「週刊GetNavi」Vol.60-3
テレビの番組情報を見るものとして、我々はまず「電子番組表(EPG)」を使っている。テレビの情報化とデジタル化は、まずEPGからスタートしたといっていい。このEPG、特に日本の場合、ほとんど1社から提供されていることはご存知だろうか。現在使われているEPGは、ほとんどが「Gガイド」である。これはアメリカのTiVo(昨年、合併により「Rovi」から社名を変更。そのさらに前は「マクロビジョン」といった)が提供しているもので、EPGに関する特許を同社が多数保持していることなどから参入障壁があった。そのうえ、同社がEPGに関する技術を積極的に開発し、各社が利用しやすい環境を整えていったこともあり、結局同社がデファクトスタンダードになったという経緯がある。
そしてTiVoは、EPGを使った高度なレコメンデーションに力を入れている企業でもある。テレビ局から提供される番組情報に加え、出演者や製作者の情報を加味し、シンプルな番組情報だけでは不足している「レコメンドに必要な属性」を追加するといった、レコメンドに必要なサービスを提供するソリューションビジネスも展開している。各社のテレビのなかにも、TiVoから提供を受けた情報を使ったものが少なくない。
一方で、TiVoからの情報だけでは差別化ができないのも事実。そこで、各社が情報の扱い方や見せ方、切り口を変えることで、独自の持ち味や機能を実現している。
例えば東芝のREGZAに搭載されている全録機能である「タイムシフトマシン」は、EPGとしてはシンプルな情報を使っているが、ジャンル情報の使い方を工夫したり、機器の操作の履歴を記録した「操作ログ」を生かしたりすることで、「人気のある番組」や「利用者が見たいであろう番組」を発見しやすくしている。
シャープも、昔からTiVoのEPGを使っており、今回、4Kテレビを刷新する際にも、やはりTiVoをパートナーに選んでいる。ただし、レコメンデーションには、TiVoのソリューションをそのまま使うのではなく、自社でUIや機能を変えて独自色を強めている。そこでは、やはり「ユーザーがどのようにテレビを視聴しているか」を示す操作ログを重視している。テレビが毎日使われていくなかで蓄積される、「何時にテレビをつけたか」「どのチャンネルを多く見ているか」といった視聴習慣の情報を生かすことで、番組情報以外の「情報量」を増やしていき、レコメンデーションの精度をあげようというアプローチをとっているのが同社の特徴だ。
家電メーカーは、機器の中で得られる情報を最大限に使う。だが、その情報はプライバシーや利用許諾の問題もあり、外の企業には簡単には渡せない。だからこそ、自社内で「製品の差別化」に使おうとしているのだ。
では特にシャープは、どのような観点で操作ログを使おうとしているのだろうか? それはなにも、テレビ番組のレコメンデーションだけで終わるものではない。その構想については、次回のVol.60-4で解説したい。
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