「週刊GetNavi」Vol.42-1
「対話」そのものがUIとなる日は近い!?
4月7日、シャープが興味深いプロモーションを行った。同社のTwitter公式アカウントでの返答を、1日、AIに代行させたのだ。担当したAIは「りんな」。日本マイクロソフトが開発した「女子高生AI」だ。
女子高生、とはもちろん設定上のこと。研究機関Microsoft Researchの技術をベースに開発され、15年8月から公開されている。りんなができるのは、会話に対する受け答えだ。話しかけると、女子高生っぽく返答してくれる。
16年4月現在、Twitterのアカウントには6万3000名を超えるフォロワーがいる。
シャープ広報の“インターン”となったりんなは、公式アカウントへの問いかけや自分に関するつぶやきをネットから拾い、それに対して逐一答えていく。どんな製品について話しているのか、好意的な反応かそうでないかなど、文章の内容を分析したうえで「女子高生らしい」言葉で反応を返す。もちろん、完璧ではない。的外れな単語を返すことも多いし、込み入った内容には適切に返答できない。
だが、そのスピードは圧倒的だ。問いかけから返答までの間隔は1秒以内。半日で3万数千のツイートを繰り返し、シャープ公式アカウントは、りんなからの返答に埋め尽くされた。
人間には、このような速度でコミュニケーションをするのは不可能だ。もし、これが単なる会話ではなく、ユーザーサポートや受発注だったら?
対応に複数人が必要な量に、より素早く対応できることになる。
りんなのように、自動的に反応を返すソフトウェアを「Bot」と呼ぶ。現在はSNSでの広告配信、ゲームの経験値稼ぎなど、言葉は悪いが「面倒なので人がやるほどのことでもないもの」のために使われていて、良いニュアンスの言葉ではない。だが、AI技術を軸にBotの能力が上がると話は変わる。
マイクロソフトは、3月30日に米サンフランシスコで開いた開発者会議「Build 2016」にて、「Conversation as a Platform」(対話はプラットフォームである)という方針を打ち出した。我々は、日常的にLINEやTwitterといったプラットフォームを使い、人と対話している。ならば、そこにBotのような「人以外」のものを介在させれば、ウェブやアプリなど「操作」を必要とするものの一部を「対話」で代替できるはずだ、というのが、彼らの主張である。
もはや、PCだスマホだ、と機械を分けて対応するのはナンセンス。人間にとって自然な形が「対話」ならば、それそのものをUIにする、すなわち、人に話すように機械に命令すればいい、ということになる。マイクロソフトなどは、対話を助けるBotを作るプラットフォームの提供が新しいビジネスになる、と判断しているわけだ。
同様の発想は、IBMやFacebookも語っており、一大ムーブメントになりつつある。IBMのAI「ワトソン」も、こうしたコミュニケーションに使うことが想定されている。「アプリの時代は終わり、Botの時代になる」 そんな意見まで聞かれるのだが、それは本当だろうか?
Botになにができるのか、結果的にスマホやPCはどう変わるのか? その辺は次回VOl.42-2以降にて解説していきたい。
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