世界的なウイスキートレンドのなかでも人気の高い、スコッチウイスキーのシングルモルト。シングルモルトは単一の蒸留所のモルト原酒のみでつくるため、産地の風土的個性をダイレクトに感じられることが魅力。
スコッチウイスキーは、イギリスのスコットランドで製造されるウイスキー。モルトウイスキー、グレーンウイスキー、ブレンデッドウイスキーがあり、ウイスキー全消費量の約6割を占めるといわれる王様的存在です。冷涼かつ清流に恵まれたスペイサイド、ピート(泥炭)の聖地アイラなど6大産地があり、各個性を楽しめるシングルモルトが近年特に人気。有名な銘柄には「ザ・グレンリベット」や「シーバスリーガル」などがあります。
そのシングルモルトブランドのひとつ「アベラワー」から、ひと際個性的な銘柄が日本での販売を開始しました。その名も「アベラワー アブーナ アルバ」。メディア向けのテイスティングセッションから、特徴と味わいをレポートします。
ノンピートモルトを清流の軟水で仕込み厳選した樽で熟成
「アベラワー アブーナ アルバ」は、シングルモルトスコッチウイスキー「アベラワー」の新商品で、本国以外では米国では2019年から展開されており、満を持しての日本上陸となりました。
「アベラワー」は、スコッチウイスキーの聖地と評されるスコットランド・スペイサイド地方のほぼ中心に位置し、1879年にジェームス・フレミングが創業したアベラワー蒸留所で生み出されています。
ネーミングは、ゲール語で“せせらぐ小川の河口”という意味。スペイ川の清流に恵まれた、ウイスキーづくりに理想的な環境であり、さらに原材料の大麦は蒸留所から24km以内の範囲で栽培されたものを使用。地元の自然を最大限に生かして、良質なシングルモルトをつくり続けています。
また、シェリーとバーボン2種類の熟成樽で熟成したウイスキー原酒を、バランスよく合わせる「ダブルカスクマチュレーション」という独自の製法によって、エレガントさと複雑さが調和した味わいを生み出しています。
スコッチといえばモルトをピート(泥炭)で焚いたスモーキーフレーバーをイメージする人が多いと思いますが、「アベラワー」ではあえてピーテッドモルトを使いません。それにより、味わいは甘み豊かでフルーティーかつフローラルに仕上がるのです。
濃密なボディとクリーミーな甘みに驚かされた!
今回日本上陸となった「アベラワー アブーナ アルバ」は、熟成樽にフォーカスした「アブーナ」シリーズの第2弾。「A’BUNADHA(アブーナ)」はゲール語で“起源”を意味し、「ALBA(アルバ)」はゲール語で“スコットランド”、ラテン語で“ホワイトオーク(Quercus Alba)”と2つの意味をもちます。
アブーナ=起源とは、創業者のジェームス・フレミングをはじめ、ウイスキーづくりの先人たちの功績を称え、19世紀の創業当時と同じハンドメイド製法でつくることを表現。そして、アルバ=ホワイトオークということで、厳選したファーストフィルのアメリカンホワイトオーク樽のみで熟成しています。
ファーストフィルとは、バーボンやシェリーの熟成樽を初めてスコッチウイスキーの熟成に使用する樽のことですが、スコッチではセカンドフィルやサードフィルを用いることもあり、ファーストフィルの樽のみで熟成させることもかなり贅沢といえます。
ということで、いよいよ「アベラワー アブーナ アルバ」をテイスティング。なるほど! 確かにバニラやハチミツのようなバーボン樽由来の甘みが印象的。キャラメルを思わせるクリーミーなタッチの奥にはドライアップルのような果実味もあり、シナモンなどほんのりスパイシーなニュアンスも。
そして、ストレートで飲むとかなりボディが豊かなのも特徴。これはカスクストレングス(加水をせず樽出しそのままの度数)でボトリングし、冷却濾過をしないノン・チルフィルタリングにしているから。アルコール度数はバッチナンバー毎に異なるとのことですが、60%前後あるのでストレートよりは少々加水して味わったほうがいいかもしれません。
続いて、違いを明確に感じるためにシェリー樽熟成の「アベラワー アブーナ」も試飲させてもらいました。こちらはより妖艶なスパイス感がはっきりしていて、オランジェット(いわゆるオレンジチョコレート菓子)のようなコク深く爽やかな甘みも。
テイスティングセッションのラストは、森田さんのコーディネートによる洋菓子とのペアリングを体験。森田さんによると、甘みが豊かでアルコール度数の高い「アベラワー アブーナ」シリーズには甘いものがよく合うとのこと。
洋菓子とのペアリングも秀逸で、甘くボディのしっかりしたウイスキーを少量ずつちびちび楽しむことも好きな筆者にとって、至福の時間となりました。バーボンのような要素をまとった、個性的なシングルモルトスコッチ「アベラワー アブーナ アルバ」。晩酌やパーティー用、またはプレゼントにもいかがでしょうか。