デジタル
2016/5/30 12:01

【西田宗千佳連載】タブレット市場減速とPCの関係

「週刊GetNavi」Vol.43-1

 

タブレットは必要性が低く買い換え需要も少なめ

タブレット市場が縮んでいる。

 

市場調査会社のIDC Japanが発表した資料によれば、2015年通期での日本国内市場のタブレット出荷台数は831万台。前年比で1.5%しか増加していない。また、2015年第4四半期に関しては、前年同期比で14.3%減の222万台となっている。期末に落ち込んだ理由は、2014年には存在した「教育市場への試験的な納入」によって生まれた需要がなかったためである。学校へのタブレット導入は正式な制度化の前であり、需要が不安定である。そのため、それを原因とした数量減少そのものは、大きな問題ではない。逆にいえば、その程度のことで台数が大きく変わるほど、まだ小さな市場であった、ということでもある。

 

タブレット市場の停滞のなかで大きな問題となるのは、個人向け市場の伸びが止まっていることだ。日本国内においては、期ごとに前年同期比で2%以内の伸び〜1%前後の減少を繰り返しており、ほぼ横ばいといえる。

 

なぜ売り上げが伸びないのか? スマホに食われた、といわれることが多いが、筆者はもう少しシンプルに見ている。要は「なくても生きていける」うえに「買い換えを促す要素が少ない」から売れにくいのだ。

 

ひとつの例を挙げよう。海外出張に出た時、航空会社のラウンジの中を見ると、タブレットを使っている人はたくさんいる。だが、ラウンジの外、普通の待合席で待つ人には、タブレットを使う人は少ない。ラウンジにいる人は日常的に長時間の移動を行っていて、収入的にも余裕がある。だからタブレットを買うが、飛行機での移動が非日常である人は、そこまで出費意欲が出ない。これが、新規需要が足踏みする理由だ。もちろん、タブレットはあれば便利だ。筆者も毎日使っている。だが、そこにコストを支払えるのは、便利さを買う覚悟がある人か、それだけの余裕がある人に限られる。

 

また、すでにタブレットを持っている人が「なかなか買い換えない」のも問題だ。特に、iPadやハイエンドタブレットは、完成度がかなり高い。筆者の周りにも「買い換えたのは3年ぶり」とかいう人が多くいる。2010年に市場が立ち上がったばかりなのに、「壊れない限りこれで十分」という人が多く、買い換え需要が伸びない。

 

変わりつつあるPCとタブレットの境目

AppleはiPad Proでキーボードやペンの要素を加えたが、それは「PCに近づける」「いままでのiPadにない要素を追加する」ことで、新規需要と買い換え需要の両方を求めるための施策である。

 

一方で、必需品に近いはずのPCも、販売は伸び悩んだ状態だ。こちらも個人レベルでは「壊れない限り買い換えない」人が増えているし、仕事などで必要性がないからPCを買わない、という人もいる。だからこそPCのほうは、タブレットとしての機能を取り込んだ、いわゆる「2in1」が増え、どちらとしても使えるものへと移行しつつある。

 

タブレットとPCの境目はどうなるのか? そこには、各社のOS戦略とビジネスの進め方が絡んでくる。鍵は、クラウドビジネスとの関係だ。各社の戦略の違いと、そこから生まれる結果については次回Vol.43-2にて。

 

「Vol.43-2」はこちら
ますますあいまいになる「タブレット」の定義
 

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