デジタル
2018/12/8 7:00

【西田宗千佳連載】スマートディスプレイのコア機能は「ビデオチャット」か

さて、スマートディスプレイでなにができるのか? ここまでの連載で述べたように、できることは基本的に「スマートスピーカーでできること全部」だ。それが「画面付き」であることが違いになる。

↑Amazon「Echo Show」

 

経路を示すときには地図が表示されるし、レシピを聞きながら料理をするときには「レシピ動画」が再生される。ショッピングでは製品の画像が出てくるし、音楽を再生すれば、それが「プロモーションビデオ」になるかもしれない。

 

なかでも各社が期待しているのは「コミュニケーション」だ。AmazonやFacebookの販売する製品にはビデオカメラが内蔵されており、本体だけでビデオチャットが行える。家庭内でインターホン代わりにも使えるし、遠くの家族と話すのにも使える。PCやスマホがあればできることだが、それらの機器とは別に、独立してコミュニケーションデバイスがあることは、「わかりやすさ」という点では有利になる。音声で操作できる、例えば「実家にかけて」といえば繋がる、という簡便さも導入を決意するポイントになるだろう。

 

スマートスピーカーやスマートディスプレイの問題点は「いかに日常的に使ってもらうか」ということだ。音楽を聞けて、天気がすぐにわかるのは便利だが、「機械にどう命令していいかわからない」という問題は洋の東西を問わず存在しており、便利な使い方が見つからない……という人も一定数いる。そういう人たちはすぐに使わなくなるので、市場的にはマイナスだ。

 

というわけで、これらの機器は、宿命的に「便利で皆が使う可能性のある機能」を追加していく必然性に迫られている。その切り札とみられているのが「コミュニケーション」、というわけだ。

 

一方、Googleは製品にビデオカメラを搭載せず、「ビデオ通話要素を入れない」判断をした。ビデオカメラがあることで、プライバシー部分で懸念が生じることを避けたため、といわれているが、そもそも音声の段階で似たようなものなので、そこをいまさら気にするのか(すでに対策済みで、本質的には問題ない)、という印象だ。むしろ本音は「価格を下げたい」ということかも知れない。Googleの「Google Home Hub」は149ドルで、ライバル・Amazonの製品より100ドル安い。スマートスピーカー市場も低価格製品の登場で拡大したので、Googleとしては、先行するAmazonに対して「価格」で対抗するつもりなのかもしれない。

 

また、Facebookの製品は、Amazonの音声アシスタント「Alexa」を使いつつ、ビデオチャットは自社プラットフォーム、という切り口。こちらは、そもそもこの市場で他社と積極的に競合しようという意思が薄そうに感じる。ちなみに、アップルは現在のところ「音無しの構え」だ。HomePodが苦戦しているため、戦略を練り直している可能性も高い。

 

そして、コミュニケーションと並ぶ大きな軸として期待されているのが「動画」だ。動画視聴はスマートディスプレイの中核的ニーズになると期待されている。

 

では、なにを見ることができて、どのような市場を形成すると考えられるのか? その辺は次回のVol.73-4にて。

 

週刊GetNavi、バックナンバーはこちら