デジタル
2022/8/1 11:45

【西田宗千佳連載】日本でも本格化する「ゲーミングPC」の波

Vol.117-1

 

本連載では、ジャーナリスト・西田宗千佳氏がデジタル業界の最新動向をレポートする。今回のテーマはNEC PCのLAVIE GX発売がきっかけとなる、日本製ゲーミングPCの本格化。海外と比べ低い普及率はどう高まっていくのか。

↑実売価格21万9780円からのNEC PC「LAVIE GX」。上位モデルのCPUは第12世代 インテル Core i7-12700F、グラフィックスはNVIDIA GeForce RTX 3060を搭載し、クリエイター向けPCとしても十分なスペックだ。PC向けゲームに精通した技術者が、ゲームを快適にプレイできる環境設定などをアドバイスするサポートが1年間利用できる

 

NEC PCとソニーがゲーミングPCに注目

NECパーソナルコンピュータ(NEC PC)は、ゲーミングPC「LAVIE GX」を7月14日に発売した。同社は40年前に発売された「PC-9801」をゲーミングPCの元祖と位置付け、24年ぶりの市場再参入と言っている。だが、このあたりについては当時のPC事情からすると異論のある人も多そうだ。

 

ここで重要なのは、NEC PCのような日本市場を中心としたPCメーカーが、ゲーミングPCに注目しているという点にある。NEC PC執行役員の河島良輔氏は、「海外ではゲーミングPCの比率が15%に伸びている。この製品だけですぐに大きな売り上げ比率の増加にはならないと思うが、数年かけていろいろな製品を増やしていけば、最終的に海外に近い比率まで伸びるのではないか」と期待を語る。今回は“リビングにおけるゲーミング・デスクトップ”というコンセプトだが、ほかの形の製品も考えていく計画であるという。

 

同じように、ゲーミングPCの世界に期待をかけるのがソニーだ。といっても、PCを売るわけではない。ソニーはあらたに「INZONE」というブランドを作り、ゲーミングディスプレイやゲーミングヘッドセットを販売する。

 

個人向け市場、特に若者向け市場でゲーミングPCの利用が伸び、関連機器市場も大幅に拡大している状況がある。だが一方で価格重視でもあり、“良いものを作れば売れる”と考えたため、ソニーは差別化できると確信し、参入を決めたのだ。ソニーは日本国内だけのビジネスではなく、世界中でINZONEブランドを展開する。「BRAVIA」や「α」、「ウォークマン」に並ぶサブブランドを立ち上げたと考えれば、ソニーの力の入れようも想像できる。

 

コロナ禍で大きく伸びたPC向けのゲーム市場

両社がゲーミングPC市場への参入を決定した理由には、コロナ禍が大きく影響している。日本は家庭用ゲーム機が強く、ゲーミングPCは海外に比べ弱い傾向にあった。だがコロナ禍においては、世界中でゲーム市場が大幅に伸びた。そのなかでは家庭用ゲーム機だけでなくPC市場が大幅に拡大しており、日本でも状況は同様だ。

 

NEC PCの発表会に登壇した、カプコンCS第二開発統括編成部の砂野元気氏は、「カプコンが販売する数百タイトルにおいて、PC向けが占める割合は3割まで伸びている」と話す。そこまで大きくなってきているならば、ゲームメーカーはPC対応ゲームを拡大するし、PCメーカーや周辺機器メーカーも、ゲーミングPC市場を重視するのも当然と言える。

 

ゲーミングPCは、キーボードなどの要素を除くと“高性能で十分なエアフローを備えたPC”でもある。これまで高性能PCはクリエイターもしくは業務向けという側面が強かったわけだが、味付けを変えればゲーマー向けにもなる。ディスプレイなどの周辺機器も同様だ。

 

ただ、単なる高機能製品ではもうゲーマーは満足しなくなっている。“ゲームに向く要素”がより重要になり、海外ではその追求が進んでいるためだ。

 

では、各社はどこで差別化を図っていくのか? コロナ禍でゲーミングPCが増えた本当の理由は何なのか? そうした部分は次回解説する。

 

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