グルメ
2022/5/14 19:10

バターのコクと香りを丸ごと! フレンチのプロが教えるバターたっぷりレシピ

近年、ブームが続くバター。スイーツにも、人気の「バターサンド」をはじめ、「かじるバターアイス」(赤城乳業)や「飲むバター&ミルク」(ローソン)など、バターそのものの味を楽しむ商品も多く登場しています。また、固形のバター状ブロックを最後に入れて食べる、バターを楽しむためのラーメン「じわとろ 海鮮バター味ラーメン」(エースコック)なんて商品も。

 

バターは脂質が多く、なんとなく太りそう……というイメージも強いのですが、ビタミンAが豊富で、実はカロリーもオリーブオイルや胡麻油など他の油脂よりも低いとされています。そしてなんといっても、他のオイルに勝る、香りとコク!

 

バターを多く使う料理といえば、フレンチ。バターの消費量世界一位の国でもあります。今回はそんなバターをたっぷり使って、フランスを感じるレシピを紹介しましょう。フランスへの留学経験を経て、ル・コルドンブルーで学んできた経験を活かし、仏料理教室を主宰している西丸かおりさんに、基本的なバターの選び方とレシピを伺いました。

 

今回使うバターは「発酵バター」と「カルピスバター」

右が発酵バター、左がカルピス特選バター。

 

バターにはさまざまな種類がありますが、大きくは「発酵しているか・していないか」と、「塩が入っているか・入っていないか」の2つで区分できます。スーパーなどで手に入る通常のバターは「発酵していないバター」で、有塩のものと無塩のものがあります。発酵させたバターには「発酵バター」という名称がついていて、原料となるクリームを発酵させてからバターにしています。

 

「発酵バターには発酵させた酸味があり、バターをそのまま食べるときにも向いている味です。爽やかな味なので、コクがありながらもあっさりしています。フィナンシェやマドレーヌなどの焼き菓子に使うのもおいしく、とても香り豊かに焼き上がります」

 

また、今回のレシピではカルピスバターも使用。

 

「これはカルピスを作る工程でできる乳脂肪分を使ったもので、バターの王様とも言われています。見た目が真っ白で、ミルキーな味です。値は張りますが、今回のようなバターを引き立てたい料理にはぜひ使いたいおいしさです。
バターといえば、有名な『エシレ』を筆頭にフランスのものがメジャー。一方で、国産のものは発酵していないものが多く、クセがなくて、どなたにも食べやすいんですよ」(仏料理教室「西丸料理教室」主宰・西丸かおりさん)

 

海外の珍しいバターも取り入れたい

西丸さんにおすすめのバターを教えていただきました。海外食材を取り扱うスーパーで手に入るそうです。

 

「まずは、フランスの超一流チーズ熟成士が作る、『DOLPHE LE MEUNIER(ロドルフムニエ)』のバターです。無塩タイプは、コクと濃厚なミルクの香りを楽しめます。もうひとつはマダガスカル産のワイルドペッパーを練り込んだもので、このままステーキや魚にのせるのがおすすめ。左の『PUR NATUR』はベルギー南部の発酵バターです。大量生産ではなく、伝統的な昔ながらの方法をたった2人の職人だけが継承して作っているという特別なものです。
ヨーロッパのバターは発酵していることが一般的なので風味がよく、作り手によっても味が違います。バターを変えるだけで料理の味もぐっと変わりますから、いろいろ試してみると楽しいですよ」

 

では早速、バターをたっぷり使ったレシピを教えていただきましょう。焼き菓子「黒胡麻のカトルカール」、バターを冷やし固めた「レーズンと発酵バターのアミューズ」、ソースにバターをたっぷり使った「サーモンのアマンディーヌ」の3種です。

 

たっぷりのバターはやっぱり焼き菓子で!「黒胡麻のカトルカール」

カトルカールとは、フランス語で“1/4 が4つ”、という意味。小麦粉・バター・砂糖・卵の4つの材料を1/4ずつ入れて作ります。焼き上がりにはバターの香りがいっぱいに感じられ、一晩置いておくと、しっとりとしたバターの旨みを味わえるケーキです。

 

「4つの材料だけで焼くカルトカールは、いわばおばあちゃんの味のような、フランスでは伝統的な焼き菓子です。今回はそこに黒胡麻をたっぷり入れ、練り胡麻で作ったクリームを添えました。セミドライのいちじくやプルーンなどを入れてアレンジするのもおすすめです」

 

【材料(7×18×深さ5cmのパウンド型1台分)】

・黒胡麻……25g(うち5gは擦る)
・バター……100g
・グラニュー糖(卵黄用)……70g
・卵(卵黄と卵白に分ける)……2個
・薄力粉……100g
・グラニュー糖(卵白用)……30g

