コネクテッドカーがIoT家電の普及に火を付ける?
Amazonは今年のCESで自動車やバイク、自転車などモビリティとのつながりを深めるAlexaの展開について、個別の展示ブースを設けてアピールしていました。
筆者もAmazonのブースで、Alexaを車体にビルトインしたゼネラルモーターズのキャデラック「CT5」に試乗して、自宅のスマート照明やガレージドアを車中から音声でコントロールしたり、ガソリンスタンドの会計をAlexaに頼んでAmazon Payで支払うデモンストレーションを体験しました。
伝聞だけではこの便利さがなかなか伝わらないのが歯がゆいところですが、実際にモバイル通信ネットワークにつながるコネクテッドカーの中にいながら、クルマの外で動いている機器やサービスが操作できると、ものすごくスマートな感じがして気分も高まります。
日本では普及が伸び悩んでいるとも言われるIoT家電も、今年の春に5Gの商用サービスが始まった後には、先にAIを搭載するコネクテッドカーが普及して、クルマの人気に後押しされて家庭に広がる可能性もありそうです。例えばガジェット好きなお父さんが新車欲しさに「ウチもIoT家電にしようよ」と言い出して本格的な普及期を迎える…。そんなシナリオがAmazonのデモンストレーションを体験してふと頭に浮かびました。
試着室・グランドピアノにも広がるAI
最後に2020年のCESで注目を集めていた異色の展示をふたつご紹介したいと思います。
ひとつは、LGのAI搭載バーチャルフィッティングサービス「LG ThinQ Fit」です。こちらは3Dカメラで顔の特徴と体型の情報を素速くキャプチャしてアバターのCGをつくり、タッチディスプレイで本人のサイズや好みに合った服を着せ替えできるというサービスです。アパレル業界の顧客を想定したBtoB向けのAIソリューションを起点としています。
一度ショップで作ってもらった、自分と体型を合わせたアバターをモバイルアプリに転送して、以降BtoBtoCのビジネスモデルを展開するイメージもLGは提案しています。「スマホアプリから、ショップのカタログに収録されているアイテムをいつでも好きなときに試着して、ECサイトからすぐに購入できるサービスが立ち上げられる」と、ThinQ Fitを担当するスタッフが話していました。実際に韓国ではThinQ Fitを使った商用サービスが年内にスタートするそうです。
もうひとつはローランドが展示したAIと連携する電子ピアノのコンセプトモデル「GPX-F1 Facet」です。複雑な多面カットされた未来的なデザインは、2015年にローランドが実施した「Roland Digital Piano Design Awards」でグランプリを獲得したJong Chan Kim氏によるものです。
ピアノの足下に内蔵するマルチスピーカーで力強いサウンドを奏でて、大屋根には“Soul”と名付けた音に連動する光のイメージをプロジェクターから投射します。
本体にはWi-Fiを搭載。譜面台はAndroidベースのタッチパネルになっていて、デジタル譜面やYouTubeのレッスン動画を表示したり、演奏を録音してSNSに共有するといった情報発信もできます。さらにピアノに接続したAlexaを搭載するEchoシリーズのスマートスピーカーが、楽曲制作をサポートするような機能も検討していると、ローランドのスタッフが話していました。
2020年もまたさらにIoT家電をめぐる進化が一歩先へと成熟しそうな期待がわいてきました。自動車を含む様々なカテゴリーにスマートな製品が普及してくると、一気に「AI搭載&音声操作が当たり前」になる日もくるのではないでしょうか。