高価なデスクトップパソコンが欲しかったあの頃
家電の買い替えサイクルは約10年と言われることが多い。冷蔵庫や洗濯機に限らず、電子レンジやヒーターなど、数万円で買える家電にも、つい同じようなサイクルを無意識に適用してしまう。
そして、今やデジモノの数々も、家電に相当する価格となってきた。パソコンに限らず、スマートフォンやタブレットなど、良い機能を持つ最新型は、やはりそれなりに高い。だからこそ、家電と同じように、ある程度の年月を使い続けるものだ、という認識で購入している人は多いだろう。
私も以前までは同様であった。高校生の頃、将来働いた初任給で買うと決めていたのは、それなりに高価なデスクトップパソコンだった。特になにか高度な処理が必要ということでもなかったが、やはり、しっかりとしたものを一台は持っておきたい、という思いがあった。
当時から、趣味生活の要(かなめ)はパソコンだったからだ。帰宅すればまず電源を入れる。そんな代物にある程度のお金をかけたい、となるのは、自然なことだったのかもしれない。
しかし、今や爆発的にスマートフォンが普及し、自宅でパソコンを操作する時間は格段に減った。SNSを閲覧したり、動画を観たり、もしくはブログを更新したり、といった事象は、その全てをスマートフォンでまかなえるようになった。もしくはタブレットである。
デジモノとの付き合いを変えた、Chromebookとの出会い
そういったライフスタイルの変化を受けて、私の中でのデジモノに対する考え方も、少しずつ変わってきた。今ではある程度自分の好きにお金を使える年齢になったが、高価なデスクトップパソコンを買おう、とは思わなくなった。
今現在、私が愛用しているのは、約3万円で購入したノートパソコン、Chromebook(クロームブック)である。Chromebookは、Googleによる「Google Chrome OS」を搭載したノートパソコン。機能をブラウジングに特化させたのがその最大の特徴だ。
Googleアカウントで起動させ、Wi-Fiを繋ぎ、「Google Chrome OS」を開く。大原則としてこれで完結してしまうのだが、その代わり、電源を入れてからの起動がものすごく速く、全体的に手軽に扱うことができる。
Windowsと比較すると、体感としては「爆速」。とにかく動作が軽い。一方で、ストレージ容量は極めて小さいが、それは、Googleドライブを使うことを前提としているからである。
このChromebookは、割り切った用途からも分かるように、非常に低価格となっている。導入のハードルが低いことから、米国の教育市場では60%近いシェアを持つとされるが、私も、主に自宅でパソコンを操作する際の目的はブラウジングであるからして、これで充分と感じている。
今や、インターネットにべったりな人ほど、自宅にWi-Fi環境が整っていないはずがない。もしくは、ノートパソコンを持ち出して作業する際も、カフェや公共施設など、フリーのWi-Fiスポットを利用できる箇所は加速度的に増えてきている。
もちろん、「低価格」「動作が軽い」という条件ならば、Chromebook以外のノートパソコンも候補に挙がるだろう。それでも私がChromebookを愛用しているのは、やはり言うまでもなく、Googleが提供する各種サービスの使い勝手が良いからである。
昨今はWindowsのWordだけでなく、Googleドキュメントが活躍するシーンも確実に増えてきた。同様に、GoogleスプレッドシートやGmailなど、Googleの各種サービスはもはや無くてはならないものとなっている。それらと最高に相性の良い「低価格」「動作が軽い」ノートパソコンとなれば、やはりChromebookなのだ。
私はこの、ブラウジング特化という割り切った用途を持つChromebookと出会ったことで、デジモノとの付き合いを考え直すようになった。つまりは、「良い物を奮発して買って長く使う」ではなく、「それなりの物を安価で買って、次々と最新型に買い替えていく」というスタイルだ。
Chromebookも、最新型には従来までになかった機能が少しずつ搭載されているため、たったの数万円でそれに乗り換えられるのなら、高価なデスクトップパソコンを奮発して買うよりも、より安価で済んで、便利なのかもしれない。
環境の変化が加速させる買い替えのサイクル
もちろん、十数年前なら、このような発想に至ることは無かっただろう。ここまでWi-Fi環境が街中には整っていなかったし、スマートフォンの利便性もそこまで強く感じてはいなかった。
インターネットは有線で、携帯は連絡機能を主としたデバイス。そういった認識が、技術の進歩により少しずつ変化し、今や全く違った状況を生み出している。
ブラウザ上で行うことができる作業も一昔前より確実に増えてきたし、そのクオリティも日々進歩してきている。それらを受けて初めて、「ブラウジングに特化した安価なノートパソコンを買い替えていく」という発想に至ることができた、という訳だ。
同じように、タブレットも安価なものを使っている。Amazonの、Fire HD 10。これも、10.1インチのフルHDスクリーンを有するタブレットとしては、かなりの安価である。デバイスの都合上、これもまた出来ることが限られてくるが、自分のいくつかの用途を満たしている場合は、充分である。
定期的に行われているAmazonのセール時に購入すれば、驚くほどの値段で購入することもできる。定期的に新型が出ているので、数年ごとに買い替えることが前提だ。
「使い捨てる」と表現すると少し語気が強くなるが、従来より早いサイクルでデジモノを買い替えていく選択肢は、年々その存在感を増しているように感じる。
新たな機能の搭載やバージョンアップもこまめに行われており、「いつ」「どれ」を買ったら良いか迷うほどに、「最新型」の登場サイクルが早い。と同時に、次々と価格は下がり、用途を割り切りさえすれば、一昔前では考えられなかった出費でそれを手にすることができる。
もちろん、「それなり」を超えた、本当に長年使い倒したい代物というのも、それはそれで確実に存在する。財布さえ許せばそれらを次々と買っていきたいが、なかなかそううまくはいかず。どうしても、リーズナブルな物に目が行ってしまうのが現実である。
「高価なデスクトップ」から、「安価なノートパソコン」へ。しかしこれも、スマートフォンの性能やインターネット環境の発展など、ここ十数年で起きたことの結果を受けた意識の移り変わりである。もしかしたら、四半世紀後には、また全く違った考え方でデジモノに向き合っているのかもしれない。
技術の進歩。環境の変化。それらにしっかりと目を配り、消費活動もフレキシブルに対応させていきたいものである。
【筆者プロフィール】
結騎了
ゆうき・りょう。仕事と育児に追われながら「映画鑑賞」「ブログ更新」の時間を必死で捻出している一児の父。歳はアラサー、地方住まい。ブログを学生時代から書き続け、二度の移転を経ながら十数年継続中。現在は副業として営む。『週刊はてなブログ』『別冊映画秘宝 特撮秘宝』等に寄稿。
ジゴワットレポート