 

《黒胡麻のクリーム》
生クリーム100mlにグラニュー糖10gを入れて泡だて、黒練り胡麻20gを加えてよく混ぜる。

 

【作り方】

下準備

1.型にオーブンシートを敷き、冷蔵庫で冷やしておく。
2.オーブンを200度に予熱する。
3.卵黄と卵白に分け、卵白は冷蔵庫で冷やしておく。

 

1.黒胡麻を擦る。

「黒胡麻は、25gのうち5gだけ取り分けて擦っておきます。全部をそのまま入れてしまうよりも味わい深くなるんですよ」

 

2.室温に戻したバターとグラニュー糖をハンドミキサーでよく練る。

「いちばん大切なのは、バターが室温に戻っていることです。触ってみて少し冷たかったり硬かったりすると、ケーキも硬く焼き上がりますし、しっかり膨らまないこともあります。このくらいの季節なら前の晩に出しておいてもいいくらい、柔らかく戻しておきましょう」

 

3.卵黄を3回くらいに分けて入れて攪拌する。

「グラニュー糖のザラザラ感がなくなって白っぽくふんわりしてきたら、卵黄を入れてよく混ぜます。よく混ぜるというのも大切なのですが、材料に空気を含ませる意味もあるので、空気を意識してみてください」

 

4.ふるった薄力粉を3回くらいに分けて入れ、ヘラで切るように混ぜる。

「薄力粉は必ず入れる直前にふるってください。ダマを潰すだけでなく、こちらも空気を含ませるためでもあるので、あらかじめふるっておくのではなく、入れる直前にふるうのが大切です。混ぜるときもヘラを縦に使って切るように混ぜていきます。ふんわりと仕上げていきましょう」

 

5.別のボウルに卵白とグラニュー糖を入れ、ツノが立つくらいにミキサーで攪拌する。

「最初からグラニュー糖を入れてしまうと混ざりにくいので、少し卵白だけで混ぜてコシを切り、泡が出てきたらグラニュー糖を入れます。ある程度固くなったら、最後はハンドミキサーではなく泡立て器を持って手で混ぜます。キメが整い、きれいなメレンゲになりますよ」

 

6.メレンゲを生地に3回くらいに分けて混ぜ入れ、胡麻を加えてパウンド型に入れる。

「練らないようにさっくりと混ぜたら、型に入れていきます。生地は中心を凹ませるように入れていくと、生焼けになるのを防ぐことができ、しっかり膨らんで高さも出ますよ」

 

7.200度のオーブンで20分焼き、160度に落として20分焼く。

「天板の上に直接型を置いてしまってもいいのですが、そうすると底が焼けにくいので、網を一枚挟むのがおすすめです。また、200度で焼きはじめて10分たったら、一度ケーキに濡れた包丁を入れると、膨らみ方がきれいですよ」

 

こんなふうに縦に包丁を入れていきます。

 

8.焼き上がったら横を少し押して形を整える。

「生地が膨張して横に膨らむので、熱いうちにちょっと押してあげて、形を整えて冷まします。このまま粗熱を取り、ラップに包んで一晩置いておくと、焼きたてよりもしっとりしておいしくなりますよ」

 

ワインと楽しみたい「レーズンと発酵バターのアミューズ」

発酵バターにレーズンを混ぜて冷やし固めた、レーズンバター。バターの味や風味がしっかりと伝わるアミューズなので、ここはおいしいバターを選んで使いたいところです。

 

「今回は発酵バターを使って作っています。コクがあって濃厚な味のバターよりも、酸味があり、少しすっきりとした味のバターの方がしつこくなく食べられます。また、無塩バターを使った方がレーズンの香りがしっかり感じられ、有塩で作るとおつまみ感が増してお酒が進む味になります。ポイントは、自分できちんとアーモンドを炒ること。香りがよく、パリッとした食感にもなるので、ぜひやってみてください」

 

【材料(4個分)】

・レーズンの白ワイン漬け……40gのレーズンに対して白ワイン20ml
・発酵バター……40g
・スライスアーモンド……適量

 

【作り方】

1.スライスアーモンドをフライパンで炒る。

「アーモンドの表面が軽く色づくくらいまで加熱しましょう。焼き色がつくまで時間がかかるのですが、つきはじめたらあっという間に焦げてしまうので、よく見ておいてくださいね」

 

2.レーズンに白ワインを入れて15分〜1時間ほど置いたら、水分を拭き取る。

「ごしごし拭き取る必要はありませんが、バターに混ぜるときに水分があると、まとまりにくいので、軽く拭いておきましょう」

 

