Vol.150-1
本連載では、ジャーナリスト・西田宗千佳氏がデジタル業界の最新動向をレポートする。今回はマイクロソフトのPC、新Surfaceの話題。同社はSnapdragonプロセッサーモデルの普及を目指しているが、その理由は何かを探る。
今月の注目アイテム
マイクロソフト
Surface
米国価格799ドル~(Surface Pro 12インチ)

価格の高騰で普及がなかなか進まない
5月6日(アメリカ時間)、マイクロソフトは、同社のPC「Surface」の新型を発表した。日本でも一部モデルは販売がスタートしている。
マイクロソフトはSurfaceで、昨年より「Snapdragonシフト」を敷いている。企業向けではインテルのx86系プロセッサーを採用しているものの、個人市場向けでは、クアルコムのARM系プロセッサーである「Snapdragon X」シリーズ採用モデルだけを提供している。
Windows 11のARM版には、x86系プロセッサー向けに作られたソフトを動かすための機構が組み込まれている。いわゆるエミュレーションであるため、互換性に不安を持つ人も多いだろう。
筆者は日常的にSnapdragon版のSurfaceを使っているが、“そこまで心配するほどではない”という実感がある。「ATOKのようなサードパーティー製日本語入力ソフト」「ドライバーソフト」「ゲームソフトの一部」が動かないという制約はあるが、ARM版のソフトも増えているし、理解して使う分には問題はない。発熱の小ささ・バッテリー稼働時間の長さは大きな魅力である。
一方、Snapdragon版の製品があまり売れない理由もよくわかる。要は価格が高いのだ。
最新のPCはどうしてもハイエンドかつ最新のプロセッサーになりがちで、しかもここ2年ほどは円安傾向。日本での販売価格が特に高く見える……という課題もあっただろう。だがそれだけでなく、同じ最新プロセッサー同士だと、Snapdragon版とx86版の価格差は小さい。だとすれば、互換性のリスクがないx86版を選ぶのもわかるところだ。
価格を大幅に下げて普及促進を狙う
ここで、新Surfaceの話に戻ろう。
今回マイクロソフトは、新製品の価格を下げてきた。新製品ではミドルクラスの「Snapdragon X Plus」を採用、サイズもタブレットタイプの「Surface Pro」が12インチ(既存モデルは13インチ)、クラムシェルタイプの「Surface Laptop」が13インチ(既存モデルは13.8インチ)と少し小さくなっている。
結果として、価格は昨年モデルが20万7680円からだったところを、799ドル(約11万5000円)からと、大幅に下げている。
Surfaceには低価格モデルの「Go」シリーズがあるのだが、新製品はそれに近い位置付けだ。元々はいわゆる学生向けという側面が強いのだが、スペック的にはかなり充実しており、コストパフォーマンスが上がっている。サイズが小さいという不満を持つ人もいるだろうが、逆に軽くなったことを魅力と思う人もいそうだ。
要はマイクロソフトの狙いは、価格を下げてSnapdragon搭載モデルを普及させることにあるのだ。
マイクロソフトはなぜそこまでSnapdragonにこだわるのか。そして、その結果今年のPC市場はどうなるのか? その辺の予測については、次回以降じっくりと解説していくこととしたい。
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