縦折りタイプの折りたたみスマホって本当に必要? という疑問
筆者は、2つの機能をあわせ持つ2-In-1の製品を好んで使っています。例えば、2-In-1ノートPC。通常のノートPCとしての機能に加え、ディスプレイを折り返すとタブレットのようにも使えて、さまざまな局面で重宝します。
そんな趣向を持っているので、折りたたみスマホも気になる製品です。先日発売された「Google Pixel 9 Pro Fold」のように、「折りたたんだときはスマホとして使え、横に開けばタブレットのように使える」という分かりやすい特徴に魅力を感じていました。
一方で、折りたたみスマホには縦に開くFlipタイプもあり、こちらにはあまり惹かれていませんでした。「縦方向に折りたたんでも小さくなるだけでは?」 「機能面でプラスアルファのメリットはなさそう」と考えていたためです。
そんな筆者に、motorolaの縦型折りたたみスマホ「razr 50」をレビューする機会が訪れました。
折りたたんだときのコンパクトさはやはり魅力
まずは開いた状態で手に持ってみると、かなり大型のスマホであることがわかります。高さは約17cm、画面サイズは約6.9インチで、現行スマホの中でもトップクラスに大きい製品となっています。
ところが、折りたたむことで高さは約8.8mmとなり、手のひらに収まるサイズに。しかも、razr 50の背面には約3.6インチのサブディスプレーが配置されています。
シャツの胸ポケットに入れてみると、折りたたみ時の小ささがよくわかります。開いた状態でポケットに入れると、1/3~半分程度はみ出してしまい若干みっともなく見えますが、折りたたんだ状態だとポケットにすっぽりと収まってくれました。
折りたたんだ状態の厚さがそんなに気にならないのも好印象です。厚さは展開時で約7mm、折りたたみ時でも約1.6cmしかないため、ポケットに入れた状態で横から見ても目立ちません。このコンパクトさは、横折りのスマホにはない大きなメリットだと感じました。
背面ディスプレーは便利ではあるけれど……
razr 50のもう一つの特徴は、背面に設置された3.6インチディスプレーです。自由度が高く、さまざまなアプリを折りたたんだままで使用できます。
天気やスケジュールのほか、メッセージアプリや身だしなみチェック用のミラーアプリなど、すぐに確認したいものを背面ディスプレーで見るという使い方は便利だと感じました。
ただし、サブディスプレーの大きさは3.6インチしかないので、用途は限定されてしまいます。例えばYouTubeを表示させることも可能ですが、小さくて少々見にくいと感じました。
また、縦型の動画は視聴に適していません。下写真はすべて同じショート動画を表示させているところですが、背面ディスプレーだと上下が大きくクロップされました(画像右上)。折りたたんだままで90度回転させると縦方向の表示領域が広くなりますが、それでもすべてを表示しきれていません(画像右下)。動画は素直にメインディスプレーで見たほうが良さそうです。
ちなみに背面ディスプレーを使うときは、テント型にして自立させると便利です。
仕事で使用する場合に自立させてPCの横に置き、AIアプリを表示させておくとか、ビデオチャットを表示してPCでは別の画面を見るといった使い方が想定できます。
以上のように、本機種の背面ディスプレーには、「自由度の高さ」や「自立できること」などのメリットがあると感じました。
しかし正直なところ、わざわざ小さな背面ディスプレーを使わずに、開いてメインディスプレーを使えばいいのではないかと感じる局面も多くあります。
撮影で評価一変! 縦折り+背面ディスプレイの真価を発揮
ここまで端末を触ってみたところ、本機の明確なメリットとして感じられたのは「縦折りでコンパクトになること」でした。一方、形状を変えて自立できることや、背面ディスプレーの存在は便利ではあるものの、「普段使いで本当に必要な機能だろうか」と感じる場面も多かったのは事実です。
ところが、本機を屋外に持ち出してカメラでの撮影をしてみると、その評価が一変しました。
