ひと時のブームも落ち着いた感のある3Dプリンター。家庭でも購入できる低価格な製品も多く出回っている。だがせっかく3Dプリンターをしても、出力されるものは白や青など単色の造形物となってしまう。また造形物に後から筆を入れて色を塗ることもできないことはないが、塗料を選ぶ上に細かい部分を塗るのも面倒、そして塗った塗料も剥げやすい。
複数の色のフィラメントを途中で交換することでカラー出力できる3Dプリンターもあるが、色の組み合わせはせいぜい数色。出来上がったものを「カラー」とは呼びにくい。
自宅で手軽に小型造形物を出力できる3Dプリンターだけに、市販品のフィギュアのようにきちんと塗り分けできるカラー出力をしたいのはだれもが思うところだろう。そんな夢を手軽に実現できるカラーの3DプリンターをXYZprintingが発表した。
「da Vinci Color」は、その名前の通りカラー出力が可能な3Dプリンターだ。プリンターで出力する一層一層ごとにインクジェットカラープリンターのように着色することで、1600万色のフルカラーの出力を可能にしている。da Vinci Colorで利用できるフィラメントは新開発されたCPLA(Color PLA)樹脂で、カラーインクの定着がよいとのこと。カラー出力するためにはこのCPLAのみが利用できる。
da Vinci Colorは2017年9月にベルリンで開催されたIFA2017で発表された。XYZprintingのブースにはさっそく実機が展示され、フルカラー出力のデモも行われていた。まず気になるのはカラー印刷にかかる時間だが、プリンターで1層を出力し、直後にカラープリンティングがされるので極端に長い時間がかかるわけではない、とのこと。具体的な印刷時間は出力サイズにも左右されるが、一般的なインクジェットのカラープリンターの印刷速度を考えれば、一層の印刷時間は数秒程度だろうか。
インクはCYMKの4色なので、細かい色の表現も十分行える。一方プリントはFFF(熱溶解積層)方式であり、1つの層の厚みは最小で0.1mmほど。層と層の間があるため全体的な印刷具合は若干淡い色合いに仕上がる。塗装を施したくっきりした色と言うよりも、天然のものに近いというイメージだろうか。出力サンプルをいくつか見ることが出来たが、恐竜の人形はなかなかいい感じで色付けされている。一方ロケットのように本来金属の光沢色が必要なものは、昔の木製のおもちゃに塗装したような感じに仕上がる。とはいえこれはこれで悪くはないだろう。
CPLA樹脂への直接印刷は耐水性も高く、水がかかったくらいでは色落ちすることも無い。出力例として置かれていたフェイスマスクのようなものは、白いフィラメントで出力した後ポスターカラーで着色して使われる例があるという。しかし汗などで簡単に色が溶け出してしまう。しかしda Vinci Colorで出力すれば、5分以上水につけていても色落ちすることは無い。
気になる価格はda Vinci Color本体が3500ドル、カラーインクは各色65ドル、そしてCPLAフィラメントは35ドル。インクを合わせて買っても50万円以下でフルカラーの3Dプリンターが手に入るのである。
同じIFA2017でソニーモバイルが発表したスマートフォン「Xperia XZ1」「Xperia XZ1 Compact」は、本体のカメラで3Dスキャンができる「3Dクリエーター」機能を搭載している。スキャンしたデータはゲームのアバターに利用したり、出力サービスを使って3Dモデル化することも可能だ。もしda Vinci Colorを持っていれば、スマートフォンでスキャンしたものをそのまま手元でフルカラー出力できるわけだ。
スマートフォンのカメラが3Dスキャナになる時代がやってきたことで、フルカラー出力できる3Dプリンターはがぜん注目を集める存在になるだろう。インクジェットカラープリンターの歴史を見れば明らかなように、フルカラー3Dプリンターもこれから各社の技術開発が進み、より自然な色で出力できる製品も登場するだろう。3Dプリンターはフルカラー対応になったことで「一家に一台の常備品」になる時代がやってくるかもしれない。