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2015/6/15 8:00

SIMロック解除とMVNOに大きな影響を及ぼす「端末サポート」コスト

「週刊GetNavi」Vol.31-4

 

Vol.31

 

携帯電話端末において、“通信の確実性”や“通信スピード”は、やはり重要なものである。携帯電話事業者であれば、NTTドコモ・KDDI・ソフトバンクの三大事業者(MNO)であっても、回線を借り受けてビジネスを行うMVNOであっても、それらを重要視していることは変わらない。我々の目には見えづらいが、携帯電話端末毎に接続確実性をチェックする行為は、携帯電話というサービスを提供する事業者と、彼らにハードウエア(携帯電話端末やルーター)を供給するメーカーにとっては、なかなかに大きな負担である。「日本向けにいい端末を作ったのなら、他の国にも出荷すればいいのに」と疑問に感じたことはないだろうか。販路の確保やローカライズ、価格競争力の維持など色々問題はあるのだが、なにより大きいのは、この「動作確認とサポート」という点である。携帯電話上での通信は一応国際規格で統一されているのだが、ディテールの部分では違いがある。通信周波数帯が同一であるだけでは一部の通信がうまくいかない場合があるのだ。だから、携帯電話事業者が世界中に端末を出荷するには、そうした各国の事情に通じていて、細かなカスタマイズに対応できる能力が求められる。これはMVNOでも事情は同じであり、細かな事情に通じているかどうか、そしてそこに対応できる技術を備えているかどうかが、通信速度や通話品質の差になって反映される。

 

SIMロック解除が義務化され、SIMロックのない「SIMフリー機器」が増えると、やはり同様に動作確認とサポートのコストが問題になってくる。例えばNTTドコモに納入した機器であっても、一応KDDIやソフトバンクでの動作を確認しておかないと、後々問題を指摘される可能性があるからだ。それを避けるためには、「SIMロック解除には応じるものの、他社での利用はサポート外とする」「SIMロックはかかっていないが、他社ネットワークでの利用はサポートしないし、動作検証もしない」という形が考えられる。実際、そういう端末は意外なほど多い。6月19日に発売される「Surface 3」も、ワイモバイルが販売を一手に引き受けるため、LTEモジュールについては、SIMロックはないものの、ソフトバンク網以外では一切サポートしない、という制約がある。そういうやり方で、実質的に顧客を縛っているわけだ。

 

逆に商機を見いだす人々もいる。SIMロック解除の動きに伴い、MVNO利用が増えるなら、低価格端末のニーズも増えるはず。とすれば、これまでに大手携帯電話事業者に納入実績がある端末は、サポートや動作検証のコストを大幅に軽減できる上に、MVNO向け販売で「二毛作」が期待できる。富士通やシャープ、ソニーモバイルからMVNO向けの端末が供給されるのは、そうした背景がある。また、元々世界レベルのサポート能力がある企業は、そのノウハウを使って日本国内にSIMフリー端末の提供を開始する。日本のメーカーが世界展開できない事情と、まったく逆の現象である。

 

こうした複雑な事情により、SIMロック解除端末の利用は「わかっている一部の人」以外には進まないだろうが、一方、低価格端末を中心とした新しい市場は確実に盛り上がっていく。MVNOを含めた市場拡大こそがSIMロック解除義務化の本当の狙いであり、直接的な効果を狙ったものではない……ともいえるのである。

 

●Vol.32-1は「ゲットナビ」8月号(6月24日発売)に掲載予定です。

 

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