「VAIO S15」は、PCメーカー・VAIOのA4フルサイズノート最新モデル。同社では従来から同じ名前の15型ディスプレイ搭載モデルを販売していましたが、2019年4月にフルリニューアルが敢行され、完全新規モデルに生まれ変わりました。今回は、同社直販サイトで販売されるカスタマイズモデルをお借りすることができたので、その実機レビューをお届けします。
モバイルノートとおそろいの新デザインにリニューアル
まず、ひと目で分かる大きな違いがデザインが全面刷新されたこと。従来モデルはやや丸みを帯びたルックスだったのですが、今回は、同社の既存モバイルノート「VAIO S11」「VAIO S13」「VAIO SX14」(VAIO Sシリーズ)で採用されている直線的なルックスに改められています。
もちろん見た目だけでなく、デザインの機能的な部分もしっかり継承しており、ディスプレイを開くとキーボード部がせり上がる「チルトアップヒンジ構造」や、キーボード面の金属パネルをフルフラットな一枚板構造とすることでメンテナンス性や剛性を高めた「フラットアルミパームレスト」などがひと回り大きなボディでそのまま実現されています。
本体背面にはメタリックなVAIOロゴを大きく配置。本体を閉じた際、エッジ部分をキラリと輝かせるオーナメントも健在です。A4フルノートというと、うしても野暮ったいデザインになってしまいがちなのですが、その点はさすがVAIOと言ったところ。後述する多機能ぶりに反して、全体的にシンプルな見た目にまとめられているので、あらゆるインテリアにマッチするでしょう。
デスクトップPC顔負けのハイパフォーマンス
さて、VAIO Sシリーズというと、ボディの放熱性能を最大化することでCPUのパフォーマンスを長時間、高いレベルに保ってくれる「VAIO TruePerformance」が有名ですが、残念ながら本機にその機能は搭載されていません。というのも「VAIO TruePerformance」はインテルのモバイル向け超低消費電力CPU(Uプロセッサーライン)向けの技術だから。VAIO S15には、それよりも格段にハイパフォーマンスな、HプロセッサーラインのCPUが採用されているため、そもそも必要がないのです。
その、気になるパフォーマンスはこちらの公式動画を参照ください。
同じ第8世代Core i7プロセッサーですが、なんと倍以上も速度に差があるのです。そして、実は多くのA4フルノート(特にスリムタイプのもの)は、UプロセッサーラインのCPUを搭載しています。本格的なフォトレタッチや動画編集などを行いたいという人には断然Hプロセッサーライン搭載モデルがおすすめなので、ここは間違わないようにしてください。もちろん普段使いでもHプロセッサーラインの恩恵は大。Webブラウジングやメールチェックなど、あらゆる作業をキビキビと気持ちよくこなしてくれます。
ちなみにビデオチップは、CPU内蔵の「Intel UHD Graphics 630」となっていますが、こちらもなかなか優秀でした。最上級のグラフィックパフォーマンスにそこまでこだわらず、解像度を1280×720ドット級に設定するなど工夫すれば大抵の新作ゲームが30fps以上で動作。最新のFFXIVベンチマークでも3225点と「やや快適」なスコアを叩き出しています。
なお、本機は超高速な外部機器接続インターフェイス「Thunderbolt 3」に対応しているため、市販の外部GPU BOXに接続することでグラフィックパフォーマンスをデスクトップPC級に向上させることが可能です(今回は未検証)。追加の投資が必要となりますが、本格ゲームユーザーにとっても有望な選択肢と言えるでしょう。
ストレージはデュアルドライブ構成に対応。HDD/Hybrid HDDとSSDを同時に搭載することが可能です。OSやアプリを高速なSSDに、データを大容量HDDに保存するというのがおすすめの使い分け。店頭モデルでは1TB HDD+128GB SSDという組みあわせになっています。最近はHDDを搭載するノートPCが減ってきていますが、写真などを保存しておきたいのならSSDでは容量が足りません。家族で使うならなおさらです。
また、メモリは4GB~32GBまでを選択可能(店頭モデルは8GB)。写真のレタッチなど、ヘビーな作業を行う場合は、16GB以上に増設してあげましょう。
見やすくキレイで情報量豊富な15.6型4Kディスプレイ
そしてVAIO S15、もう1つの特長が、4K(3840×2160ドット)表示に対応した15.6型の高精細4Kディスプレイを選択できること。スマホの高精細ディスプレイに慣れていると、フルHD(1920×1080ドット)級の解像度に粗さを感じてしまいがちなのですが、その4倍の情報量を誇る本機の表示は非常になめらか。Windows 10はユーザーの好みに合わせてUIの倍率を変更できるので、用途に応じた倍率を選んであげましょう。100%だとアイコンや文字サイズが小さくなってしまいすぎるので、150~200%くらいがおすすめです(デフォルトは250%)。
↑購入時のデスクトップ(250%表示)。アイコンサイズは約10mm
↑200%表示のデスクトップ。アイコンサイズは約8mm
↑100%表示のデスクトップ。アイコンサイズは約4mm
