数の子は子孫繁栄を祈る縁起の良い食べ物
続いては数の子です。数の子は、ニシンのたまごのこと。アイヌ語でニシンを「カドイワシ」と呼び、その子どもを「カドの子」と呼ぶようになったことが語源という説があります。正月料理として定着したのは江戸時代で、当時は今のように高価ではなく、もっと簡単に入手できる食材でした。
数の子の粒の多さが子孫繁栄を示し、縁起がよいと結納品としても活躍しました。ニシンには「二親」という漢字が当てられることがあり、ふたりの親からたくさんの子宝に恵まれるようにという意味が込められています。
「売られているものは、ほとんどが塩漬けになっているものか、すでに塩抜きして味付けされているもののどちらかです。塩漬けのものはそのまま食べられないので、塩抜きして漬け汁に漬けてからいただきます」
プチプチした音と食感を楽しむ「数の子のおだし漬け」
数の子を塩抜きしてだしに浸していただく、おせちの定番レシピ。塩抜きに一日かかるので、早めに準備しなくてはならないお料理のひとつです。
「数の子をおいしく仕上げるポイントのひとつは、しっかりと塩抜きすること。時間を守るというより、塩が抜けているかきちんと味見をして確かめてから、だしに漬けるようにします。もうひとつのポイントは、おいしい出汁(だし)をひくこと。昆布とかつおぶしでひいた一番だしを使います。このひと手間が、数の子をぐっと上品な味に仕上げます」
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【材料】
・数の子……5本
・水……400ml
・塩……小さじ1/2
・だし……150ml
・うすくちしょうゆ……大さじ2
・酒……大さじ1
・かつおぶし……適宜
【作り方】
1.ボウルに水と塩を入れてよくかき混ぜて塩を溶かし、数の子を入れて丸一日置く。
「水から数の子が出ないよう、キッチンペーパーやラップを密着させて置いておきます。塩水で塩抜きするのは不思議かもしれませんが、呼び塩といって真水に漬けるよりも早く塩が抜け、数の子が水っぽくならずに塩抜きすることができます」
2.白い薄皮を指の腹でこすりながら剥く。
「薄皮は口に残るので、両面をよく見て丁寧に取り除きます」
3.鍋にだしを入れて沸かし、うすくちしょうゆと酒を入れて冷ましたら、数の子を入れる。
「キッチンペーパーで覆ったら、このまま一晩置いて味を含ませます。盛りつけるときに、かつおぶしをのせましょう」
今回は、黒豆の煮方と数の子の漬け方だけをご紹介しましたが、毎年1〜2品ずつでもレシピを覚えていけば、だんだんと作れる品数も増えていきます。手作りした分、特別なお正月に。ただでさえ慌ただしい年末ですが、家族や周りの人が健康でしあわせであるよう願いながら、おせちの用意ができたらいいですね。
プロフィール
料理家 / 吉川愛歩
出版社に勤務後、ライターとして独立。雑誌や書籍の出版に携わりながら茶懐石を学び、料理家・フードコーディネーターとして活動をはじめる。企業広告や雑誌等でレシピを制作するほか、趣味が高じて『メスティン自動BOOK』(山と渓谷社)や『キャンプでしたい100のこと』(西東社)などでアウトドア料理のレシピを考案。また、誰にとっても読みやすいバリアフリーレシピの書き方を研究中で、編集者・ライターとしても幅広く活動している。『1年生からのらくらくレシピ』(文研出版)や『糖質オフのやさしいお菓子』(ワン・パブリッシング)の制作に携わり、『日本一おいしいソロキャンプ』(KADOKAWA)では執筆とともに調理も担当している。