Vol.89-1
本連載では、ジャーナリスト・西田宗千佳氏がデジタル業界の最新動向をレポートする。今回のテーマは、「新型コロナウイルス流行の影響」。イベントの中止だけでなく、今後の動きにも大きな余波が生じて……。
発表会のオンライン化やイベント中止が相次ぐ
新型コロナウイルスの流行で、中国や日本だけでなく、世界中が大きな影響を受けている。この記事が載る本誌が発売されるころは落ち着いていることを期待したいが、正直望み薄だろう。
筆者も、新型コロナウイルスによる影響を少なからず受けた一人だ。罹患はしていない(多分。少なくとも症状はない……)。だが、イベントの中止が相次いだことによって、2月半ば以降の、日本国内・海外双方の出張取材がすべてキャンセルになってしまった。現状では、5月に取材を予定していたイベントまで取りやめになっているというありさまで、一体いつまで新型コロナウイルスの影響が続くかはわからない。
この状況は、テクノロジー業界全体にももちろん大きな影響を与えている。発表会などのイベントは一部オンラインで実施されたものもあるが、それだけではなかなか周知が進まない。スマートフォンなどの、大量生産されるコンシューマ機器ならネットで映像を流すだけでもある程度の告知はできるが、ちょっとしたガジェットやスマホケースなどは、展示会で生産業者と販売先が出会い、結びつくことで世界に広がっていく。また、業務用機器やソフトウエアなどの派手とはいえないもの、まだ評価の定まっていないものにとっても、展示会が果たす役割は大きいといえる。
今日では、スマホやPCだけでなく、スマホケースなども含め、多くの製品が中国で生産されており、展示会を行うためにはそれらを移動させないといけない。人が集まること自体にリスクがあるうえ、中国からモノを移動させることによってもさらにリスクが増大してしまう。多くの事業者が戸惑いつつ、やむなくイベント中止などの対応をしているのだ。
生産や製品開発でも遅れや影響が出ている
製品の生産や試作にも、もちろん新型コロナウイルスによる影響は出ている。ここで大きな問題となるのはやはり、中国での生産に時間がかかることだ。各種生産がストップする2月の春節が終わっても、生産ラインが復帰するまでに結局2週間から1か月かかっており、その遅れが全体的に影響しているのだ。それよりも深刻な問題だと見られているのが、コンテナ輸送が滞っていることだ。これは、移動に制限がかかった時期があることに起因する。最終製品だけでなく、生産中のパーツなどの輸送にも影響が出た。表沙汰にはなっていないが、試作機を持ち込めないために日本での発売が延期されてしまったという製品も少なくない。
もちろん、どのメーカーも遅れを取り戻せるよう努力しているが、このままいくと秋の新製品にまで影響が及ぶ可能性は高い。新製品を心待ちにする者として、そうしたことはとても残念だが、それよりさらに、様々な企業の業績にマイナスの影響を及ぼすリスクが高い点が心配だ。2020年は、思いもよらぬ形で「不景気な年」になる可能性が高まってしまった。
では、発表会のオンライン化によって、具体的にどのような影響が見られているのか? これに対して、メーカーはどういうふうに問題を回避しようとしているのか? そうした部分はウェブ版で解説していこう。
週刊GetNavi、バックナンバーはこちら!