企業になっていて、他にも海外では有力なスタートアップが次々と生まれています。日本は食生活の違いなどが関係して遅れをとっていますが、プラントベースドフードはSDGs(持続可能な開発目標)の観点からみても広がるべき文化であり、浸透することは間違いありません。国内市場に可能性があるだけではなく、食は日本のお家芸ですから世界とも戦えます。そこで、日本を代表する世界ブランドになりたいという思いで『2foods』を立ち上げました」(東さん)
日本がプラントベースドフードの後進国である背景には、そもそもヴィーガンやベジタリアン文化が欧米ほど浸透していないという土台の違いがあります。とはいえ健康志向は年々高まっていて、もともとニッチだったプロテイン食品は、いまやコンビニに置かれるほど定着。潜在的ニーズは十分あると言えるでしょう。
「日本での定着に大切なのは、圧倒的なおいしさだと思っています。ミシュランガイドの星の数が世界一なだけあって、日本は最も味に厳しい国。“ヘルシーだから味は二の次”では、リピートしてもらえません。例えばドーナツなら本家ドーナツのおいしさを超えるべく、本気で取り組んでいます」(東さん)
「2foods」のコンセプトは「ヘルシージャンクフード」。プラントベースドフードが一定の層ではなく、より多くの人に受け入れられるためには食欲をそそるメジャーな料理であるべき。「メジャーな大衆食はギルティになりがちだけど、それが健康的だったらハッピーですよね?」という提案だと東さんは言います。
そんな、プラントベースフードのメニューの中から、最も肉感を楽しめそうな、「ソイチキンタツタドーナツサンド」を食べてみました。
健康を優先しておいしさを妥協する時代は終わった
「2foods」で現在最もメニュー数の多いカテゴリーがドーナツ。生地には動物性であるバター、卵、牛乳は一切使わず、それでいてふっくらもっちりの食感にさせるため、生地を長時間冷蔵熟成する発酵技術で実現しているとか。そのうえで、吸油率を低減させる最新テクノロジーの機械で揚げ、ヘルシーで胃もたれしづらいドーナツに仕上げています。
まずタツタだけを食べてみると、パサつきはなくしっとりしていてコク深い味付けも秀逸。個人的にはより分厚いほうが好みですが、納得のおいしさです。また豆乳ベースのタルタルソースも違和感なく、甘酸っぱく濃厚で絶品。ドーナツ生地の甘みやジューシーな香りが相まって、満足度は十分です。
次は「スパイシーまぜそば」にトライしました。主役の麺には小麦粉ではなく玄米を採用していて、それも日本に1社しかない最先端のフードテック企業の技術を活用。マイナス温度の中で玄米を超微粉砕することで、栄養素を残しつつ粘り気のある麺を作り出せたのだとか。
麺は断面が丸いタイプで太め。中華麺に欠かせない副原料「かんすい」を使っていないとのことですが、ワシッとしたワイルドな弾力とコシがあります。そして次は具材のミンチを食べてみると、これも驚きの味わい。
全体的な味は濃厚で、こちらも満足度は十分。6種のスパイスを効かせたオリジナルのラー油を効かせたタレが辛めで、刺激的なパンチがありました。5種の野菜はシャキッとしていて麺やタレとよく絡みます。こちらは冷麺タイプだったので、次は温麺タイプの「濃厚やみつき担々麺」(渋谷ロフト店限定メニュー)を味わいたいと思いました。
スイーツ系のドーナツも食べてみました。生地は前記と同じく、最先端の機器で仕上げたタイプ。しっとりエアリーな食感で軽く、天然のラズベリーや糖分で仕上げたグレーズ、国産抹茶やソイバタークリームともマッチして、これも違和感のないおいしさです。
ドリンクは、牛乳以外のソイミルクを使ったコーヒーなど数種がラインナップしていて、中でも人気なのがクラフトコーラ。ノンカフェインで体にはやさしいながらも、オリジナルブレンドのスパイスを使った刺激的な味が印象的です。強炭酸水も店内で作っているとか。
さすがのメニューの多彩さ。ただ、一つ気になったのがプラントベースフードの大定番と言えるハンバーガーがないこと。その理由を東さんに聞きました。
「実は、ハンバーガーは開発中です。納得できるおいしさを追求しているため現時点では間に合いませんでしたが、将来的には販売できると思います。楽しみにしていてください!」(東さん)
海外進出も視野に。小売り向け商品も開発中!
もうひとつ、後日にオンラインショップで購入した「生食感の濃厚ガトーショコラ」を試食してみました。特徴はバター、卵、牛乳、白砂糖が不使用であること。味は冷蔵なら生チョコ風、常温ならテリーヌショコラ風、レンジで温めるとフォンダンショコラ風と、3つの楽しさがある意欲作です。
味に関する違和感のなさでは、一番かもしれません。タッチはしっとりなめらかで、余韻までコク深く贅沢な食べごたえ。カカオのビター感が絶妙な甘さとあいまって、妖艶な方向性の本格ガトーショコラに仕上がっています。
冒頭にお伝えしたとおり、すでに4店舗を展開する「2foods」ですが、今後の出店にも意欲的。直近では麻布十番店のオープンを予定し、中長期的には2021年中に国内10店舗程度、その後は海外展開も目指しているとか。4月のグランドオープン時には「2foods 渋谷ロフト店」に併設する形で、プラントベースドフードに欠かせない最新フードテックブランドを体験できる「FOOD TECH PARK」も開業していて、カゴメとの協業においても小売店向け商品の開発など様々な可能性に挑戦中。GetNavi webでは「FOOD TECH PARK」の取材も予定しているので、こうご期待!
【SHOP DATA】
2foods 八重洲地下街店
住所:東京都中央区八重洲2-1 八重洲地下街北1号
アクセス:JRほか「東京駅」八重洲北口直結
営業時間:11:00~20:00 ※緊急事態宣言の発出などにより営業時間が変動する可能性があります。
定休日:なし