デジタル
2020/5/7 21:00

デジタルツール&オンラインで音楽が変わる! 今できる「おうちでバンド」を模索しよう【後編】

対面じゃなきゃなかなかできない音楽活動を、自宅でもなんとか楽しめないかと始めた本企画。前編ではオンラインでセッションができる「NETDUETTO」をご紹介しましたが、まだまだ在宅で楽しめる面白い機材やサービスは、いろんなメーカーからリリースされています。オンラインセッションとはまた違った形の面白いサービスを後編では紹介します。楽器、音楽ツールでさまざまなチャレンジをしている、ローランドのアイテムでまとめています。

 

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外出自粛中の全ミュージシャン必見! 今できる「おうちでバンド」を模索しよう【前編】

 

【その1】家で爆音演奏OKなギターアンプ「WAZA-AIR」

まずは、僕も以前記事を書かせていただいたことがあるBOSS「WAZA-AIR」。

 

 

一見するとヘッドホンに見えるでしょ。でもれっきとしたギターアンプなんです。WAZA-AIRを使ってギターを演奏すると、あたかもそこに大きなギターアンプが置いてあるような空間を再現してくれるのです。優秀なジャイロシステムが搭載されているのでプレイヤーの頭の動きや向きを感知して、演奏している空間を感じさせてくれます。部屋にいながら、アリーナクラスの大きなステージで演奏しているような体験もできるのです。BOSSのアンプ技術がふんだんに盛り込まれていて音質も最高。ずっと部屋でギター弾いてたくなります。

 

【その2】4XCAMERA

「4XCAMERA」は、iPhoneやiPadだけで、画面を最大4分割したムービーを簡単に作成できるアプリです(現在動作が確認できるのはiOS.10以降。アンドロイド端末は非対応)。

 

 

1人で4つの楽器を演奏して、それぞれ動画を撮り、アプリ上で簡単に合成してバンド演奏しているかのような動画が作れます。

 

通常、無料版では2分割の動画を作成でき、3分割以上の動画を作成する場合には有料版へのアップグレードが必要なんですが、現在はキャンペーン中で、アップグレードが無料で行えます。この機会に是非お試しを(キャンペーンは予告なく終了する場合があります)!

 

操作方法についても触れておきます。アプリをインストールしたら、まずは最初の基準となる動画を撮影します。

 

画面下部の赤いボタンを押して撮影スタート。この時に、スマホ内に保存されている音源を流しながら、それに合わせて動画を撮影も可能です。

 

1つ目の動画を撮影し終えたら、画面右下のフォルダーから今録画した動画を選択、その後、下部の赤いボタンを押すと重ね撮りがスタートします。

 

必要な動画を撮り終えたら、画面下部右から二番目のアイコンをクリックして、動画を流すタイミングや分割のレイアウトなどを調整していきます。調整した動画を保存したらもう出来上がりです!

 

さらに、アプリ内には元々いくつかのドラム映像を用意してくれています。ドラムの撮影はどうしても防音環境が必要だったり、撮影が難しい場合も多いので、画面右下のフォルダー内からダウンロードして使うことができます。

 

こんな感じでドラムの映像が用意されてますので、是非こちらも使ってみてください。

 

このアプリの真骨頂は、離れた場所にいながら簡単にMVのようなバンド演奏動画が作れてしまうこと。誰かが撮影した動画をクラウド上にアップして、その動画に合わせて離れた場所にいる他のメンバーがまた自分の演奏動画を撮影して合成していくといった具合に作成していきます。試しに、僕がギターボーカルを務めるバンド「the knowlus」(ザ・ノールス)のベーシストであるサイトウシンタロウと4XCAMERAを使って動画を作ってみました。曲はthe knowlusのbrilliant noiseです!

 

 

まずはお互いが4XCAMERAをスマホにインストールします。準備したのは、アプリがインストールされたスマホとメトロノーム、イヤホン又はヘッドホン、これだけです(スマホを立てておくスタンド等は状況に応じてあったほうがいいかも)。まず、僕が自宅でガイド用のメトロノームを流しながら弾き語りの動画を撮影します。

 

↑スマホのマイクで録音なのでアコギを使用しました

 

次に、その動画をサイトウに送ります。曲のテンポやキーについて軽く伝えて、サイトウが僕の演奏動画を4XCAMERAで取り込み、その動画を流しながらベースの演奏動画を同じく4XCAMERAで撮影。サイトウの演奏動画と僕の演奏動画をアプリ上で合成し、タイミングや音量の微調整をします。

 

↑動画ごとの音量調整が可能。画像はどちらも僕のテスト動画です

 

↑演奏の開始・終了タイミングや合間を簡単に編集できます

 

↑動画の角度を調整して完了

 

↑動画はアップグレード版で最大4分割まで結合できます。分割配分は縦横含め多くのパターンがあるので、いろいろな見栄えの動画が作れそう。画角はスクエアと16:9をそれぞれ選択可能

 

調整が終わったら動画を端末に保存して、はい! 出来上がり! とっても簡単でした。一度使えば大体操作は動画完成までは覚えられます。なんだか面白くなって他の曲もやってみようということで、バンド内で今いろいろ遊んでます(笑)SNSに上げたときの反応もいいし、今後も大いに活用できそうです。

