PC業界にとっての2017年は人気シリーズの後継モデルや海外メーカー勢の台頭が印象に残った年でした。市場を俯瞰すると国内PC大手メーカーの買収、合併などの話題が相次ぎ大きな変革の前ぶりを予感させる年でもありましたが、個人的にはモデルに注視すると、大きなトピックを感じられた年でもありました。そんな2017年に現れた注目すべきモデルを振り返っていきたいと思います。
復活した7列キーボードは相変わらずGOODだった
ThinkPadの発売25周年を記念してリリースされたLenovo「ThinkPad 25」。根強いファンが多いThinkPadですが、IBM時台に絶大な支持を受けた仕様を再現しているのが特徴です。
特に、復活した7列キーボードはマニアが涙を流しながら歓喜する仕様となっています(現行モデルはアイソレーションの6列仕様)。かく言う筆者も、この7列キーボードの虜になり、ThinkPadを使用していた一人。
そんな7列のキーボードを搭載したThinkPad 25は、ThinkPad T460をベースにしており、現代のテクノロジーと往年のノスタルジーが混在した異色のThinkPadとなっております。筆者としては、既に6列キーボードに順応しているのでマストアイテムにはなりませんが、ThinkPad 25のキーボードをタイピングした瞬間に若かりし頃、なけなしのお金でThinkPadを購入したことを思い出しました。
あと一歩で神機になれたかもしれない超小型PC
次にご紹介するのは、電子デバイスの聖地とも言うべき中国の深圳(シンセン)市にあるGPD社が発売した超小型パソコン「GPD Pocket」です。
電子デバイスの聖地とも言うべき中国の深圳(シンセン)市にあるGPD社が発売した超小型パソコンです。UMPC(Ultra Mobil Parsonal Computer)と呼ばれるこの分野は、小型軽量を極めたモバイルパソコンとして注目されています。過去には、東芝のLibrettoやネットブックのブームなどもありましたが、Windows 10世代になってCPUにAtomを採用し、実用に耐える仕様として注目を浴びました。
重量は約480gで、10インチクラスのタブレットにも匹敵する軽さです。外出先で、メールやSNSなどの軽作業をするのに適しているサイズ感で、普段から慣れ親しんでいるWindowsアプリが動作するのが強みの1つ。
ただ1つだけ残念なのがSIMスロット非搭載な点。つまり、Wi-Fiでルーターやスマホなどに接続しないと通信ができません。このモデルの機動力を活かすには、やはりSIMスロットを搭載して、単体で通信が可能だったら神機となりえたかもしれません。
小型PCの分野においては、スマホにも採用されている「ARM」プラットホームで動作するWindowsの実用化が見えてきたため、2018年にはSIMスロット搭載のUMPCが多数リリースされることを願ってやみません。
お値段超弩級のセレブなiMac
年末商戦スベリ込みで発売されたのが「iMac Pro」。驚くべくはその価格がにわかに大きな話題を呼びました。
CPUは8コアのインテル「Xeon W」を採用し、32GBメモリや「Radeon Pro Vega」など、ハイスペックてんこ盛りで文字通り「Pro」仕様。最低構成である標準モデルが約56万円、128GBメモリや2TBのSSDを搭載したハイスペックモデルがなんと100万円オーバー。とても庶民には購入できないセレブなモデルです。
そもそもiMacは、ボンダイブルーが記憶に残っている初代発売当時はもっと気軽に購入できるカジュアルなモデルだったはず。それが、今回「Pro」を冠したことで、スペックもお値段もプロ仕様に。それもそのはずで、主に映像や画像など、プロのクリエイターを意識したモデルであり、「Pro」の名は伊達じゃないってことですね。
鈍く光るスペースグレイのiMac Pro。非常にカッコいいのですが、デスクトップパソコンなのでオフィス内でしかドヤれないと残念がっている人もいるとかいないとか。
ヒザ上派待望のSurfaceが登場
2017年のSurfaceシリーズは、新型モデルラッシュでした。2-in-1型の「Surface Pro」や「Surface Book 2」は、それぞれ人気モデルの後継機種として、既存ユーザーの買い替え候補となりました。
Surfaceと言えば、タブレットにもなる2-in-1パソコンとして、筐体やキーボードの完成度が高く、スペックも高いため、メインPCとして多くの支持を集めてきました。本体背面に設置されたキックスタンドで自分好みの角度でディスプレイを立てられるのも特徴の1つ。しかし、このキックスタンドですが、ノートPCをヒザの上において使用する人にとっては少々扱いづらいのが難点でした。
そこで、満を持して登場したのがクラムシェル型の「Surface Laptop」です。一般的なノートパソコンと同様にディスプレイを開閉する形状をしているので、ヒザ上での作業がしやすくなりました。クラムシェル型になっても、3:2のアスペクト比を採用した高解像度ディスプレイや、ペン入力対応などSurface本来の持ち味は踏襲しているので、ヒザ上派のSurfaceファンは歓喜する新型モデルとなっています。
筆者的には、SIMスロットを搭載したLTEモデルがラインナップされれば、日常の相棒として購入を検討したいところです。
これぞモバイルPCの鏡と言えるSIMスロ搭載機
最後の一台は、本モデルで2世代目となるVAIOのS11。11インチの画面を採用して、コンパクトサイズを実現しつつ900gを切る軽さで抜群の機動力を発揮するモデル。
特筆すべきは、SIMスロットを搭載したLTEモデルがラインナップされている点です。LTEモデルのラインナップは、初代モデルからのこだわりで、2代目も継承されています。さらに、専用SIMカードもバンドルされており、パソコン単体で通信が可能なモバイルPCの鏡と言えるモデルです。
筆者的には、本体重量が1kg前後のモバイルPCにはSIMスロットが必須だと常日頃から考えており、それに見事に応えてくれているシリーズとして好感度が高いです。
本モデルに専用SIMカードや格安SIMカードを差し込んで持ち歩けば、重量増の原因となるモバイルルーターを持ち歩かずに済みますし、Wi-Fiと違って、起動して数秒でネットにつながる軽快さは他に代えがたい恩恵となります。以外にも、SIMスロットを搭載したパソコンって選択肢が少ないんですよね。今後もこの仕様を踏襲していって欲しいと思う次第です。
2018年のパソコン界隈はどうなる?
2018年は前述の通り、ARMプラットホームを搭載したWindowsパソコンが続々とリリースされる見込みです。ARMプラットホームはスマホに搭載されているだけあって、コンパクトサイズや低消費電力の他に、SIMスロットと相性が良いという特徴があります。つまり、現行のモバイルPCよりも、軽くて小さくて長時間駆動が可能になったLTE対応パソコンのラインナップが期待できるわけです。筆者が最も欲しいと思っている仕様だけに、今から2018年が楽しみでしかたありません。