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2017/10/30 13:00

【西田宗千佳連載】シャープは「AIレコメンド」を軸にテレビを変える

「週刊GetNavi」Vol.60-1

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↑シャープ「AQUOS LC-55US5」

 

「選ぶ」ことの負担を軽減するためのレコメンド

シャープは11月11日より発売する「AQUOS 4K」シリーズにて、ネット連携を拡充する。その中核が、「COCORO VISION」という機能だ。「COCORO VISION」は、簡単にいえばテレビ番組の「レコメンド」機能。家族が見たテレビ番組、録画したテレビ番組、視聴したネット動画などを学習し、視聴時間帯などに応じて、好みの番組を教えてくれるものだ。シャープは2018年度までに、同社製4Kテレビの8割に「COCORO VISION」を搭載するとしている。

 

テレビにおいて「レコメンド」は大きなテーマである。なぜなら、この10年でテレビの見方は大きく変わっており、そこに対応するため、新しいテクノロジーが必要とされているからだ。

 

40年前、地上波(しかもアナログ)しかなかった頃は、番組の選択肢もそんなになかった。各家庭では必ず新聞をとっており、ラジオ・テレビ欄(ラテ欄)を見れば、その日に見たい番組がわかった。だが、ビデオデッキが登場して「録画」するようになってから、人々は今日より先の番組表を必要とし始めた。これに合わせて需要が伸びたのが「テレビ情報誌」だ。その後、多チャンネル化とレコーダーのデジタル化に伴い、電子番組表(EPG)が登場し、録画はさらに容易になった。新聞をとる人も減り、テレビの視聴行動はラテ欄からは産まれなくなっている。

 

一方で、人々が見る映像の出口は増え続けている。放送は健在で、もっとも大きなソースであることに変わりはないが、ネット配信やYouTubeもある。ゲームや音楽まで含めることもできる。テレビは「放送だけを見るもの」ではなく、様々な映像の出口となっている。

 

だが、自分が意思をもって「見たいもの」を選び続けるのは難しい。「選ぶ」という行為はそれなりに気を使うもので、リラックスしてテレビを見る、という行為には合わない部分もある。

 

そこで出てくるのが「レコメンド」。レコメンドによって「これからあなたが見たいであろうもの」を、多数の選択肢から示すことで、「選ぶ」という行為の負荷を軽減することが目的だ。

 

ただし問題は、「機械からの指示が適切とは限らない」ことである。過去のレコメンド機能に完璧なものはなかったし、「COCORO VISION」のものも、まだ完璧ではない。とはいえ、これからのテレビにレコメンドが必要であることは疑いがなく、いかに使いやすいレコメンド機能を搭載するか、その改善を進めやすい仕組みを導入するかが、テレビの開発において大きな価値になっていく。シャープは、レコメンドの精度を上げるため、動画配信やゲーム配信なども自社で「COCOROブランド」のサービスとして用意し、連携させていく戦略だ。

 

シャープは、自社家電で使うネットサービスを「COCORO+」ブランドに統一し、利用者の嗜好や行動を集約。同社の家電を持つ人がより高い価値を得られるようにしていく。現状はまだ価値が見えづらいが、より「人間くさい」「親しみを持てる」AIを作り、それを差別化要因にしたい、と考えているわけだ。

 

では、シャープ以外のメーカーは「テレビとレコメンド」の関係をどう考えているのか? そのあたりは次回のVol.60-2以降で解説する。

 

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