デジタル
2020/2/14 7:00

【西田宗千佳連載】「ゲーミング」と「ハイエンド」を分けるディスプレイトレンドは、「フレームレートと解像度」

Vol.87-4

本連載では、ジャーナリスト・西田宗千佳氏がデジタル業界の最新動向をレポートする。今回のテーマは、「ハイエンドPC」。ゲーミングPCが人気を集めることで、PC市場全体に生じつつある変化とは?

 

ゲーミングPCの好調さは今後もしばらく変わらないだろう。では、ゲームに興味がない人も、ハイエンドPCとしてゲーミングPCを買うことがトレンドになっていくのだろうか?

 

筆者は「おそらく違う」とみている。理由は、ゲーミングPCで起きているディスプレイへのニーズと、一般的なハイエンドPC向けのニーズには乖離があるからだ。

 

ゲーム向けのディスプレイでは、「ハイフレームレート」の需要が高まっている。毎秒の書き換え回数を増やすことで、より滑らかで精度の高いゲームプレイが見込める。一般的なPC向けディスプレイは(ノートPCも含め)毎秒60コマ(60Hz)の書き換えが基本だが、ゲーム向けにはより高い、毎秒120コマ・144コマといったフレームレートへの対応が広がっている。ゲーム向けの外付けディスプレイはもちろん、ゲーミングノートPCでも、144コマ(144Hz)対応製品が出てきているのだ。1月にはNVIDIAが毎秒360コマ(360Hz)対応技術を発表しており、ASUSが対応ディスプレイを発売する。家庭用ゲーム機でも、「PlayStation 5」や「Xbox Series X」など、2020年発売の新型機では120Hz対応が行われ、ハイフレームレート需要はさらに高まりそうだ。

 

 

 

NEC LAVIE VEGA LV750/RA

 

一方、ゲームを軸としないハイエンドPCの場合、そこまでハイフレームレートにこだわる必要はない。むしろ、4K・5Kといった解像度の高いディスプレイや、HDR対応のような高色域技術の方が重要になる。有機ELの採用は、ゲームよりもハイエンドPCの方に向いている、といってもいい。

 

このことから、ゲーミングPCとハイエンドPCを分けるのは「フレームレートか解像度か」という話になってきそうだ。どちらも高いに越したことはないのだが、予算の関係から、ゲームでは「あえてフルHDだがフレームレートの高いディスプレイ」を選び、ゲームにこだわらない人は「60Hz駆動だが4K以上の高解像度対応」ということになるだろう。特にノートPCのうち、30~50万円といった高価格ではなく、10万円台に収まるような製品では、この傾向が強くなる。

 

フレームレートと解像度に注目すると、自分がどちらのPCを選ぶべきか、ということが明確に見えてくる。数年以内に「高解像度かつ高フレームレート」の製品も価格が下がってくると予想されるが、少なくとも2020年の段階では、ゲームとそれ以外のニーズでは、ディスプレイにおいて「どちらを重視するか」を判断して製品を選ぶことになるだろう。アップルがMacBook Proで高解像度のほうを選んでいるのも、結局は、そこまでゲーム市場が強くないぶん、高解像度を求める人々が多いからなのだ。

 

 

 

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