「週刊GetNavi」Vol.58-3
PCだけでなくスマホのディスプレイでも「脱16:9」が広がっている。ここでも21:9に近いディスプレイパネルが中心であり、サムスンが「Galaxy S8」「Galaxy Note8」で採用し、Appleも次期iPhoneのフラッグシップモデルでは採用する……と言われている(注:記事はAppleの発表前である8月末に執筆されている)。
とはいえ、ウルトラワイド化による情報量アップが重要であったPCとは異なり、スマホの場合には「持ちやすさ」が軸になる。ハイエンドモデルは世界的な傾向としては、ディスプレイは大型の方が支持されている。一方で大型になると片手で持ちづらくなり、使い勝手を損なう。縦横比を変えるのは、ディスプレイが縦に長くなると、横幅は多少狭くできるため、大型のディスプレイを採用しても片手での持ちやすさを維持しやすいからである。
ただし、スマホにおいて「脱16:9」を狙った端末は以前より存在した。特にハイエンドスマホでは、特別なディスプレイを使っていることがそのまま差別化要因になるため、採用しやすかったからだ。とはいえ、その流れはいまほど大きなものではなく、一部の例外に留まっていた。
理由は、ディスプレイの「狭額縁化」が進行したからである。ディスプレイパネルの周囲の通称「額縁」と呼ばれる部分は、配線やバックライトの配置のために必要な部分である。ディスプレイパネルの縦横比をいくら変えても、額縁を一定以上に狭くできないと結局ボディは小さくならないので、持ちやすさにはあまり貢献しない。だが、技術の進化とともに額縁部を狭くすることが可能になり、本体サイズの削減につながる。ディスプレイの縦横比の変化も、ここでようやく本当に大きな価値につながってくる。例えば「Galaxy S8+」は、1年前のモデルである「Galaxy S7 Edge」とほぼ同じ横幅(約73mm)でありながら、ディスプレイサイズが5.5型から6.2型に変わり、面積が広くなっている。
一方で、こうした変化はディスプレイパネルの製造の状況に左右される。Galaxyシリーズのハイエンドが縦長になったのは、同社が使っているサムスンディスプレイ製の有機ELディスプレイパネルの量産の結果であり、Appleの新モデルもサムスン製のパネルを採用する、と見られている。
ごく一部の機種に採用されているうちは問題とならないが、世界中でヒットすることが見込まれる製品に採用されるとなると話は別だ。年間で数千万枚単位での安定的な生産が求められる。逆に言えば、それが実現できると、次は「ハイエンド以外にもその波が波及する」ことにつながる。生産設備やパネルを流用していくからだ。2017年のうちは、スマホ全体で見れば、まだ16:9が主流だが、2018~2019年には、低価格帯まで広がっていく可能性は高い。
では、ディスプレイ全体で16:9以外のものが広がることは、機器の使い勝手にどういう変化をもたらすのだろう? 次回のVol.58-4ではそこを解説する。
●Vol.58-4は9月14日(木)公開予定です。
週刊GetNavi、バックナンバーはこちら!