Vol.77-4
二つ折りスマホには複数の懸念点がある。なかでももっとも大きいのは「ディスプレイの耐久性」だ。
現在のスマホは、ほとんどが表面をガラスでカバーする構造を採用している。どうしても表面が大きく露出するスマホには、硬く滑らかな素材を使う必要があるためだ。
特に注目する必要があるのは「硬さ」だ。一言で「硬い」といっても、そこには複数の意味がある。ガラスの特徴は、薄くできること・透明度が高いことに加え、「表面に傷がつきにくいこと」がある。特に、現在スマホで使われている強化ガラスは化学処理が施されており、より傷がつきにくくなっている。コーニングの「ゴリラガラス」やAGCの「ドラゴントレイル」といった素材は、そうした特徴が評価され、広くスマホで使われているのだ。
だが、ガラスには「衝撃にはもろい」「曲げにくい」という特徴もある。落としたら画面が割れてしまうのはそのため。ただ、二つ折りスマホでは、特に後者の「曲げにくい」ことも大きな問題になる。
そのため、現状では、ほぼすべての二つ折りスマホは、表面のカバーにガラスではなく「樹脂」を使っている。樹脂とは、要はプラスチックの一種だが、ガラスと違って曲げやすいというメリットがある。
だが、樹脂はガラスほど表面を硬くできない。硬くしたら曲げづらくなるからだ。表面がガラスほど硬くないということは、傷がそれだけつきやすい、ということでもある。また、同じ箇所で曲げ続けると、どうしてもそこに「曲げぐせ」がついて線になってしまう。現状の二つ折りスマホも、一枚のディスプレイで構成されているとはいえ、曲げている部分の「線」は目立っている。
さらに、二つ折りスマホは、構造上カバーもつけづらい。サムスンは本体を「谷折り」にすることでディスプレイをカバーする構造を採ったが、その結果、ファーウェイの製品より分厚くなってしまった。まさに「痛し痒し」という状況だ。
このように、傷がつきやすくケースもつけづらい製品が「普通のスマホよりもずっと高い」というのがなによりの問題だ。高いものを買ったら長くきれいに使いたいのが人情だが、おそらくそれは難しい。
スマホは完璧な製品ではない。傷や壊れやすさといった問題を、結局は別売のケースやカバーフィルムなどで補っている部分がある。二つ折りスマホはそのエコシステムに入っていくことができず、リスクがより大きくなってしまうのだ。
もちろん、今後の技術発展で、問題が解決する可能性は高い。ガラスでも二つ折りができるものを開発中の企業はあるし、「より傷がつきづらい樹脂」を開発中のところもある。こうした技術開発により、使いやすさとコストは改善に向かうだろう。
だが、現時点の二つ折りスマホは、黎明期のスマホよりも多くの問題を抱えている。その船出は、やはり厳しいものになるのではないだろうか。