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2017/3/3 7:00

【西田宗千佳連載】Nintendo SwitchはNVIDIAとの提携で「モダンな構造」になった

「週刊GetNavi」Vol.52-2

20161022-s3 (12)

 

Nintendo Switchは、これまでの任天堂のゲーム機の伝統を引き継ぐような形で設計されている。なかでもおおきなコンセプトなのが「ゲームをテレビの前から解放する」ことだ。これはひとつ前の世代の据え置き型ゲーム機であるWii Uで試みた手法であり、さらにいえば、ゲームボーイ以来、携帯ゲーム機で試みてきたもの、といってもいい。

 

ひと昔前より人々は忙しくなった。モバイル機器の普及で「テレビの前に座り、テレビを見ている」時間が減っている。だからこそWii Uでは、コントローラーにディスプレイを組み込み、テレビの前にいなくても遊べる構造であること軸にしたのだ。

 

だが、結果的にそれはうまくいかなかった。理由は2つある。ひとつ目は、本当の意味で「コントローラーだけでゲームができる」わけではなかったことだ。本体から無線通信で画像を送る形式になっていたため、本体の近くでないと遊べなかった。それでは中途半端で、「どこにいてもゲームが遊べる」とは言いづらかった。

 

そしてふたつ目は、ゲーム機としての性能だ。特に欧米では、グラフィックがリッチでゲーム内の仕掛けも凝った、大規模なゲームがヒットするようになっていた。そうしたゲームは多くがPCで開発され、そこからゲーム機へと展開されるようになっている。ライバルであるlayStation 4やXbox OneはPCからの移行が非常に容易な設計だったが、Wii Uは設計が一世代古く、同じゲームを移植するのが難しかった。結果、欧米向けのトレンドに乗ったゲームがあまり出なかったため、ゲーム機としての魅力が薄くなってしまった。

 

こうした問題を解決するためにNintendo Switchに採用されたのが、NVIDIAのSoCだ。NVIDIAのGPUを搭載したことで、Wii Uに比べて性能は大幅に向上する。本体とディスプレイ部を分ける必要がなく、「テレビにつながるポータブル機」のような構造になる。これなら、どこでも同じゲームができる。性能とモビリティを同時に実現するため、Nintendo Switchは、持ち運べるゲーム機としては初めて、内部にファンを搭載している。まるでノートPCのようだ。

 

NVIDIAの最新GPUを採用した結果、開発環境も整備された。「Unity」や「Unreal Engine」といったゲームエンジンの対応レベルが上がった。これらは多くのゲームで採用されており、Nintendo Switchへゲームを移植してもらううえで、非常に重要な技術基盤になる。

 

別の言い方をすれば、NVIDIAとの提携によって「よりモダンな構造のゲーム機」として設計されたことが、Nintendo Switchの最大の特徴である、といってもいいだろう。

 

一方で、こうした構造を採ったことが、Nintendo Switchのヒットに対する懸念にもつながっている。それがなにかは、次回Vol.52-3で解説しよう。

 

●Vol.52-3は3月10日(金)公開予定です。

 

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