Vol.81-1
低価格機の投入で爆発的普及を目指す
音声アシスタントを活用した機器といえば真っ先に「スマートスピーカー」が思い浮かぶだろう。だが、スマートスピーカーの市場もそろそろ飽和気味だ。先行するアメリカでは、スマートスピーカーは「行き渡った」印象だが、日本は行き渡る前に市場が落ち着きつつある。アメリカでは、ストリーミング・ミュージックがサービスとして定着しており、スマートスピーカーの呼び水となったものの、日本では、そのサービス自体がそこまで普及していない。そのため、スマートスピーカーを「音楽を聴くために買う」人が、アメリカほどは増えておらず、結果として伸びが鈍い……という背景があるように思う。
そんな状況に大きな影響を与えそうな製品が出てきた。小型で低価格な「スマートディスプレイ」だ。スマートディスプレイはディスプレイ付きスマートスピーカーの俗称であり、主にGoogleがこの名称をアピールしている。しかし、実は製品を先に出したのはAmazon。Amazonは、日本でも6月26日から5.5インチのディスプレイを備えた「EchoShow 5」の出荷を開始するなど、低価格戦略においても先手を打っている。そう、本機のポイントは価格そのものにある。
それまでのスマートディスプレイは、Googleの「Google Nest Hub」が1万5120円、Amazonの「Echo Spot」が1万4980円だった。10インチディスプレイを搭載した「EchoShow」は2万7980円で、さらに高い。それに対し、Echo Show 5は9980円と、1万円切りを実現した。
なぜこのような製品を出したのか? アマゾンジャパン・Alexaエクスペリエンス&デバイス事業部 リージョナルディレクター Alexaアジア パシフィック 大木 聡氏は、「サイズ・価格的に、より手軽なものが必要だと考えたため」と話す。
これは、スマートスピーカーが海外でブレイクした時と同じやり方である。Amazon「Echo」も、最初は音質重視で大型の製品が中心だった。だが、2016年秋に、50ドル以下で手に入る小型・低価格版である「Echo Dot」が登場して一気にブレイクした。2016年初頭までは「先進技術に興味がある人が買うもの」という扱いだったものが、同年末には普通の人も欲しがるデジタルガジェットになり、ついには「多くの消費者が対応を期待している商品」と家電メーカーが認識するまでに成長したのだ。
便利そうだと思えても、価格が高いと購買につながらないし、すでに購入した人が自宅用の2台目やプレゼント用を買うにも至らない。しかし、ある種のマジックプライスを下回ると、「試しに買ってみよう」「便利なのでプレゼント用に」と考えられるようになる。Echo Dotではまさにそのサイクルが起きた。Echo Show 5はその再現を狙っているのである。
狙いはわかる。では、大型ディスプレイ搭載製品との違いはどこか? 本当に日本で「スマートディスプレイのブレイク」は起きるのか? 起きるとすればどんなニーズで起きるのか? 低価格機種の登場に、ライバルであるGoogleはどう対応するのか? そのへんはウェブ版で解説していくことにしたい。
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