 

今回の動画は無料版の機能だけを使って作ったので、ロゴが入っていますが、アップグレード版ではロゴを消せます。サイトウも想像以上に簡単な操作性と、オーディオインターフェイスなしでも高音質で録れることに感心していました。

 

実際に使ってみて、希望としてはガイド用のメトロノームがアプリに内蔵されていたらより便利になるだろうと思いました。ドラムの映像などがアプリ内に用意されていますが、それぞれテンポが決まっているので、自分の好きなテンポに調整する事ができません。ベースとなる動画を撮影する際にガイド用のメトロノームを別で用意しないといけないし、別でメトロノームを鳴らすと、メトロノームの音量調整に意外と気を遣います。そこが改善されたらとてもいいと思います。

 

また、2つ目以降の動画を撮影する際にスマホのスピーカーから音を出して撮影すると、当然ですが「かぶり」(スマホから流している音がもう一度動画に録音されてしまい音がゴチャゴチャになってしまう)が出てしまうので、2つ目以降の動画を撮影する際にはヘッドホンやイヤホンが必須です。

 

【その3】4XCAMERAのクオリティを引き上げる「GO:MIXER」

4XCAMERAは、楽器演奏以外にも幅広く活用できそうですが、同じくローランド製の「GO:MIXER」を接続すれば、さらに高音質で音声を取り込むことができます。よりハイクオリティな映像を制作できるのです。

↑サイズW95×H95×D28mm、重量は100g

 

GO:MIXERは、スマートデバイス向けのオーディオインターフェイスです。スマホやタブレットに接続するだけで、ギターやキーボード、マイクなどの音が簡単に高音質でデバイス内に取り込めます。一部Android端末では端末の仕様により、モノラル音声信号に自動変換されてしまう場合があります。

↑スマホと楽器を接続するシンプルな設計

 

GO:MIXERを接続すれば、4XCAMERAのアップグレード版の全機能を無料でいつでも使えますし、単にスマホ用のオーディオインターフェイスとしても便利です。スマホを使った音楽表現をさらにハイクオリティにできます。

 

【その4】手軽に高品質なライブ配信ができる「GO:LIVECAST」

そして最後に紹介する「GO:LIVECAST」は、スマホやタブレットに接続するだけで、簡単に高品質なライブ配信ができる機材です。一台で配信者になれます。

 

↑スマホやタブレットに繋ぐだけで、映像スイッチャーやミキサー無しで配信ができるアイテム

 

↑スマホとタブレットを2台同時に繋げば、自分がどのように映っているか確認しながら配信できます

 

著作権フリーのBGMや拍手、笑い声などの効果音、オープニングタイトルやエンディングタイトルのフォーマット、テロップなどがあらかじめ内蔵されていて、配信中にワンタッチですぐに挿入することができます。もちろんスマホやタブレットに保存してある画像や音源もその場で挿入可能です。

 

もちろん4XCAMERAで制作した映像を流すこともできますが、GO:LIVECASTを使うならむしろ制作しながら配信すると面白そうです。今回紹介した機器を組み合わせただけでも、色々な可能性が生まれそうですね!

 

これからの音楽と楽器に求められる進化と変化

今回紹介した機材やアプリを見ただけでも、在宅や遠隔で出来る音楽活動の選択肢がどれだけ増えているかが理解いただけたかと思います。4XCAMERAを使って、1人でもPVのような映像が作れ、GO:LIVECASTを使ってどこからだって配信出来てしまう。限られた環境でも出来る作業は格段に増えているのです。

 

コロナ禍による外出自粛で、音楽業界は急速に変化が求められていますが、早いか遅いかの違いだけで、音楽表現のあり方が進む方向には、あまり違いはないのかなとも感じています。限られたスペースで、個人かつ遠隔によって、より効率的にハイクオリティな表現を。これは今の時代に合わせて、全ての表現者に望まれるところではないでしょうか。

 

また、多くの企業が大急ぎでテレワークの環境を整えているように、ライブハウスなどのイベント産業も配信環境をどんどん導入し始めています。ライブに行けない、スタジオに入れない今、こういった部分にとても注目が集まっています。この流れは、ある程度コロナウイルスが終息した後も変わることはないでしょう。今や、配信やネットワークを通じた遠隔での作業に着目していない音楽関係者はいないです。完全アナログで作曲をしてきた僕でさえ、少し前からDTMについて本格的に勉強していますから。

 

しかしその一方で、ライブで感じられる生音の臨場感、ひとつの空間でもって体験を共有することは、ただ「音楽を共有する」こととは全く別種の価値があり、ライブハウスだけでなくアーティストもリスナーにとっても欠かせないエンターテイメントであることに変わりはないでしょう。どんなに配信や遠隔での技術が進化しても、ライブに行かなくなる、実際に集まって演奏しなくなるという事はないはずです。

 

これから音楽活動の可能性がオンラインに広がることは、リスナーにとっても今まで触れられなかった音楽との出会いが広がるチャンスでもあります。僕は今回紹介したようなサービス、ツールでこの時期に今出来ること、新しく始められることを実行して、この先の時代にオフライン=ライブの価値も新しく刷新されるのではないかとワクワクしています。