「週刊GetNavi」Vol.37-4
ペンを使ったPCの増加には、ペンの搭載に必要なパーツが十分に供給される必要がある。マイクロソフトがペン対応PCを本格的に仕掛け始めた2002年からずっと、最大の問題は「ペン用パーツのコスト」だった。
ディスプレイをペン入力対応にするには、ペンを読み取るセンサーを組み込む必要がある。もっとも一般的なものは、ディスプレイ下部にメッシュ状のセンサー機構を組み込み、ペンがどの位置にあるかを検知するものだ。この際、センサー機構とペンの間に発生する電磁誘導を使うのが、いわゆる「電磁誘導式ペン」と呼ばれるものだ。電磁誘導方式にも複数の仕組みがあるのだが、日本のユーザーにもっとも知名度が高いのが、ワコムのペン技術だろう。筆圧検知の精度が高く、絵を描くのに向いていることから、PCに接続して使う「ペンタブレット」向けとして広く利用されている。ワコムの技術は歴史が古く、10年前の時点で、タブレットPCの8割に使われていた、というほどだった。精度の良さに加え、ペンに電池が不要である点も大きかった。
一方、ワコムのペン技術以外を使うところもあった。マイクロソフトはそのうちの1社だ。ワコムが使っていた技術は、センサーを含めたディスプレイ周りが厚くなること、他の技術に比べコストが高いことなどから、他の技術を支持する声もあった。マイクロソフトは、Surfaceシリーズに一貫してN-Trig社のペン技術を採用し、2015年5月、同社を買収している。Surface Pro 4でも、N-Trigの技術をベースに改良したものが採用されている。
もちろん、ワコムもこうした傾向を座視しているわけではない。「タッチ」に使われる静電容量式センサーを活用するペンである「アクティブES」と呼ばれる技術を導入している。静電容量式タッチパネルでのペンというと、指の代わりに導電ゴムを使ったスタイラスペンを思い浮かべる。しかし、アクティブES方式はそれらとは異なるもので、単純なスタイラスペンと違い、1024段階での筆圧検知もできるし、精度も高い。ただし”“ペンに電源が必要になる”、“他方式と同じ1024段階検知でも強さの幅が狭くなる”など、マイナス面もある。だが、ペン専用のセンサーが不要になり、PCメーカーとしては、コストアップせずにペン技術を盛り込めるという、大きなメリットもある。東芝やデル、レノボなどが製品に採用しており、2016年には、さらに採用機器が増えるだろう。
ペン搭載のコストが下がってきた結果、今後、PCにはタッチパネルとペンを搭載するものが増えるはずだ。その結果、ペンを生かすアプリが増えてくれば、ペン搭載PCにとっては、良いスパイラルになる。
●Vol.38-1は「ゲットナビ」2月号(12月24日発売)に掲載予定です。
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