「週刊GetNavi」Vol.62-1
省電力と常時接続でPCの有り方が変わる
Windowsノートの動作時間が20時間を超える時代がついにやってきた。スマホに勝るとも劣らないバッテリー動作時間で、スマホと同じように「すぐネットにつながって使える」、ある意味夢のようなノートPCが2018年に登場する。
12月5日、クアルコムは米・ハワイにて発表会を開催し、かねてからマイクロソフトと共同開発してきた「Arm版Windows 10」を使ったPCの実機を発表した。製品は2018年に、まず、HPとASUSから発売になる。レノボも採用製品の発売を予定しており、1月に米ラスベガスで開催されるテクノロジーイベント「CES」で詳細を発表する、としている。
ASUSが発表した「NovaGo」、HPが発表した「ENVY x2」は、両者ともプロセッサーにクアルコムの「Snapdragon 835」を使っている。要はハイエンドスマホやタブレットとほぼ同じ構成、ということだ。これでNovaGoは22時間、ENVY x2は20時間のバッテリー動作(ともにビデオ再生の場合)を実現。バッテリー動作時間は従来機から一気に倍増……とはいわないが、3割から4割伸びている。
しかも、Snapdragon 835はLTEでの通信を常に使うことを前提としている。現状のPCは、Wi-Fiを使って必要なときだけ接続するのが主流だ。SIMカードが刺さり、直接通信ができるモデルも出てきてはいるが、スマホやタブレットのように「スリープ中もメールやメッセージの受信を行える」ものは少ない。だが、SnapdragonでArm版Windowsを使うPCは、スマホと同じように「常時接続」が基本になってくる。
ご存じの通り、一般的なPCはインテルやAMDの「x86系CPU」を使っており、OSもアプリもそれを前提に作られている。だが、Arm版Windows 10は、Snapdragonをはじめとした「Armコアを使ったプロセッサー」向けのもの。ここで問題になるのが互換性だ。しかし、そこにも配慮がある。Arm版Windowsには「CPUの違いを吸収する機能」が搭載されており、x86版Windows向けに作られたアプリやドライバーソフトがそのまま動作するのだ。
だが、すべてに問題がないか、というとそうではない。
まず、動作速度。CPUの違いを吸収するため、どうしても動作速度にはロスが出る。また、Snapdragon 835はインテルやAMDのトップCPUほど処理速度に注力しておらず、仮にトップスピードが出ても、ハイエンドPCほど速くはない。現状は「Atomを使った安価なPCよりは速いが、Core m3を使ったPCよりは遅い」くらいになる。
次にサイズ。消費電力が低くなるとはいえ、動作時間を延ばすにはバッテリー容量が重要だ。だから、いまのPCよりも劇的に小さくなるわけではない。
そんな制約がありつつも、Arm版WindowsはノートPCの常識を激変させる存在であり、2018年にPCを買うならば、ぜひ念頭に置いて欲しい存在であるのは間違いない。
では、なぜこういう製品が生まれたのか? 今後のノートPCはどうなるのか? そのあたりは次回のVol.62-2以降で解説する。
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