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2017/2/7 7:00

【西田宗千佳連載】ソニー・パナソニック・東芝、3社の有機ELへの取り組み

「週刊GetNavi」Vol.51-3

↑CES 2017に展示されたパナソニックの有機ELテレビ「「65EZ1000」」(国内未発表)
↑CES 2017に展示されたパナソニックの有機ELテレビ「「65EZ1000」」(国内未発表)

 

前回述べたように、テレビ向けの有機EL(OLED)パネルの画質は、現状“パーフェクト”とはいえない。各社の方針によって、有機ELへの取り組みは若干異なっている。

 

有機ELを“現状最良の画質が得られる可能性の高いデバイス”と判断し、トップのテレビに位置づけるのがパナソニックと東芝だ。確かに、現在手に入るLGディスプレイが製造する有機ELには弱みがある。だが、それを理解したうえで、“技術でカバーできる”と判断したわけだ。

 

両社が技術でカバーできるのは、“液晶で困らされてきたから”でもある。液晶は、いまも昔もテレビに使うには色々と弱みの多いデバイスだ。鮮明な色を出しづらく、輝度が低い部分では色が歪む。そうした部分を改善するために、各社は“高画質化回路”の開発に力を注いできた。液晶テレビの10年は、高画質化回路開発の歴史、と言っても過言ではない。

 

自社でディスプレイパネルを作る企業はパネルでも差別化ができる。しかし、仮にそうであっても“パネルだけで他社と差別化する”のは難しい。なぜなら、同じ時期に生産している技術は、どこも一長一短な側面を持っており、ひとつの技術だけで他社を圧倒するのは困難だからだ。ディスプレイパネルの自社生産で得られるのは“半年から1年という時間”と“若干のコスト”くらいのものである。

 

ディスプレイパネル工場を持ち、それを運営するには莫大な投資が必要になる。それがビジネス上リスクになり、ほんのすこしの失敗で企業を傾く例を、我々はこの数年でいくつも見てきた。

 

東芝は当初からパネルを外部調達に頼り、高画質化回路でテレビの差別化を行ってきた。パナソニックも、プラズマディスプレイ事業終息以降は、高画質化回路によって差別化を試みてきた。その2社にとっては、有機ELがやってきたとしても、その特性を理解したうえで“また高画質化回路で補正する”だけのことだ。もちろんそのためには、パネルの特性を綿密に研究する必要があり、簡単に“あるものを組み合わせてできる”ものではない。パナソニックは、日本市場向けには今年からの投入となるものの、欧州市場では先行して2016年から製品を投入している。開発開始から含めて、3年弱に渡りLGディスプレイの有機ELをチェックしてきた結果を製品に反映した、と言っていい。

 

ソニーも自社開発した高画質化半導体を使う、いわば“技術でカバー”路線なのだが、他社とはアプローチが違う。なぜなら、同社だけが“テレビの最上位に有機ELを位置付けない”方針を採るからだ。同社は2016年に発売した液晶テレビ「BRAVIA Z9Dシリーズ」を最上位と据え、OLEDと液晶の間では上下をつけるのではなく“横に幅を広げる”(ソニー関係者談)戦略を採る。

 

では、その真意はどこにあるのか? その辺は次回Vol.51-4で解説する。

 

●Vol.51-4は2月14日(火)更新予定です。

 

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