縦折りの形状や背面ディスプレーがあることで、撮影の自由度が大幅にアップすることがわかり、印象が大きく変わったのです。3つのポイントに分けて見てみましょう。
①セルフィー撮影がより楽しく
背面ディスプレーの存在はセルフィー撮影を格段に便利にしてくれます。写真のようにテント型にして自立させ、カメラを起動することで、画角や表情を確認しながら撮影可能です。
この撮影スタイルの大きな強みは、アウトカメラで撮影できるということ。本機のアウトカメラは5000万画素メインカメラ+1300万画素超広角/マクロカメラのデュアル構成。インカメラ( 3200万画素)と比較して最大画素数が高いだけでなく、より広角で撮影できるので、セルフィー表現の幅が大きく広がりそうです。
リアルタイムで自分をモニターしながら動画撮影できるので、TikTokユーザーなどにも最適な機能でしょう。
②ローアングル撮影時に便利
高層ビルやタワーなどを迫力のある画角で撮影するため、地面に膝をつき、ローアングルでスマホを構えた経験はないでしょうか。通常のスマホの形状だと、低い位置で画面を確認しながら撮影しようとすると、どうしても無理な体制になってしまいます。
これも、背面ディスプレーを使うことで解決します。ここでは、razr 50をテント型にして地面近くに置き、ローアングルで自転車を撮影してみました。
こんなに低い位置から撮影しても、寝転ぶような姿勢をとることは一切なく、背面モニターを上から覗き込むだけで画角の確認をすることができました。これは、通常のスマホでは難しい、折りたたみスマホならではのメリットでしょう。
③カムコーダーモードが超優秀!
今回razr 50を試してみて、一番好印象だったのが「カムコーダーモード」です。写真アプリを立ち上げた状態で90度折り曲げると、カムコーダーモードに変更され、ビデオカメラのようなポジションで動画撮影ができるようになります。
通常、スマホで横位置の動画を撮影する場合、スマホをつまむような形になり、どうしても安定感に欠けてしまいます。
ところが、カムコーダーモードなら、手のひらにすとんと乗る形になり、安定感は抜群。滑り落ちてしまうかもという不安はなく、楽に撮影を続けることができました。操作感も良く、画面タッチでレンズの切り替えや拡大/縮小、縦横の変更なども簡単に行うことができます。
このスマホを購入したら、動画撮影の時間が増えそうだな思うくらい使い勝手の良いモードだと感じました。手ぶれ補正などはそこそこですが、普段使いなら十分なレベルと言えるでしょう。
コンパクトさとカメラ撮影の自由度の高さこそ魅力。この機能で10万円台はお買い得かも
レビュー前は「縦折りスマホ懐疑派」ともいえる考えを持っていましたが、一通り試してみたところ考えは一変しました。
確かに、横折り(Fold)タイプの折りたたみスマホのように、タブレットとしても使用できるというメリットはありません。しかし、縦折りの形状を生かした自撮り機能やカムコーダーモードなど、一般的なスマホではできなかった機能が多くあり、2-In-1どころか、それ以上の可能性を感じる製品でした。コンパクトさとカメラ撮影の自由度の高さに魅力を感じる人であれば、本製品が選択肢に入ってきそうです。また、さまざまなアプリを導入して使いこんでいけば、より便利な使い方を思いつくかもしれません。
そして、最後にもう一つ付け加えたい本機のメリットが価格です。折りたたみスマホはハイエンドモデルが多く、実売20~30万円を超える高価格帯であることもめずらしくありません。
razr 50はモトローラ公式サイトの価格が13万5801円で、Amazonなど通販サイトではSIMフリーモデルが実売10万6000円前後で購入可能です。キャリアの場合、乗り換え割引を適用させれば9万円を切る価格での購入も視野に入ってきます。
FeliCa(おサイフケータイ)対応など普段使いに便利な機能も備えており、縦折りスマホの利便性を試す最初の一台として、有力な選択肢になるのではないでしょうか。