「週刊GetNavi」Vol.53-1
肝心のJリーグ開幕戦に起きた配信トラブル
今年から、Jリーグは大きな変化を向かえた。2007年以来、全試合中継のパートナーであったスカパー! との関係を解消し、新たに、海外のネット配信事業者のDAZNと10年の契約を結んだのだ。契約総額は、最低2100億円。スカパー! 時代には1年で約50億円といわれていたので、4倍程度の金額で契約したことになる。
DAZNは昨年9月に日本でサービスを開始し、JリーグだけでなくVリーグなどの配信権も取得、F1や欧州サッカーなど様々なスポーツを配信するサービスとして全面展開することが特徴だ。日本における最大の目玉がJリーグであり、2月の開幕前には、NTTドコモと提携し、DAZN for docomoもスタートした。DAZNは月額1890円と、比較的高い料金設定だが、for docomoは、ドコモユーザー限定ながら月額1058円まで安くなるとあって注目が集まった。
だが、結果からいえば、DAZNは日本の消費者の期待に応えられなかった。開幕日の2月25日・翌26日と配信トラブルが起き、障害がもっとも深刻だった時間帯には、視聴を試みた人のうち、25日には17%が、26日には25%が視聴できなかった(DAZN調べ)という。3月1日には、JリーグとDAZNが共同会見を開き、不具合を謝罪する事態となった。トラブルはDAZN側に起因するものと判明しており、DAZNは謝罪として、2月25日・26日の両日、サービスへのアクセスを試みたユーザーには、2週間分の無料アクセスを提供することになった(for docomoユーザーはdポイント500点分)。
トラブルの原因はユーザー集中ではない
ネット配信は、人が集まるとトラブルが起きやすい。そのためDAZNについても、「急に人を集めたために、インフラが追いつかなかったのではないか」と考える人が多かったようだ。
だが会見にて、DAZNのジェームズ・ラシュトンCEOは「問題は帯域ではない。トラブルの原因は別のところにあり、すでに解決済み」と説明した。
DAZNで起きたトラブルは、試合終了後、速やかに見逃し配信やダイジェスト配信を行うための自動作業システムに、未知の不具合があったこと、とされている。現在はその部分を多重化したうえで手作業も加えることで、同じトラブルが絶対発生しないようにしている。
そのため、翌週の3月4日・5日は、大きなトラブルはなく、配信が行われたようである。
だが、これだけでDAZNが「無罪放免」というわけではない。利用者のなかには、「従来の放送に比べて著しく画質が悪い」「配信までのタイムラグが長い」などの不満が出ている。これは昨年のサービススタート時から幾度となく出ているものだ。
DAZN側は「ユーザーの不満にはできる限り応える」としている。現状、利用者の平均配信ビットレート5Mbpsで、日本の利用者の62 %が1080pで視聴できている、という。ユーザーからの不満とは少々ズレのある答えにも見える。
ネット配信はなぜ難しいのか? 他社はどう対策しているのか? そして、DAZNは今後信頼を取り戻せるのか? そのあたりは次回のVol.53-2以降で解説する。
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