Vol.149-3
本連載では、ジャーナリスト・西田宗千佳氏がデジタル業界の最新動向をレポートする。今回は廉価版として登場したiPhone 16eの話題。これまでのiPhone SEではなくiPhone 16シリーズとして登場させた狙いを探る。
今月の注目アイテム
Apple
iPhone 16e
9万9800円~(SIMフリー・128GB)

スマホはいろいろな時期に発売される。過去には明確な商戦期があったが、発売時期だけで言うなら、もう季節要因は減っている。
ただそれでも、シェアが大きな大手に影響は強い。特に、AppleとGoogleが新製品を発売する「春と秋」は、スマホ新製品の季節というイメージを感じさせやすい要因と言える。
Googleは毎年この時期に廉価版の「a」シリーズを発売している。その年の基本設計を定め、プロセッサーも同じ世代の同じものにした上で、コストとスペックのバランスを取りなおしたモデルがaシリーズ、と言える。
Appleは数年に一度しか出さない。来年どうなるかはわからないので確実ではないのだが、少なくとも「SE」シリーズはそうだったし、iPhone 16eもそうだろう。
これは、毎年デザインを変えるGoogleのPixelと、基本デザインは数年に一度しか変えないAppleの違い、ということもできる。
Appleの場合、今年は廉価モデルを大きくデザインチェンジしてきた。連載の前回で解説したように、モデムチップである「C1」の導入を軸に、設計を現在のiPhoneに寄せている。特にAppleの場合には、低価格モデルを“長期的に調達可能なパーツで作り、数年単位で見るとコストが低くなる”という作り方をする。その関係で、モデルチェンジは数年おきとなりやすい。
今年は製品名に「16」と番号を入れてきたので、毎年モデルチェンジする戦略に変えてきた可能性もある。とはいえ、秋に発売されるメインモデルを性能で追いかけることはしないだろうから、モデルチェンジによる性能の幅は小さいのではないか、と筆者は予想している。だとすれば、さほど大きな変化ではない、とも言える。
GoogleはPixel 9aを、例年よりも大きく変えてきた印象がある。カメラ部の突起を完全に無くしてきたのだ。カメラモジュールの変更によるものだが、結果として、昨今のスマホにはあまりない、非常にすっきりしたデザインになった。
こうした形状を今後も続けられるかはわからない。特に上位機種では、カメラの性能から来る物理的な制約もあり、かなり難しいだろうと考えられる。しかし、無難でコストパフォーマンス重視、という印象が強かったaシリーズに独自の魅力とデザインを加えていく流れなのだとすれば面白い。
Pixelは昨年以降シェアを落としている。Pixel 9aの企画はシェア低下が見える前のものだと思うが、結果的に、シェア回復をどう考えるかという意味では重要な製品になった。
スマホのシェアにおけるこれら製品の意味はどこにあるのだろうか? その点は次回のウェブ版で解説していく。
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