ディスプレイの表面処理は「アンチグレア」タイプ。発色に優れる反面、ギラギラした「グレア」タイプのものと比べて映り込みが低減されているので、長時間の利用に適しています。もちろん、発色や視野角についても必要十分なレベルを確保しています。
ただし、VAIO S15のディスプレイは非タッチパネル。Windows 8以降、強化されているマルチタッチ操作には対応していません。
最新端子からレガシー端子まで“全部入り”
「A4フルノート」の定義は年々変わっており、近年では光学ドライブを搭載してないものや、レガシーな端子類が省略されたものも増えてきました。しかし、VAIO S15は今どき珍しい“全部入り”。光学ドライブはもちろんのこと、左右振り分けで計3つのUSB端子、USB Type-C端子、HDMI端子、SDメモリーカードスロット、そしてなんとVGA端子、有線LAN端子まで搭載されています。
一般家庭でVGA端子や有線LAN端子が必要なのかという疑問もあるのですが、ビジネスシーンでは相変わらずVGA端子接続の古いプロジェクターや、有線LANが活用されているのも事実。古い周辺機器を繋げたい人や、頻繁にではないが仕事用に持ち出したいという人にはありがたいかもしれません。
なお、最先端のUSB Type-C端子は、先にも述べたよう超高速な「Thunderbolt 3」規格にも準拠。外部GPU BOXのほか、超高速ストレージなどさまざまな周辺機器を接続可能です。また、HDMI端子との組みあわせでトリプルディスプレイ環境も実現できます。
さらに光学ドライブはDVD/BDの読み書きに加え、UltraHDブルーレイディスク(以下、UHD BD)の再生にも対応しました。カスタマイズモデルはDVDスーパーマルチドライブも選択可能です。自慢の4K解像度ディスプレイの情報量をフルに活かした映像再生を楽しめます。残念ながら、UHD BDの売りの一つであるHDR表示には対応していないですが、まあそもそもノートPCのディスプレイでHDRのポテンシャルは引き出せないと思いますし、USB Type-C端子経由で最新4Kテレビと接続することで、4K/HDR映像を楽しめるというのが有意義な活用かと思います。
VAIOこだわりの使い心地の良さも◎
そのほか、数字に表れにくいところも実に良く作られています。たとえばキーボードは、しっかりとした押し心地があり、流行りのウルトラスリムノートと比べて快適なタイピングが行えます。テンキーパッドも付いているのでExcelなど数字を入力することが多い際にも重宝するでしょう。
キーボードは特殊なユーティリティを使わずに、専用アプリ「VAIOの設定」で、メーカーごとに微妙に配置の異なる一部キーの機能割り当てを変更可能。Fnキーと左Ctrlキーを入れ替えたりして、慣れ親しんだ操作のまま使えるようにできます。
また、タッチパッドは2ボタン付き。最近のノートPCはボタンレスタッチパッドが増えていますが、ボタンはしっかり押し込みたいという人も多いので、個人的には英断だと思いました。なお、2ボタンはやや固めのしっかりとした押し心地。誤操作しにくいのは良いものの、クリック音がやや大きめなので、静寂キーボードと合わせて静かな場所で使いたい場合はタップ操作で使うようにすると良いでしょう(デフォルトでオン)。
また、個人認証機能として指紋センサーの搭載も選べます。流行りの顔センサーは見送られてしまいましたが、指紋センサーをタッチするだけでスリープから復帰できるなど、独自の工夫が盛りこまれています(デフォルトではオフ。「VAIOの設定」アプリでオンにする必要あり)。なお、指紋は複数登録でき、それぞれにアカウントを紐付けておけるので、父親がタッチすると父親のデスクトップが、子どもがタッチすると子どものデスクトップが起動するといった使い方も可能。家族で1台のPCを共有する際にもとても重宝します。
決して安くない選択肢だが「コストパフォーマンス」はむしろ高い
……と、極めて多機能かつ高機能なVAIO S15。弱点と言えば、バッテリー駆動時間が「約4.5~8.0時間」(カスタマイズモデルの場合))と短いこと。今回の仕様では約2時間弱の試用でバッテリー残量が半分程度になりました。また本体重量が約2.25kgと重めなことでしょうか。しかし、このマシンをモバイルPCとして使う人はそういないでしょうから、それは大きな問題にはならないはずです。
あとは、海外メーカー製の同クラススペックの製品群と比べてやや割高なことが弱点と言えそうですが、ここまでで説明してきた多機能ぶりには、それだけの価値があると感じました。3~5年、長く快適に使いたいと考えているのなら、こういったところにきちんと投資するべきでしょう。
撮影した写真をキレイな大画面で閲覧し、ハイパフォーマンスで快適にレタッチし、大容量HDDにたっぷり保存するというヘビーユーザーから、家族みんなでさまざまな用途に使いたいというファミリーユーザーまで、さまざまなニーズに応えてくれる懐の広いノートPCと言えるでしょう。
【SPEC】
●ディスプレイ:15.6インチ●OS:Windows 10 Home●画面解像度:3840×2160ドット●バッテリー駆動時間:約4.8時間●インターフェイス:USB Type-A×3、Type-C(Thunderbolt 3)×1、SDメモリーカードスロット、HDMI出力ほか●光学ドライブ:UHD BD対応ブルーレイディスクドライブ●サイズ:約W361.4×H22.0~26.0×D254.3mm●質量:約2.25kg