デジタル
2021/7/15 19:50

【西田宗千佳連載】「モバイル回線で固定網」の課題は品質が読めないこと

Vol.104-4

 

本連載では、ジャーナリスト・西田宗千佳氏がデジタル業界の最新動向をレポートする。今回のテーマは、インターネット回線に求められる「安定性」を「通信可能エリア」と「速度」というポイントから深掘りをしていく。

 

↑NTTドコモ home 5G HR01/価格未定 8月下旬発売

 

インターネット回線に求められる要件は、主に2つといって差し支えない。「価格」と「安定性」だ。安定性には「途切れない」という意味もあるが、こと固定回線として使う場合には「常に同じように高速に使える」という意味合いが大きいだろう。

 

home 5GやSoftbank Airのような携帯電話回線を使うインターネットサービスの安定性は、主に2つの側面で決まる。「通信可能エリア」と「速度」だ。

 

通信可能エリアは、携帯電話と同じように考えていい。ただ、Softbank Airはソフトバンクの携帯電話とは通信方式も使う周波数帯も異なり、エリアが少し狭い。それが後述する通信速度の面にも影響する。home 5Gはドコモの携帯電話が使うものと同じエリア・周波数帯になるため、より広く、わかりやすい。これは、どちらのサービスも公式サイトから住所などを手がかりに状況を確認できる。

 

次に「速度」。こちらは通信規格に加え、同じ基地局でどのくらいの通信が同時に行われるのか、ということにも依存する。Softbank Airは手軽だが、この点での不満を訴える人も少なくない。ソフトバンクのスマートフォン向けとは違う規格・周波数帯で収容可能な人数もスマホに比べると少ないので、近隣の利用者のなかにヘビーユーザーがいると速度が落ちやすい傾向にある。もちろん、場所や状況によって大きく変わるので「ソフトバンクだからダメ」という話ではない。

 

home 5Gは名前のとおり「5G」対応なので、5Gのエリア内であればかなり余裕がある。だが4Gでも利用は可能。現在は4G回線もかなり速度に余裕が出てきている。それでも「その地域でどのくらい利用者がいるか」という点は問題となるだろう。NTTドコモは「かなり細かな制御をする」としており、速度維持には努力するのだろう。と言っても、サービス前の現状ではそこは見えづらい。

 

home 5Gが注目されるのは、インフラ的に強いNTTドコモが、この種の領域に本気を出して取り組むからだ。だとすると、ある程度回線速度や安定性に自信がある……と考えることもできる。

 

とはいえ、どちらにしろモバイル回線を使った固定網の最大の欠点は「使ってみるまでわからない」「日々変化するので、ある日突然遅くなる可能性もある」ということだ。固定回線でも遅くなる可能性は十分にあるのだが、モバイル回線を使うものはそれ以上に、回線に影響を与える要因が多く、安定性が読みづらい。

 

だから、やはり本当は「光回線を契約する」のが間違いない方法なのだ。

 

とはいうものの、固定回線は住環境に紐づくものなので、どうしても光回線が引けない時はある。その時にカバーしてくれる「次善の策」がモバイル回線を使った固定網と考えたい。また、光回線をファーストチョイスにできない人がスマホのテザリングで済ませるよりは、ずっと良い環境が手に入るとも言える。

 

この種の回線については、そうしたイメージで接するのがちょうど良いと思われる。

 

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