タッチ&ペン操作を重視したWindows 8の登場(2012年)に合わせて盛り上がった2 in 1ノートPC市場。2 in 1ノートPCは、クラムシェル型(2つ折り型)ノートPCとしてもタブレットPCとしても使える形状が最大の特長で、多様化するPC利用スタイルに応える新スタンダードになる……はずでした。
しかし当時、実際にリリースされた製品は、クラムシェル型ノートPCとしてもタブレットPCとしても中途半端で、そのブームは短期間で終了。ダメだった理由はいろいろ挙げられますが、「重い」「ぶ厚い」という形状の問題に加え、少しでもその問題を軽減するためにパフォーマンスや拡張性を犠牲にしていたのも残念でした。
もう「2 in 1」は過去のトレンドになってしまうのか……? と思われていた昨今ですが、ここに来て、“ちゃんと使える2 in 1ノートPC”が国内メーカーを中心にリリースされ始めています。今回紹介する富士通クライアントコンピューティング「LIFEBOOK UH95/D2」はその最先端モデル。同社の本気が詰まった1台です。
近年、iPad Proの登場などでタッチペン入力が再び脚光を集めつつあります。そうした新しいスタイルを採り入れてモバイルしたいという人にとって、2 in 1ノートPCは理想的な選択肢でした。しかし前述の理由で、その選択肢が実用的でなかったわけです。UH95/D2が、足りなかった「軽さ」と「機能性」をどうバランスさせているのか実機でチェックしたいと思います。
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2 in 1でも「軽さ」に妥協なし! こだわりと工夫の詰め込まれた凝縮ボディ
まず富士通がこだわったのが世界最軽量であること。UH95/D2の約868gという重量は「ペン内蔵2in1コンバーチブルノートPCとして」現時点で世界最軽量。クラムシェル型ノートPCの世界最軽量モデル「LIFEBOOK UH-X」(698g)で使われた技術や素材を多数応用することで驚くほどの軽量ボディを実現しています。
最近は多くのPCメーカーが「世界最軽量」レースからの離脱を表明していたりしますが、軽いということはやっぱり正義。多くの既存2 in 1ノートPCが重量1kg以上となっている中、その差は歴然です。薄さも約16.9mmとスリムなため、2 in 1ノートPC特有の「重い」「ぶ厚い」という弱点はないと言っていいでしょう。
↑キーボードの手前コーナーには衝撃を吸収する弾性樹脂パーツを配置(写真左)。ディスプレイ側もタッチパネル外周を弾性樹脂パーツで囲い(写真右/わずかに隙間を作っているのもポイント)、デリケートなガラス部分を保護しています
なお、2 in 1ノートPCには、さまざまな形状がありますが、UH95/D2はディスプレイ部分をキーボードの裏まで回転させられるコンバーチブル型。その形状を活かして、さまざまなスタイルで使えるようにしています。
そして、UH95/D2は本体底面にタッチペンを収納可能。2 in 1ノートPCにはタッチペン入力に対応している製品が多いのですが、その多くはペンを収納するスロットを持っておらず、結果として使いたい時にペンがないということが起こりがちでした。その点、UH95/D2は使いたい時にサッとペンを取り出すだけでOKです。
なお、ペンの入力プロトコルにはペンタブレットで定評のあるワコムの「Wacom AES」を採用しているのでその書き味は極めて良好。4096階調の筆圧感知にも対応しており、まさに紙のような感覚でペン入力ができました。Wacom AES対応ペンはペン側にバッテリーを内蔵する必要があり、利用にはつど充電が必要となるのですが、本機のペンは収納中に自動で充電され、15秒の充電で約90分利用できるなど、充電のストレスを感じさせない工夫が施されていました。
カメラは2基搭載。ユニークなのはそのうち1つのカメラがキーボード上部に配置されていること(もう1つは一般的なノートPC同様、ディスプレイ上部に配置)。これは、タブレットモード時にカメラがリア側に回るようにするための工夫です。
↑UH95/D2搭載の2つのカメラ。ディスプレイ上のフロントカメラはレンズの左右に赤外線発光部を搭載しており、それを利用して顔認証(Windows Hello対応)を行うことができます
通常のモバイルノートPCとして、必要充分な基本性能
2 in 1ノートPCとしての富士通のこだわりに続いては、UH95/D2のノートPCとしての基本性能について見ていきましょう。なお、今回は開発機でのレビューとなるため、パフォーマンスやバッテリーの計測テストは行っていません。
まずCPUですが、店頭モデルはモバイルノートPC向けの第8世代「インテル Core i7-8565U プロセッサー」を搭載。第8世代Core iプロセッサー(Uライン)は、インテルのモバイルプロセッサーとして初めて4コア/8スレッド駆動に対応したことが特長で、前世代プロセッサーと比べて50%以上高速なベンチマークスコアを叩き出し人気を博しています。メインメモリも8GB搭載されているので(直販モデルは16GBも選択可能)、パフォーマンスに不足を感じることはないでしょう。
今回は一般的なビジネスアプリの試用のほか、フォトレタッチなどといった作業も試しましたが、アプリの切り替えなども含めて一切ストレスを感じることはありませんでした。ストレージも512GB SSDと大容量のものを搭載していますから(直販モデルは1TB SSD~128GB SSDから選択可能)、容量不足で苦しむこともなさそうです。
インターフェイスも2系統のUSB Type-C端子を中心に一通り搭載。流行りのモダンPCでは省略されがちな有線LAN端子が搭載されているのはビジネスユーザーに喜ばれるでしょう。
ディスプレイは大きく見やすい13.3型サイズ。解像度は1920×1080ドット(フルHD)となっています。発色はややおとなし目で、解像度も含め、最新スマホやタブレットなどと比べて、ビビッド感、クリア感には欠けているように感じました。
キーボードは入力しやすいフルピッチ(キーピッチ=約19mm)仕様。キーストロークも約1.5mmとしっかり確保されています。ただし、周辺部のモデファイアキーは中央の文字カーと比べてキータッチが軽く、入力時にカシャカシャ言うのが残念。Enterキーを「ッターン!」と気持ちよく叩きたい人は少し気になるかも。
夢の利用スタイルを現実のものにしてくれる、今、最も堅実な2 in 1ノートPC
冒頭でも書いたよう、今、国内メーカーを中心に“ちゃんと使える2 in 1ノートPC”が続々と発売され始めています。そして、UH95/D2は、その大本命と言える製品の1つ。何より素晴らしいのは、本体重量も含めて、一般的なモバイルノートPCと比べて何ら劣っていないこと。見た目も2 in 1ノートPCにありがちな過剰な押し出し感(ドヤ感)がなく、その落ち着いたたたずまいには好感を覚えました。
先進的なペン&タッチコンピューティングと、伝統的な従来型モバイルコンピューティングを、富士通らしい堅実さでまとめた、良い意味で手堅い2 in 1ノートPC、UH95/D2にはそのような印象を持ちました。これまで通りの実用性を確保しつつ、新たな働き方、学び方にチャレンジしたいという人におすすめです。