デジタル
2019/10/1 7:00

【西田宗千佳連載】商品性が上がり、買い時になった「日本メーカーの有機ELテレビ」

Vol.83-2

 

日本のテレビメーカーはかつてから寡占状態にある。ソニー・シャープ・パナソニック・東芝(REGZA)が4トップで、それに中国系メーカーが続く。三菱電機も独自の魅力がある製品を販売しているが、シェアとしては大きくなく、「自社製品にミートする顧客向け」に提供している、という印象が強い。

 

トップ4社が力を入れているのが「高画質」な付加価値型のテレビだ。トップが高画質化に力を入れるのは、低価格帯での価格競争では中国系メーカーにかなわないこと、仮に戦ったとしても利益率が低くて儲からないことが理由だ。また、世界的に見ても、高画質テレビのノウハウを持つ企業は減っている。韓国のサムスン・LGエレクトロニクスを加えても、日系の4社(REGZAブランドを擁する東芝映像ソリューションは、資本でいえば中国系なのだが、技術由来としても、チームとしても、消費者のイメージとしても日系だろう。いまはまだ)しかない。貴重な技術を持っているだけに、それを売り物にしたいのは当然といえる。

東芝 REGZA  X930

 

なかでもソニー・パナソニック・東芝が力を入れるのは有機ELを使ったモデルである。有機ELを使ったテレビが世に出始めたのは2015年のこと。ディスプレイパネルを製造するLGディスプレイがテレビ向けパネルの量産に踏み切ったことを受け、それを採用する形で各社が製品化を行ってきた。当初は高価だった。いや、今も安いわけではないが、「2年前の最高級液晶テレビ」と価格は変わらない程度になっている。それでいて画質面では大幅な進歩を遂げているのだから、ハイエンドテレビを作る側としては、すでに「有機ELを中心にしない意味がない」状況である。

 

ただ、シャープだけは事情が異なる。同社はテレビ向けの有機EL製造ラインを持たず、パネルの外部調達にも積極的ではない。シャープは液晶を使った「8K」に注力しており、そちらでハイエンド製品を開発している。

 

有機ELと液晶を比べたとき、以前は「日本のように明るい部屋では液晶のほうがまだ有利」と言われていた。しかし現状、最新の2019年製品向けの有機ELパネルは輝度も上がっており、この点でも液晶の優位性は薄れてきている。シャープのように「8K」という差別化要因がないなら、有機ELを選んだほうが満足度は高いだろう。

 

こうした有機ELテレビの進歩の背景には、テレビ向け有機ELパネルを製造するLGディスプレイと日本メーカーの良好な関係が存在している。テレビ向けに大型パネルを買ってくれるメーカーは限られており、LGディスプレイとしては、出荷量を維持するためにも、上客である日本メーカーとの関係は大切だ。日本メーカーにとっても、「設定変更の自由度」や「自社内での組み立て」など、差別化のための条件を飲んでくれるLGディスプレイは貴重な存在。これらの条件は、高画質化して他社と差別化するためには絶対に必要なものなのだ。

 

結果的に、「パーツを買ってきただけではできない」製品を作れる関係ができはじめたことで、日本の有機ELテレビの商品性が上がり、お買い得になってきたのである。

 

では、諸外国ではどうだろう? 実は、日本とはまた違った風景が見えてくる。そのあたりは次回のウェブ版にて。

 

 

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