Vol.83-3
前回述べたように、日本のテレビ市場は「ハイエンドは国内メーカーの有機EL」、「低価格市場は中国系メーカーの液晶」という棲み分けができている。
だが、これが海外においても同じかというと、まったくそんなことはない。
そもそも、海外で広く大型テレビを売る日本メーカーは減っている。全世界でビジネスをしているのはソニーくらいのもので、パナソニックは一部地域で規模を小さくしてビジネスを継続し、シャープはようやく海外市場に復帰したところ。東芝(REGZA)は日本国内向けだ。
特に海外を考えた時に、日本と違うのは「超大型テレビ」の市場が存在することだ。
日本のテレビも大きくなってきたが、50型を超えるともう「大型」というイメージではないだろうか。70型を超えると「余裕がある家庭向き」という印象になるはず。だから日本の場合、テレビのサイズも70型以上は少ない。
しかし海外、特にアメリカや中国は違う。70型を超える「超大型」の市場がちゃんとあり、ハイエンド製品の一角に「超大型」があることが重要になっている。有機ELで70型を超える製品を作るのは、コスト的にかなり厳しい。現状、超大型市場を引っ張っているのは液晶テレビだ。液晶とはいえ、バックライトシステムの最適化をすすめると、画質は有機ELに劣るものではない。また「8K」ともなると、現状では液晶優位が揺るがない。LGエレクトロニクスは「8Kの有機ELテレビ」を今秋に発表したが、「88型で330万円」と、同クラスの液晶よりかなり高い。まだ当分は、液晶の超大型モデルを「8K」で作るのが、海外のハイエンドのトレンドといえる。
そのため、ソニーのトップクラスのテレビは、日本とアメリカではラインナップが異なる。日本では4Kの有機EL製品をハイエンドとしているが、アメリカでは日本にない超大型8Kモデル「BRAVIA Z9G」を用意している。こちらは、80型で1万3000ドル(約140万円)、98型では7万ドル(約753万円)とかなり高い。
そういう超ハイエンド製品が存在できるのがアメリカ市場の強さともいえる。中国メーカーも、画質的にはハイエンドとはいえないものの、80型以上のテレビを積極的に販売しており、大型市場をリードしている。
そもそも、こうして「それぞれの市場に合わせた製品投入」ができるのは、そのメーカーの余裕を表すもの、とも言える。
ソニーはいちはやくテレビ事業を立て直せたが、他社は国内立て直しには成功したものの、海外までの立て直しはこれから、といったところだろうか。
では、日本の低価格テレビ市場はどうなるのだろうか? その点については次回のウェブ版で解説する。
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