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2021/11/22 20:00

ヨーロッパ主導で始まり新世代によって変貌を遂げる「南アフリカワイン」の歴史と注目ワイナリー

4. ケープ地方スワートランド
− 南アフリカの大きな変化を体現する新しい産地 −

ケープタウン北部の一帯は元々、共同組合向けの原料ブドウの供給地でしたが、スパイスルートエステートが1990年代後半に設立されたことは、大きな変化の始まりでした。その初代醸造責任者だったイーベン・サディは自身のワイナリーからシラー主体のブレンド「コルメラ」、シュナン・ブラン主体の「パラディウス」をリリースし、その高い評価からスワートランドを一躍南アフリカワインの有望産地に押し上げました。

 

畑を管理はするが所有せず、古くから植えられている古樹のブドウを低収量で仕上げるスタイルは、それまでの協同組合の造るワインとはまったく別物の大きなスケール感を感じさせるもので、多くの若手生産者のロールモデルを造り出したのです。元々この地域は、1960年代から植えられた古樹が多く残っており、暑く乾燥した夏にも関わらず、水分を保つ深層の保湿性のある土壌のため、灌漑の必要がありませんでした。寒暖差も大きく雨も冬に集中するため、良質なブドウの収穫が可能な地域なのに、21世紀になるまで見向きもされなかったのです。イーベン・サディ氏に続くスワートランドの新進生産者の多くは、ナチュラルなワイン造りを志向し、“SIP”=スワートランド・インディペンデンド・プロデューサーズを結成し、独自の認証を定め始めました。

 

今回紹介するのは、日本人生産者として初めて南アフリカでワイン造りを行った佐藤圭史さんのワイン。学生時代に過ごしたオレゴンでワインの奥深さに魅了され、たどり着いたのは大自然に囲まれた南アフリカ。とくに意欲ある造り手にとって大きな可能性のあるスワートランドでした。

 

南アフリカワインのここ25年の大きな変化のなかで、もっとも劇的な変化を遂げたのはスワートランドです。これからインディペンデント・プロデューサーズの手によってどんな魅力的なワインが産まれるのか、期待の尽きない産地でもあります。

 

Keiji Sato佐藤圭史)
「Cage Chenin Blanc2019(ケイジ・シュナン・ブラン2019)」
3600
輸入元=ラフィネ

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