3.バターとレーズンを混ぜる。

「室温に戻したバターにレーズンを入れてよく混ぜます。レーズンでなくても、ドライアプリコットなど、お好みのフルーツでも構いません」

 

4.小さく切ったラップにレーズンバターを入れて丸める。

「ぎゅっと結ばず、軽く丸めておく程度で大丈夫です」

 

5.盛り付けたいお皿にレーズンバターをのせ、アーモンドを飾る。冷蔵庫で1時間以上冷やし固める。

「バターがべたべたするのですが、ベタベタしていないとアーモンドがくっつかないので、そっと盛り付けてアーモンドを軽く貼り付けましょう」

 

ソースにバターのコクを活かした「サーモンのアマンディーヌ」

アマンディーヌとは、アーモンドを使った料理のこと。バターをたっぷり溶かしたところにアーモンドと小粒のレーズンを和えたソースは、香ばしくてそれだけでも食べたくなるおいしさです。

 

「脂分の少ないサーモンやホワイトアスパラガスなどの料理に合うソースです。サーモンは最後の最後まで裏返さず、皮をパリッと焼きましょう。バターのコクがしっかりしたソースなので、付け合わせには茹で野菜や焼きトマトのような、酸味があってさっぱりしたものが合いますよ」

 

【材料(2人分)】

・サラダ油……大さじ1
・鮭……2切れ
・バター……30g
・スライスアーモンド……20g
・カレンズ……適量
・レモン……1/2個
・パセリ……適量
・インゲン、トマトなど付けあわせの野菜をお好みで。

 

【作り方】

1.フライパンにサラダ油をひき、皮目を下にして鮭を焼く。

「油をひいたら鮭の皮に少し油を馴染ませ、それから火をつけます。ジュワジュワと音がするまでは中火、その後は中弱火で焼き、8割がた焼けるまでこのまま触りません。皮をパリッと焼きたいので、いわゆる塩焼きにするような斜め切りのものではなく、まっすぐにカットしてある鮭で作るのがおすすめです」

 

2.付けあわせの野菜も一緒に焼く。

 

3.8割がた焼けたら最後に鮭をひっくり返し、10秒ほど焼いて皿に盛り、予熱で仕上げる。

「一度火をつけたら、火が9割くらい入るまで動かさずに加熱します。動かしてしまうと、皮がよれてしまったり破けたりするので、気をつけてください。かなり焼けたなというところまで焼いてから、最後に軽く反対側を焼いてできあがりです」

 

4.鮭と野菜を取り出してペーパーで拭き、バターを入れる。

「すぐに焦げてしまうので、しっかり冷めたフライパンにバターを入れます。バターが溶けて泡が出てくるのですが、その泡のキメが整い、細かくなってきたアーモンドとカレンツを入れましょう」

 

5.アーモンドが色づくまで弱火で加熱する。

「フライパンをまわしながら加熱していくと、アーモンドを壊さずにまんべんなくバリッとするまで熱することができます。アーモンドがほどよく色づくまで熱すると、バターとアーモンドが香ばしく、歯ごたえも豊かに仕上がりますよ。予熱でもさらに色づくので、ギリギリ手前まで加熱するのもポイントです」

 

6.火を止めてすぐにレモンを絞って色止めし、みじん切りにしたパセリを加える。

「こんがり色づいたら、レモンとパセリをよく混ぜ、バターの色止めをします」

 

7.皿に鮭と野菜をのせたら、ソースをかける。

「いんげんとトマトには軽く塩を振ります。トマトもソースと一緒に食べるとおいしいですよ」

 

家でもフランスの風を味わえるレシピ、いかがでしたか。外食することを考えたら、たまにはちょっといいバターとワインを買って、おうちで料理を楽しむのもいいものですよね。お好みのバターを見つけてみてくださいね。

 

【プロフィール】

西丸料理教室 主宰 / 西丸かおり

JSAソムリエ。慶応義塾大学仏文科を卒業。在学中にカンヌに留学。広告代理店勤務しながら服部料理学園アカデミー・デュ・ヴァンに通う。退社後、ル・コルドンブルー東京校にて仏料理菓子を本格的に学ぶ。その後渡米し、NYピーターカンプス、パーソンズ及びカリフォルニアにて各国料理を学ぶ。途中渡仏してルノートル本店、リッツエスコフィエ、ル・コルドンブルー パリ校にて学ぶ。1999年、NYマンハッタンにて料理教室をはじめ、2013年再度NYへ。フードコーディネーター、ソムリエとしてレシピ開発に携わる。2017年帰国、東京世田谷区で西丸料理教室を再開、フランスとアメリカで身をもって学んできた食文化、実用的で温かみのあるフランス家庭料理と菓子を伝えている。
HP https://saimaru.jp/
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