「週刊GetNavi」Vol.71-2
9月21日、菅 義偉官房長官は定例会見にて、 NTTドコモ・KDDI・ソフトバンクの携帯大手3社について、「すべての業種での利益率は平均6%なのに、3社は20%。7千億円前後の利益を上げているのはおかしい」と批判した。これは、8月から続く携帯電話料金値下げ議論にも関連している。
「携帯電話会社が儲けすぎだ」と政府側が言う背景には、携帯電話の電波は本来国民の共有財産であるという事実がある。それを使っている以上、国民に利益が還元されなければいけない、というわけだ。携帯電話向けの電波を利用している3社の間に競争がなく、結果として国民への利益還元が薄くなっており、儲けすぎだ……といったロジックである。
これを補強する材料として9月19日に総務省より出されているのが、「電気通信サービスに係る内外価格差調査」だ。毎年とりまとめられているもので、同じような通信プランにおいて、他国との価格差がどうなっているかを示すための調査である。
この調査において、諸外国と日本を比較した場合、確かに日本の携帯電話料金は高くなる。例えば、データ容量が月に2GB・5GBまでといった安価なプランでは、それぞれ平均2600円台・3700円台。パリやデュッセルドルフといった都市に比べると高いが、ソウルよりは若干安く、世界一高いニューヨークに比べると半分から3分の2の価格になっている。
だが、20GBの大容量プランになると、平均支払い価格が7000円を超え、ニューヨークを抜いて世界一高くなる。実は、「4割値引きできる」と言われているのは、この大容量プランについての価格である。
MNOもMVNOも「低価格プラン」を用意しているが、最新スマホとセットで使うとなると、端末の割引を考えて大容量プランを選ぶ比率が高くなる。携帯電話端末料金を割り引く原資を確保したいという事業者側の事情もあるため、大容量プランは「データ容量で換算すると割安だが、絶対料金としては高い」ものになりがちだ。初回で説明したように、携帯電話事業者は「同じような料金でよりおトクにしたい」=売り上げは単純に下げたくない、という意思を持っている。さらに、iPhone XSやファーウェイのP20 Pro、サムスンのGalaxy Note 9のような、本来の売価が10万円を超える高級機種が多くなっている現在では、世間的にも割引を含めたトータルの金額が注目されている。
こうした状況を受けて、「携帯電話事業者は料金を高止まりさせている」「携帯電話端末の料金と通信料金を一体にすることでわかりにくくしている」との批判があり、そのひとつが、政府側からの「携帯電話料金は4割下げられる」という指摘なのだ。
消費者から見れば、ここまでの説明には利がある。では、業界として見た場合、そこに妥当性はあるのだろうか? 次回のVol.71-3ではそのあたりを検証しよう。
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