昨年は「PlayStation VR」の発売によりVR(Virtual Reality:仮想現実)という言葉が一気にメジャー化し、“VR元年”とも呼ばれました。また、社会現象にもなった「ポケモンGO」では、現実世界とバーチャルをリンクさせるAR(Augmented Reality:拡張現実)がより一般化。技術の進歩により、現実とバーチャルの境界線がますます低くなっているなか、今度はMR(Mixed Reality:複合現実)という新しい言葉が誕生しました。今回はマイクロソフトが開発した、ホログラムによるMRを体感できるヘッドマウントディスプレイ「HoloLens(ホロレンズ)」を体験したのでレポートしていきます。
MR(Mixed Reality:複合現実)って何?
まずは、MRとは何かを説明しましょう。「ポケモンGO」の捕獲画面のように、カメラで撮影した現実の映像にコンピューターグラフィックスを重ねて「拡張現実」を作り出す技術がAR(Augmented Reality)と呼ばれています。PlayStation VRのように、目の周辺をゴーグルなどで完全に覆った状態で立体感のある映像が楽しめる「仮想現実」です。
MRとは、ARとVRの良いところ取りしたもので、現実の空間を3D(三次元)的に認識して、そこに存在するモノに合わせてCGを配置して映像化したものと考えて下さい。
HoloLensってどんなデバイス?
「HoloLens」は、マイクロソフトが開発した複合現実を体験できるヘッドマウントディスプレイです。大きな特徴は、ほかのヘッドマウントディスプレイのようにパソコンやゲーム機などに接続することなく、HoloLens単体で動作する点。バッテリーも搭載しているので、完全にワイヤレスで使用できます。
つまり、HoloLensにはCPUやメモリが搭載されており、Windows 10(Holographic)がHoloLens本体のみで動作しています。
Windows 10が動作しているということは、既存のWindowsアプリも動作しますし、Windows Holographic専用のアプリをWindowsストアからインストールして使用することもできます。ちなみに、このHoloLensですが、現在は企業もしくは開発者向けにしか販売されておらず、一般の方は入手できません。もっとも、価格が数十万するとのことで、買いたくてもそう簡単には購入できませんが……。
実際にHoloLensを体験してみる!
では実際にHoloLensを体験してみたいと思います。HoloLensの操作方法は、装着した状態で自分の手や指を視界内に入れて、ジェスチャーを行います。
具体的には、立てた指を下方向に折りたたむことによって、スマホでいうところのタップ操作が行えます。また、手のひらを上に向けて指を開くようにすると、パソコンでいうところの右クリックの操作、同様に指を「つまむ」動作でドラッグの操作が行えます。
HoloLensは、カメラと空間を認識するセンサーによって、視界にあるものを立体的にとらえます。ゴーグルに搭載するカメラとセンサーで指の動きを認識しているため、指が視界内に入るようにしないと操作できず、慣れないあいだは操作に苦戦しました。
ARと違い、空間を認識してCGを表示するので、たとえば壁に貼りついているようにグラフィックを表示したり、テーブルの上にモノが載っているように表示したりすることができます。もちろん、移動して見る場所を変えるとそれに合わせてグラフィックも変化しますので、グラフィックを横からみたり、回り込んでみたりすることもできます。
様々な可能性を秘めたMR技術
さて、今回体験したHoloLensですが、感想としてはVRのような没入感はないものの、現実世界に投影されたCGがあたかもそこにあるかのような感覚は、ARの進化版のように感じました。実際にどういうシチュエーションで活用されるのかについて聞いてみたところ、ゲームや動画などのエンターテインメントはもちろんですが、医療や建築の現場、デザインの世界などでも活用することが期待されているそうです。
このMR技術を応用したポケモンGOが登場したら、物陰に隠れたポケモンや机の上を飛び跳ねるポケモンなど、いままで以上にリアルな表現が可能になりそうな気がします。わたしたちの想像を超えた利用方法が考え出される可能性も十分に秘めているMR。日常的に利用できるようになるのが楽しみな最新技術です。