Vol.91-2
本連載では、ジャーナリスト・西田宗千佳氏がデジタル業界の最新動向をレポートする。今回のテーマは、「次世代ゲーム機」。徐々に姿を現しつつある新型ゲーム機に共通する“次なるトレンド”とは何なのか?
ゲームは色々な制約のなかで実現されている。同時に使える色が16色なのか256色なのか、画面の横方向にいくつキャラクターを並べられるのか、といったごくシンプルなレベルでの制約から、「どれだけポリゴンを使用できるのか」、というレベルのものまで、世代ごとに技術や性能は進化しつつも、何らかの制約は常について回る。
だが、どの時代であっても制約の根幹のひとつになっているのが「データをメモリにロードするための時間」だ。美しいグラフィックを実現可能な性能を得ても、データをメモリに読み込めねば使えない。CDからDVD、BDへとメディアが進化しても、ディスクの読み込み速度はゲーム機が本当に必要とするほど速くはならなかった。「ゲームをハードディスクにインストールする」ようになって改善が進んできたが、それでもまだ読み込み速度は足りていない。だから、ゲームにはいまなお「ロード画面」が存在しているのだ。
長いロード時間は誰にとっても心地よいものではない。長いだけならまだ我慢できるが、頻繁だとさらに厳しい。
ロード回数が増える理由は、ゲームの規模の拡大にデータ読み込みの速度が追いついていないことにある。いまのゲームでは考えられないようなものすごいハイクオリティな映像で、ものすごく凝ったロジックのものを作ろうとしたとする。仮にそれをゲーム機のCPUやGPUが処理できたとしても、「シーンが変わるごとにロードする必要があるので、10分に一回は1分のロードが挟まる」といった具合ではゲームにならない。
ゲーム開発者はそういうことが起きないように、「最初の1回でロードを終わらせる」、「気づかないよう、裏で少しずつデータを入れ替える」、「小道やエレベーターなどの演出中を読み込み時間に使う」と言った工夫をしている。もちろん、データを小さくし、読み込み速度を短くする工夫も必須だ。
そういう作業は、本来ゲームクリエイターがやりたいことではない。
前置きが長くなったが、PlayStation 5やXbox Series Xではここが変わる。高速なSSDが標準となり、読み込み速度がさらに速くなるからだ。
「PCではSSDが当たり前になっているし、PS4でもSSDに換装して使う人はいた」と思うかもしれない。だが重要なのは「標準で搭載している」ことだ。想定する環境のレベルが大幅に上がるため、いままでにないより大規模なゲームを作れるようになる。
新型ゲーム機におけるSSDの採用は「制約を減らす行為」にほかならない。これまではCPUやGPUの処理能力向上が大きな価値を持ってきたが、高度化したCPUやGPUを生かすためにも、もう一つの根幹である「ストレージ」へと切り込んできた……。PS5・Xbox Series Xの進化の本質はそこにある。
では、両者はどう違うのだろうか? ゲーミングPCのような存在との差はどうなるのか? そこは次回のウェブ版で解説する。
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