Amazonの定額制音楽配信サービス「Amazon Music Unlimited」が日本でサービスを開始してから1年が経ちました。Amazon Musicデジタル音楽事業本部長のレネ・ファスコ氏に「アマゾンらしい音楽サービス」の特徴についてインタビューしてきました。
好調なスタートダッシュを遂げたAmazon Music Unlimited
定額制音楽配信サービスのAmazon Music Unlimitedは、2017年11月8日に日本でサービスを開始してから約1周年。現在は6500万曲以上の楽曲やプレイリスト、ラジオステーションなどを揃えていますが、ファスコ氏はスタートダッシュの手応えに十分満足しているとコメントしています。
「日本国内の音楽産業はまだ売上の約7割をCDなどパッケージメディアが占めているといわれています。欧米に比べると、日本の音楽ストリーミングサービスの認知はまだこれからという段階ですが、それでもAmazon Music Unlimitedは堅調に成長していると思います」
日本国内のサービス登録者数は非公開ですが、現在グローバルでは数千万人以上のユーザーがAmazon Music Unlimitedを使って音楽を聴いています。Amazonの音楽サービスに定額制音楽配信が加わったことで、「Amazonらしさ」に厚みが加わったことをファスコ氏が強調しています。
「定額制の聴き放題サービスが加わって、従来から展開しているダウンロード購入型のサービスと、ECサイトからCDなどのパッケージメディアを購入できるプラットフォームが互いにバランスよく補完し合う関係ができました。それによってAmazonのお客様はいろんな形で好きな音楽コンテンツと出会い、仲間と喜びを共有したり、作品をコレクションして楽しむことができます。これが私たちのサービスがAmazonらしいポイントのひとつだと私は考えます」
様々なユーザーのニーズに合った価格体系
Amazon Music Unlimitedの月額利用料金は980円ですが、Amazonプライム会員なら月額780円ですべてのコンテンツやサービスが同じように楽しめます。さらにAmazonのスマートスピーカー「Amazon Echoシリーズ」のユーザーなら月額の利用料金が380円まで割り引かれてお得になります。「音楽配信サービスに興味を持った方々が気軽に試せるように、多様性のある料金体系を揃えて間口を広くしていることがAmazonのもうひとつの強み」であるとファスコ氏が説明しています。
Amazonプライム会員が年会費3900円で利用できるサービスの中には、音楽ストリーミングの「Prime Music」が含まれています。こちらはAmazon Music Unlimitedとどう違うのでしょうか。
配信されているカタログの楽曲数は100万曲以上と、Amazon Music Unlimitedに比べるとPrime Musicの方が数はあまり多くはありません。その代わりにPrime Videoも使えたり、ECサイトのお急ぎ便やお届け日時指定便が無料で使えるなど、プライム会員向けサービスの魅力的なパッケージの中で「Prime Musicは音楽配信サービスというものを、まずは試してみたいというお客様のエントリーポイントとして大事な役割を果たしている」とファスコ氏が強調しています。またPrime Musicでお試しをした後に、よりたくさんの楽曲が聴き放題で楽しめるAmazon Music Unlimitedにステップアップする利用者の流れも出来つつあるそうです。
Amazon Alexaに対応したボイスサービスも強み
ファスコ氏はAmazonの音楽サービスにはもうひとつ、ほかにない強みがあるとしています。それはクラウドベースの音声サービス、Alexaと連携する音声コントロール機能が使いやすく最適化されていることです。
Amazonのスマートスピーカー、Echoシリーズを始めとしたAlexa搭載デバイスは、Amazon Music Unlimitedをデフォルトの音楽サービスとして登録しており、「アレクサ、リラックスできるプレイリストをかけて」「アレクサ、最近聴いた曲をかけて」といった感じで話しかけるだけで、簡単に音楽リスニングの操作ができます。
