「週刊GetNavi」Vol.66-4
OPPOがハイエンドAV事業から撤退することに決めた理由は、同社の主戦場であるアメリカにおいて、「ディスクのビジネス」が急速に縮小していることが大きい。
筆者は2か月に一度はアメリカに取材に行くが、近年、量販店の「映像・音楽ソフト売り場」の縮小ぶりは目を覆わんばかりだった。アメリカの家電量販店は、日本の家電量販店の数倍の面積がある。10年前には、そのなかでかなりの領域をDVD売り場が占めていた。数千種類のDVDが棚に並んでいるのは壮観ですらあり、その頃には筆者も、日本では発売されていないDVDやBlu-rayを買い込んだものだ。
だが、いまや量販店において、ソフト売り場は主役ではない。面積では携帯電話やその周辺機器のほうがずっと広くなっている。
アメリカの映像関連業界団体であるDEG(Digital Entertainmet Group)の調べでは、2017年の映像ディスクメディアの売り上げは約47億ドル。大きな金額に見えるが、同時期のデジタル配信の累計は約136億ドルとずっと大きく、ディスク販売は年率で14%も低下している。2016年も9.55%の減少であり、減少率は拡大中だ。アメリカ市場においては、デジタルがディスクの3倍の売上になっていて、しかも、デジタルは年率15%で成長している。
ディスクを主軸にしたビジネスにもはや成長はなく、「どのレベルの数を維持しうるか」という世界になっている。これが海外の趨勢なのだ。
前回までの連載で述べたように、OPPOはハイエンドという狭い市場をターゲットにしつつも、そこで「数」を出すことで価値を担保してきた。数の担保が難しくなっていくと、彼らのビジネスモデルは崩壊してしまう。だから、業績が本格的に悪くなる前に事業からの撤退を決めたのである。
大手家電メーカーにとっても、ディスク関連のビジネスは苦しくなっていくだろう。だが、ここが重要なのだが、ディスクメディアには価値がないわけではない。Ultra HD Blu-rayもあり、品質の面でも、「所有できる」という面でも、ディスクメディアには固有の価値がある。なくなると、AVファンだけでなく映画業界も困ってしまう。
そのため、ディスク関連ビジネスは「しぼむが、ある程度の少ない量は維持される」形になる、と予想される。問題はその量がどのくらいになるのか、そして、日本ではどうなるのか、ということだろう。
正確な数字を予測するのはなかなか難しい。しかし、日本においては、そもそもディスクメディアを購入するのは、多くの場合、「こだわるファン」だけ……という状況がある。だから、アメリカほどドラスティックに落ちていくことはないのではないか、と筆者は思っている。売れ行きは下がるが、いまの半分という世界にはならないだろう。
というより、そもそも「日本でのディスクのビジネスは、アメリカほど伸びなかった」のだ。ディスクビジネスがもっとも成功したアメリカで、そのビジネスが急速にしぼんでいるからこそ、OPPOは撤退を決めたのである。
●次回Vol.67-1は「ゲットナビ」7月号(5月24日発売)に掲載予定です。
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