近年、お酒業界で存在感を増しているのがノンアルコールや低アルコールのドリンクです。以前書いた「2022年、お酒は何がヒットするのか?」でも「SDGsなお酒が拡大」とトレンドを予想しました。本記事では、関連度が高いジャンルであるハードセルツァーも含めて、その最新事情をレポートしていきます。
ハードセルツァー(アルコール入り炭酸水)は縮小傾向
まずは、米国におけるトレンドから日本上陸したハードセルツァー(直訳すると、アルコール入り炭酸水。アルコール度数や糖質などが低めなことも特徴)に関してぶっちゃけると、めちゃめちゃ盛り上がっているとはいえません。なぜなら、2021年デビュー組(ここではそうカテゴライズします)のブランドは縮小傾向にあるからです。
ただし一方で国内大手から新規参入したブランドは3つあり、そのうち2つはアサヒの新商品。2022年はハードセルツァーにとって、勝負の年といえるかもしれません。
微アル(アルコール度数1%未満)は続々と新商品
ハードセルツァーだけを見ると浮き沈みが見られますが、2021年から登場したアルコール度数1%未満の「微アルコール」は堅調。アサヒ(「ビアリー」や「ハイボリー」など)とサッポロ(「ザ・ドラフティ」)が新市場を切り拓いており、アサヒは2022年に新しく「ビスパ」という微アルコールスパークリング飲料を発売しました。
ノンアルコール類はビールテイスト飲料でおなじみのカテゴリーですが、今年に入って熱を帯びているのがレモンサワーのノンアル版です。サントリーが2021年に新発売した「のんある晩酌 レモンサワー ノンアルコール」のヒットに続けとばかりに、コカ・コーラは2022年2月に「よわない檸檬堂」を、3月にはサッポロは「サッポロ レモンズフリー」を、そしてアサヒは5月に期間限定で「アサヒスタイルバランスプラス 濃レモンサワーテイスト」を世に送り出しました。
一方、ソフトドリンクブランドからのお酒的アプローチも顕著です。アサヒ飲料は2022年3月に「ウィルキンソン タンサン #sober スパイシーレモンジンジャ」を、ポッカサッポロも同月に「北海道富良野ホップ炭酸水」を発売。どちらも無糖フレーバー炭酸水のカテゴリーですが、香りや苦みや辛みなどにお酒的なニュアンスを感じます。
「ソバーキュリアス」という新カルチャー
これだけ各社がノンアルコールや微&低アルコールに力を入れている理由は、いくつかあります。ひとつは世界的に「ソバーキュリアス=お酒をあえて飲まない」カルチャーが広がっているから。加えて、健康志向のニーズに対する商品提案の側面もあるでしょう。
さらには多様的な価値観が支持されるなか、メーカー各社も「スロードリンク」「ドリンク・スマート」「スマートドリンキング(スマドリ)宣言」といったスローガンを提言。いわば飲み手側の選択肢を広げる提案をしているのです。
お酒が好きな人は飲めばいいし、苦手な人や飲みたくない人にはおいしいノンアルなどもありますよと。アルコールの有無にとらわれず、自由に楽しくやりましょうよーー。メーカー各社はそういった世の中にしていきたいのではないかと、筆者は考えています。