そしてAmazon Music Unlimitedが始まって以降、iOS/Androidに対応するモバイルアプリのAmazon MusicにもAlexaが搭載されました。Amazon Musicのアプリを起動し、イヤホンやヘッドホンのマイクに「アレクサ、ミスチルのシーソーゲームをかけて」「アレクサ、ディズニーの曲をかけて」「アレクサ、新曲をかけて」といった具合に話かければ、文字入力の操作を省いて聴きたい音楽に素速くたどり着けます 。
ファスコ氏は「このモバイルアプリとEchoシリーズのスマートスピーカー、Fire TV Stick 4Kにも共通して搭載されたAlexaの音声サービスを特別な音楽体験として今後もアピールしたい」と述べています。最近ではボーズのスマートスピーカーやピクセラの4KチューナーにもAlexaが搭載されていたり、音声でコントロールできるオーディオビジュアル機器が増えています。これからは音楽配信サービスも「声で操作する」のが当たり前になるのかもしれません。
オープンであることを重視するAmazon Musicのコンテンツ&ハードウェア戦略
Amazonは2018年の12月12日からAmazon Music Unlimitedで、稲垣吾郎、草彅 剛、香取慎吾の3人によるユニット「新しい地図joinミュージック」の新曲4曲を聴き放題で独占配信開始しました。このようなAmazon Music Unlimitedでしか聴けない独占・オリジナルコンテンツの制作にもこれから力を入れていくのでしょうか。
「Amazon Musicではアーティストを支援するために、ファンの皆様との出会いを広げ、交流を深める場所を提供することをミッションのひとつに掲げています。独占配信のコンテンツはこれからも折を見て実現したいと思っていますが、そこにばかりこだわるつもりはありません。それよりもAmazon Musicのプラットフォームにできる限り多くの作品を揃えて、Amazonアマゾンに行けば聴きたい音楽が見つかる環境を整えることに、これからも力を注ぎたいと考えています」
Amazon Music Unlimitedはいま全世界で数千万人以上のユーザーが利用するサービスです。2018年11月から新しい邦楽プレイリスト「Tokyo Crossing」を海外のAmazon Music Unlimitedで公開して、日本で旬な音楽やアーティストを世界に発信するための試みも始まりました。
2018年の12月12日にはスクリーン付きのスマートスピーカー「Amazon Echo Show」も日本で出荷が開始されました。スティック型メディアストリーミング端末の「Amazon Fire TV Stick 4K」もAlexa搭載のリモコンが加わり、リモコンや同じホームネットワークに接続したEchoシリーズのスピーカーに話しかけることによるハンズフリー操作もできるようになっています。それぞれのデバイスではAmazon Music Unlimitedも楽しむことが可能。ファスコ氏は「これからもAmazonの音楽サービスを様々な機器でより簡単に使えるように連携を強化していきたい」と抱負を語りながら、EchoシリーズやAmazonのFire TV Stickなど自社製品に限ることなくその輪を広げていくことが大事とも説明しています。
車載エンターテインメント連携や、ミュージックビデオ対応はどうなる?
これからAmazon Musicが挑戦したい新しいことについてもファスコ氏に聞いてみました。ひとつは「車の中でも音楽サービスを使いやすくすること」だそうです。
「自動車の中の空間は音楽を聴くのに最適です。音楽配信サービスとの相性も良いと考えます。現在はまだ車載機器のユーザーインターフェースが若干使いにくいので、音声コントロールも含めてこれをさらに洗練させれば、もっと多くのユーザーに使ってもらえるのではないでしょうか」
現在はスクリーン付きスマートスピーカーやFire TV StickでもAmazon Music Unlimitedが快適に使えるので、ぜひミュージックビデオのコンテンツも増やしてみてはどうかとリクエストしてみました。ファスコ氏は「確かにミュージックビデオはAmazonのスクリーン付きデバイスの魅力を引き出せるコンテンツだと思います。今後Amazon Musicでも楽しめるように検討を続けていきたい」と答えてくれました。
いま最も勢いよく進化を続けているAmazon Musicは、これからも目が離せない音楽サービスであるといえそうです。