「週刊GetNavi」Vol.38-3
数が力のPCメーカーの中で、日本企業はどのような位置づけになっているのだろうか?
まず、世界についていけている企業は2社、NECと東芝だけ、といっていい。ただし、両社のアプローチは大きく異なる。
NECはレノボとPC事業を統合し、「NECレノボ・ジャパン」としてビジネスを行っている。NECのブランドと開発は維持しつつ、一部でレノボの調達力を活用。独自のやり方を貫いている。一方、世界的に見ればNECレノボ・ジャパンは「レノボ」そのものであり、NECブランドのPCはあまり海外に出て行っていない。超軽量の「LAVIE Hybrid ZERO」シリーズなど、高く評価を受けた製品もあるが、価格が高く、日本ほどモビリティに対する要求が盛り上がっていないことなどを理由に、国内展開にとどまっている。だから、「NECとして世界で戦えている」というのは正確な表現ではない。
東芝は、古くから欧米でPCビジネスを展開しており、調査会社IDCによる2015年第2四半期のPC出荷台数でも、アメリカ市場ではシェア4位である。だが、その数は4位のレノボの半分以下と振るわず、低迷傾向にある。世界的に見ればシェアはNECよりもずっと低い。
富士通も海外でPCビジネスを展開しているが、そのシェアは東芝よりさらに低い。VAIOは、ソニー時代には世界で広くPCを販売していたが、ソニーから分社される段階でビジネスを国内に縮小。事業規模は従来の数分の1になっており、2015年後半にようやく、北米など一部市場へ再び少数の製品を提供するにとどまっている。
それでも、東芝と富士通は、日本国内に大きなシェアを持つPCメーカーだ。その市場の大半は、本誌読者のような「個人」ではなく、企業向けの一括導入を基本とした市場にある。企業向けには企業向けの厳しさがあるものの、個人向けPCと違い、価格の乱高下に悩まされることはない。在庫の調整も比較的容易だ。
製造販売の面で見れば、PCが「数のビジネス」であるのは、日本市場であっても海外市場であっても変わりない。日本向けと海外向けで同じパーツを使い、圧倒的な数の力を使えるのが理想である。
近年、日本でもASUSやApple製品の人気が高まっているが、これらの企業のPCに競争力があるのは、世界中で販売しているために他ならない。また、ここ数年の円安基調もあり、海外からのパーツ調達コストが割高になっていることも、海外企業との競争力の面ではマイナスだ。
数字の上では、富士通・東芝・VAIOの事業が統合すると、PCの世界シェアではAppleに並ぶ4位となる。そうなれば、「数の論理」が支配するPC事業での採算性が改善する……。これが、3社統合を進める人々の論理構造である。
だが、この意見は正しいとは限らない。3社が統合する際に、PCのシェアが単純な足し算で終わるとは思えない。経営効率を上げるには、かぶる部分や余計な部分を切り捨てる必要が出てくる。その時、シェアまで縮む可能性は否定できない。
3社統合はどうなる可能性があるのか?その辺は次回Vol.38-4にて。
「Vol.38-4」は1/14(木)ごろ更新予定です。
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