デジタル
2020/3/25 19:30

最新楽器の進化は「どんな音も鳴らし」「手軽なハイクオリティ」の2つ。しかし、そこまで求められるのはなぜ?

先進的な2製品をご紹介しましたが、ローランド発表会では「ハイクオリティを手軽に」という方向性を打ち出した機材も多く見受けられました。

 

●KATANA-Artist MkⅡ

写真で試奏しているギターアンプは、「KATANA」ブランドの最新フラッグシップモデル「KATANA-Artist MkⅡ」。従来のアンプ・サウンドからさらにバリエーションの幅を広げ、合計10種類のサウンドを楽しめるように進化。まさにプロ仕様の一品となっています。

 

●Acoustic Singer Live LT

同じくBOSSのアコースティックステージアンプ「Acoustic Singer Live LT」も試奏しました。このアコースティックアンプは、ギターとマイクを同時に入出力できるので、一台で手軽に路上ライブなどができます。自分も路上ライブをたまにやるのですが、このアンプなら音域を設定するイコライザー、エフェクトも用意されているため、音が霧散しやすい環境でもしっかりと音を届けられると思いました。これまでこういったアンプを持ち運んで、しっかり音まで作ろうと思えること自体がなかったので、そう思えるほどアンプの手軽さと質のバランスが高いレベルになってきた証拠だと思います。

 

●VADシリーズ

機材のハイクオリティ化が見えたアイテムは、ギター関連以外にもあります。写真は、パッと見た感じでは、普通のドラムを叩いているように見えますが、それがまさに「凄い」ところ。叩き心地もバスドラを踏んだ感じも、アコースティックドラムそのままなのですが、これ実は「VAD」シリーズという電子ドラムなのです。ローランドの電子ドラムと言えば「V-Drums」が有名です。VADシリーズの正式名称も「V-Drums Acoustic Design」と、V-Drumsの系譜にあるのですが、見た目の通りアコースティックドラムさながらの存在感を持ち、本格的な演奏感を得られる設計になっています。

 

●V-8HD

↑ビデオスイッチャー「V-8HD」

 

楽器以外の機材でも、手軽にハイクオリティ化の傾向はよく見られます。V-8HDはリアルタイムに、8つの異なる映像と音声を取り込みその場で編集できるアイテム。さらに、8つのうち3つの映像を同時に出力して流せます。流れている映像とは別アングルの映像への切り替え、フェードインフェードアウトなどの設定、テロップや静止画、動画の挿入などの編集ができるのです。これ一台あればライブ会場での映像演出などが手軽にできますね!

 

配信がどんどん盛り上がっている昨今、そういったリアルタイムの映像演出が必要な場面で大活躍しそうです。

 

●GO:LIVECAST

↑「GO:LIVECAST」もライブ配信用のアイテム

 

GO:LIVECASTは、スマホやタブレットに繋いで使って映像スイッチャーやミキサー無しで、まるでテレビ番組を作っているかのような自由度の高い配信ができます。映像を流すだけでなく、ニュースやスポーツ番組風のタイトル動画や著作権フリーのBGM、拍手や笑い声などの効果音を挿入できるのです。スマホなどに保存されている写真なんかも、瞬時に挿入することもできます。

↑使用イメージ。美肌フィルター機能など、ユーザーが求める細かな機能も付いている

 

 

今回見てきた楽器や機材から、「一台で何役もこなせる」マルチさと「手軽なハイクオリティ」という2つの傾向が見られました。TAIKO-1の豊富な音色数や「伏せ」や「座奏」など演奏スタイルへの柔軟な対応、SY-1000の出来ることは言わずもがなですよね。さらに加えるなら2つとも、そんなマルチさを簡単に持ち運べるサイズで実現していることが本当のポイントと言えます。

 

「手軽なハイクオリティ」とは、つまりプロユースに近いクオリティを一般ユーザーも手の届くレベル、価格で提供することだと思います。KATANA-Artist MkⅡやGO:LIVECASTの利便性、VADシリーズの自宅練習でもハイクオリティを求める方向性…その全てが一般ユーザーの手が届く範囲で、きちんと向上しているのです。

 

これらの進化の背景には、やはりYouTubeをはじめとした様々なメディアの普及があるでしょう。音楽配信もサブスクが一般的になり、ユーザーが音楽や映像に触れる形が大きく変化しました。それに伴って、作品を発信する選択肢が格段に増えています。

 

プロとアマチュアの垣根は限りなくなくなり、そしてどんな人にも一様に高いクオリティが求められるようになっています。そのハードルを自宅などの限られた環境で実現したいという要求が、楽器をここまで進化させている要因ではないでしょうか。

 

しかし個人的には、機材の進化が一気に伸長してあらゆるコンテンツがハイクオリティ化している今だからこそ、今後はプレイヤーが今回紹介したような最新楽器でどう差別化を行うかが、改めて求められると感じています。今回紹介した楽器でまず自分が出来る表現の可能性を広げつつ、その中でどう個性を出していくか考えていきたいですね。

 

撮影/我妻慶一

 

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