デジタル
2015/10/1 6:25

【西田宗千佳連載】ソニーも着目する、クラウドファンディングとベンチャーの関係

「週刊GetNavi」Vol.35-1

Vol.35

8月31日、ソニーは自社が運営するクラウドファンディングサイト「First Flight」で、新しい製品のクラウドファンディングの募集を開始した。その製品は「wena wrist」(写真・Chronograph Silver)。腕時計なのだが、普通の腕時計とは違う。バンド部に、Bluetoothの通信モジュールや非接触ICカード「FeliCa」の機能、そしてLEDやバイブレーターといった、一般にスマートウォッチに含まれる機能が内蔵されている。wena wristは時計とバンド部をセットにした製品であるが、時計部は一般的なクオーツ時計だ。バンド部にスマートウォッチとしての機能を持たせることで、「好きな時計につけられる」「性能アップさせる時にも、お気に入りの時計部をそのまま使える」「外観がスマートウォッチっぽくならない」といったメリットが生まれる。このコンセプトは好評だったらしく、スタートから数時間で目標額に達成、一週間後には、目標額の6.7倍にあたる約6700万円を集めた。これは同社のクラウドファンディングの中でも最高の出足である。

 

近年、デジタルガジェットのビジネスにとって、クラウドファンディングはとても重要なものになった。もともとクラウドファンディングは、製品を世に出すために必要な資金を、ある種の寄付として集めるのが目的だった。だが現在は、その位置付けは変わってきている。純粋な資金調達が目的であることは少なく、プロモーションと、ある種の市場調査が目的となっているのだ。

 

クラウドファンディングを利用すると、製品の中身について詳細なプロモーションが行えるため、いままでにあまり例のない、説明が重要な製品については、いきなり製品化するより周知が容易だ。デジタルガジェットでは「バズる」こと、すなわち話題が盛り上がることが重要だが、クラウドファンディングは、ある種のゲーム性もあり、特にバズりやすい特徴がある。

 

より重要なのは、そのガジェットがどのくらい人気を集めるか、確認できるということだ。開発する側はたいてい、自分の作るものに自信がある。しかし、それが本当にニーズのあるものとは限らない。経験を積んだ商品企画者ならば、それがどのくらい売れるのか、かなりの精度で読めるものだ。だがそれでも確実ではないし、そもそも「経験を積んだ商品企画者」はあまりいない。クラウドファンディングでは斬新な製品の需要を資金調達を目安にして確認することができる。

 

プロモーション、市場調査のどちらも、小さな企業にはありがたいものだ。だから、ベンチャーにとってクラウドファンディングは、もはやビジネスの重要な手法の一つになっているのである。

 

だが、である。ソニーほどの大企業ともなれば、クラウドファンディングに頼らなくとも、製品を市場に投入することは難しくない。それでもwenaがクラウドファディングを使うのはなぜだろうか? その理由はVol.35-2以降にて。

 

 

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